![海流のなかの島々 上巻 (新潮文庫](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51IXZf6JK-L.jpg)
第一部「ビミニ」はたいへんおもしろくて、会話文が多く読みやすく、とても楽しんだのだが、第二部「キューバ」になって趣きが違う。これは同じ話なのだろうか。最初は全く違う話が始まったのだと思った。主人公がハドソンということで名前は同じなのだが、ぜんぜん違う。
「ビミニ」はハドソンの息子たちが遊びに来て、帰って行くという話。いつも一人で孤独に暮らしているので、やることが無くならないために新聞を読むのを後回しにしたりして過ごしている。息子たちがくると楽しいが、いつかは帰ってしまうので寂しい。そういう、夏休みが始まった途端に夏の終わりを考えてしまうような、切ない気持ちを描いていて、ユーミン好きにはたまらない。
最後は下の息子二人が母親とともに交通事故で死ぬ。
この時代の(と言ってとても曖昧な定義だが、まあこのくらいの時代の)ものには交通事故が多いのかな。ゴダールの『軽蔑』は最後、交通事故で終わらなかったっけ。カミュも交通事故で死んでいるし、このころは交通事故で死ぬことがとてもなにか、時代を象徴する死に方であったのかもしれない。ほんとうを言うと、いまのほうが交通事故で死ぬ人は多いのだろうけれど、物語の結末が交通事故死というのはあまり聞かない気がする。そういう物語にもし出会ったら、ちょっと時代錯誤的なものを感じるかもしれない。