![自分疲れ: ココロとカラダのあいだ (シリーズ「あいだで考える」)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/713kAkVxBkL.jpg)
すごく驚くようなことは書いていなかった。すぐに読めた。
いろいろな本の紹介が書かれてあることを期待したが、で、確かにいろいろな本の紹介はあったが、惹かれるものはあまりなかった。
「共食圧力」の話が今回最も興味を持った。
一緒にものを食べたり酒を飲んだりすることで距離を縮めることができると思っている人は多く、私が酒をあまり飲めないので死んだ父は残念に思っていたようなふしがある。そのような気持ちは私自身には少ないように思っていたが、娘が卵アレルギーで幼いころに食べるものに制限があるのが私にとって不愉快だったのは、ただ娘の健康を心配して、というだけではなかったようにいまは思う。たぶん、いっしょに同じものを食べられないことからくる不愉快だったのだろう。
以下の部分では少し不思議な気がした。
《『愛についてのキンゼイ・レポート』(2004年)という、実話にもとづいた映画を見たとき、頭をガツンと一撃されたシーンがあった。
同性愛者と異性愛者の2種類の人がいるのではなく、同性愛と異性愛はグラデーションだとキンゼイ博士という人が説明したのだ。
つまり、はっきり同性愛の人もいれば、かなり同性愛の人、やや同性愛の人、ほんの少し同性愛の人などもいるというわけだ。
ぜんぜん知らなかったので、とても驚いた。》(136頁)
と言うのだが、頭木弘樹は初期の大江健三郎や、三島由紀夫などはどのように読んだのだろうか。トーマス・マンもよく引用しているが、どう思って読んだのだろうか。不思議な気がした。
![騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71cpXUJyHKL.jpg)
![騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71NmmQ8JVVL.jpg)
村上春樹『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』(新潮文庫)上・下を読了。
読み終わってみれば、何も解決していないし、何も終わっていないし、結局なにか事件があった? ということにはなってしまうのだが、読んでいる間はおもしろい。顔ながの穴に入って雑木林の中の穴に出てくるまでのよくわからない黄泉の世界みたいなところが少し退屈したが、全体としてはおもしろかった。
もうそれだけで充分。村上春樹にあまりに多くを求めすぎてはいけないのだ。(揶揄でも皮肉でもなくそう思う。)
免色渉という人物が興味深くて、それをずっと追っていくうちに読み終わってしまうという感じでしょうか。
以下、蛇足ながら疑問。
秋川まりえの失踪事件なんか事件でもなんでもないし、免色に一言「ごめんなさい」と言えばすべて解決するように思うが、本当に騎士団長が死ななければいけなかったほどの事件だったんだろうか。騎士団長は、最初は現実の出来事に関与しないというような態度だったのに、結局はすべて自分一人で事態を回しているように思う。
雨田具彦の傑作「騎士団長殺し」は火事で失われるが、語り手のせいだ。言い訳は通用しない。
![騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(上) (新潮文庫)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71rN8KtB5LL.jpg)
![騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(下) (新潮文庫)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71JbqbscamL.jpg)
友人が読んでいるという話を聞き、興味を惹かれ村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』(新潮文庫)上・下を再読。
何が行われているのか、何をどうしたいのか、相変わらずさっぱりわからないがとにかくおもしろい。
語り手が画家で、絵を描くことの思想のようなものを語るのだがそれが、村上春樹自身の文章を書くことの思想のように読めて私などには興味深い。
例えば以下のようなところ。
《肖像画をモチーフにした、新しいオリジナルのスタイルを自分は掴みつつあるかもしれない。それは肖像画として描き始められるが、結果的には肖像画とはまったく違ったものになってしまう。にもかかわらず、それは本質的にはポートレイトなのだ。》(下巻107頁)
また、
《寓意や比喩は言葉で説明されるべきものではない。呑み込まれるべきものだ》(下巻259頁)
のようなところ。
それから性描写も多いが、そこも可笑しい。
《僕が耐えきれずに射精をすると、それに合わせて彼女は異国の鳥のような声を短く上げ、》(上巻274頁)
《彼女は全部で四度オーガズムを迎えた。信じてもらえないかもしれないが、どれも間違いなく本物だった。》(下巻89頁)
《「それで今はどうなの?」
「今、自分のおちんちんについてどう思うかってこと?」》(下巻303頁)
とても可笑しかった。
あえて話を無理に作らずに、自分の中から出てくるものだけでゆったりと書いている感じで、とってもおもしろい。
![吉本隆明全集28 1994-1997](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41aL-7FGb0L.jpg)
分厚い本なので全部読んだわけではない。気になるところだけをつまみ食いした。
もともとは、少し前に内田康夫の小説をいくつか読んだので、吉本隆明が内田康夫についてどう書いていたかを確認するために読んだ。
『消費のなかの芸』という本に入っていたのを当時立ち読みして、すこし内田康夫の推理小説を読んだ。それを再読した。吉本隆明が褒めるほどおもしろいかね、といま読むと思う。
その他、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』や立花隆の『臨死体験』、宮崎駿『風の谷のナウシカ』、ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』、松本人志『遺書』『松本』、渡辺淳一『失楽園』などの書評を読んだ。近藤誠の『患者よ、がんと闘うな』の書評もあり、忘れてしまっているがこの書評を読んで私は近藤誠を読むようになったのかもしれないなと思った。
『消費のなかの芸』収録のもの以外を読み、ジッドの『田園交響楽』と太宰治の『新ハムレット』を読みたくなった。
このころ吉本隆明は溺れたことがあったんだったな、と思った。
![希林さんといっしょに。](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/612jMfqlCaL.jpg)
以前も読んだことはあるのだが、是枝裕和の『映画の生まれる場所で』を読んだのを機にまた読んだ。
昔の、森繁久彌とか向田邦子の話が懐かしい。ほんとうは森繁久彌も向田邦子も活躍しているときは私は子供だったので(しかも見ていたのは彼らの晩年)、あまり知らないのだが懐かしい気がしてくる。昔の芸能界は楽しい。
樹木希林はこの本でさまざまな名言を残している。
通して読むと、樹木希林をきちんと追悼できた気になる。素晴らしい本だ。
きちんと追悼できすぎて映画まで見るのはもう良いかな(お腹いっぱい)、と思ってしまう。
どれも繰り返しては見ていないが思い出すままで言えば、是枝裕和と樹木希林の映画では『海よりもまだ深く』が一番好きかな。
![ジョン・F・ケネディ・ストーリー The JFK Story (ラダーシリーズ Level 4)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/61v3flUIE+L.jpg)
あまり知らなかったがジョン・F・ケネディについてよくわかった。でもそんなに興味がないのですぐに忘れてしまいそう。
病気で背中が痛いのをずっと隠していたことと、いろいろな女性と寝ていたことがわかった。
マリリン・モンローとも寝ていた。マリリン・モンローの「ハッピー・バースデイ・ミスタープレジデント」は強烈に印象に残る、癖の強い歌い方だが、そういう肉体関係があってこその歌だったのだなと納得した。
ジョン・Fの弟も暗殺された。
奥さんのジャッキーは再婚した。
そういえば昔『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』というジョン・Fの奥さんが主人公の映画を見て、あんまりおもしろくなかったが、今見たらすこし違う感想かもしれない。