
誰のいつ言った言葉だったのか、もはや思い出せないのだけれど(たしか宇多田ヒカルだったような気もするが)、人生で大切なことをほとんど映画『ゴッドファーザー』の台詞から学んだと言っている人がいた。
そのようなことに少し憧れ、そして最近NHKでよく岡本太郎のことがやっているので、僕にとってその大切なことを教えてくれるのは岡本さん(早くも敬称)なのではないかと思い、『ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉岡本太郎』(筑摩書房)を図書館で借りて読む。
そう思ったことはこれまでにないわけではなくて、岡本太郎の本は少しだけこれまでも読んだことはある。
その度に感動はするのだが、いつの間にか家に本が溢れてくると、古本屋に売ってしまうので岡本太郎の本は手許にない。だからそこまで強く影響を受けていないのだと思う。
今回のNHKの岡本太郎ブームは太陽の塔の内部が見ることができるようになるということによるもののようだが、そう言われるとちょっと行ってみたい気がしてくる。
岡本太郎は父一平と母かの子の三人家族かと思っていたが、この本によるとその他二人の男性がいたらしい。ヨーロッパに行くときもその二人の男性、家事を全部やってくれる歴史学者の恒松安夫と、かの子の主治医であり愛人の新田亀三が同行している。家族の形は一つじゃない。
でもこんなの、「TAROの塔」(テレビドラマ)で描かれてたかなあ。
岡本太郎に絵画の技術や素養があまりなかったこともはっきりと書かれていてすごいなと思った。
《これ〔=ピカソ〕に対して、太郎には古典的絵画の技術や素養はほとんどありません。》(134頁)
《「形だけ真似た現代美術」と非難する人たちも少なくなく、埴谷雄高なども、「太郎の言っていることはすばらしいが、絵はまったく分からない」などと言ったものです。》(135頁)
本を最後まで読んだら、なんとなく岡本太郎のことが分かった気がしてしまい、彼の本を読む必要はもうないのかなと思いかけていたのだが、「巻末エッセイ」のよしもとばななのエッセイを読んでいたら「つわりがひどくて」も岡本太郎の文章は読めたということなので読んでみようかなという気に再びなった。つわりがひどいわけではないのだけれど。
また、太郎の作品も見に行ってみたいなという気にさせる。
よしもとばななのことをひさしぶりにすごいと思った。
読書案内にあった、岡本太郎と宗左近の『ピカソ[ピカソ講義]』と瀬戸内晴美の『かの子撩乱』が気になった。
最後に、この本は中高生向けということで設問が3つあるのだが、愚直に答えてみる。
設問1 太郎の代表作「太陽の塔」はどのような意味をもって作られたのでしょうか。
解答 母への供養
設問2 太郎の初期の作品によく描かれた「リボン」は何を象徴していたでしょうか。
解答 母親かの子
設問3 フランスから帰国した二年後、太郎は危険人物として徴兵され、中国に送られましたが、自由を奪われた地獄のような軍隊生活で、彼はどのように生き延びたのでしょうか。
解答 最悪のところを引き受ける。「四番目主義」。殴られてもへこたれず、どんどん前に出る。