![太宰治全集〈8〉 (ちくま文庫)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51LkSNce81L.jpg)
「メリイクリスマス」は森まゆみの『聖子』に興味を持ったときに、「どんな話だっけ?」と思ったので気になっていた。『聖子』は読んでいない。「ヴィヨンの妻」は映画化されたときに気になったことがある。あまり好きな話ではない記憶があった。映画はもちろん見ていない。
どちらもおもしろかったが、とくに「ヴィヨンの妻」がおもしろかった。このころの太宰治をすべて読みたくなる。
最初の料理屋の主人の長い長い台詞が太宰治だなと思って、うれしくなる。
その後の、語り手が料理屋で働く清々しい感じもいい。
そしてお店のお客にけがされて、「私たちは、生きていさえすればいいのよ。」と言うのもいい。
NHK大河ドラマ『どうする家康』を見ていると、決める場面で主人公の松本潤が「どうしたらええんじゃ」とか「わしが守るんじゃ」とか大声で叫ぶのだが、でそこで「みなさん今日はここですよ!」とこっそり耳元で言われている気がして恥ずかしくなるのだが、そういう場面が太宰治にはない。
決め台詞というものがあるとしても小さな声でそっと言う。