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太宰治「メリイクリスマス」「ヴィヨンの妻」

2023年01月31日 23時55分56秒 | 文学
ふと太宰治が読みたくなり、「メリイクリスマス」と「ヴィヨンの妻」(ちくま文庫『太宰治全集8』所収)を読んだ。
「メリイクリスマス」は森まゆみの『聖子』に興味を持ったときに、「どんな話だっけ?」と思ったので気になっていた。『聖子』は読んでいない。「ヴィヨンの妻」は映画化されたときに気になったことがある。あまり好きな話ではない記憶があった。映画はもちろん見ていない。
どちらもおもしろかったが、とくに「ヴィヨンの妻」がおもしろかった。このころの太宰治をすべて読みたくなる。
最初の料理屋の主人の長い長い台詞が太宰治だなと思って、うれしくなる。
その後の、語り手が料理屋で働く清々しい感じもいい。
そしてお店のお客にけがされて、「私たちは、生きていさえすればいいのよ。」と言うのもいい。
NHK大河ドラマ『どうする家康』を見ていると、決める場面で主人公の松本潤が「どうしたらええんじゃ」とか「わしが守るんじゃ」とか大声で叫ぶのだが、でそこで「みなさん今日はここですよ!」とこっそり耳元で言われている気がして恥ずかしくなるのだが、そういう場面が太宰治にはない。
決め台詞というものがあるとしても小さな声でそっと言う。
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ドストエフスキー『貧しき人々』

2023年01月31日 22時39分16秒 | 文学
ドストエフスキー『貧しき人々』(光文社古典新訳文庫)を読んだ。
ドストエフスキーの評価は高すぎて、特に長篇小説はおもしろいかどうかなど考えることも無く読んでしまっている。小林秀雄も埴谷雄高も武田泰淳も大江健三郎もみんなみんなドストエフスキーが好きなのだから、ということで、おもしろいとかそういうことじゃなく読んできたと思う。何を目的に読んでいるかといえば、複雑な登場人物の名前を覚えることと、複雑なストーリーを覚えることを目的におもしろいとも思わずに、ポリフォニーを気にして読んできたかもしれない。
もうそれはやめて、愉しんでドストエフスキーを読んでいこうと思います。
『貧しき人々』はセンチメンタルで、哀しい小説だった。ドストエフスキーの中に何があるかといえば、貧乏に対する哀しみや貧乏人への共感みたいなものが根っこにあって、そこを読んでいくべきなのかもしれないなと思った。
その上に乗っかっている政治思想とかポリフォニーとかそういうものをまずはある程度無視して、共感できるところを読んでいってみます。
マカールが閣下の前で、大恥をかいて怒られるかと思っていたら、閣下はじつはいい人で百ルーブル札をくれる場面があり、ここがもっともいいと思った。
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プラトン『ラケス』

2023年01月29日 01時35分32秒 | 文学
プラトン『ラケス』(講談社学術文庫)を読んだ。
短いので話を捉えやすい。
子どもたちの教育のためにどういう先生がいいかと考えて、そもそも子どもたちに必要な、「勇気」ってなんだろうと考えていたら、それは「恐ろしいことと平気なことについての知識」ではないかと考えたが、よくよく考えたらそれは「勇気」がその一部であると考えていた「徳」について当てはまるので違うんではないかと思い、そこで議論は中止され、結局はソクラテスに子どもたちの先生を頼もうということになった。
このなんだかんだいろいろ話を引っ張っておいて、どこにも行き着かない感じがプラトンを読むときのいちばん難しいところだ。
私にはいまだに何か納得できた感じがしない。
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プラトン『饗宴』

2023年01月28日 19時04分57秒 | 文学
プラトン『饗宴』(光文社古典新訳文庫)を読んだ。
『饗宴』が語られるときはだいたいもともと一つだった男女が二つに分けられて、そのせいで別れた二人は求め合うのだという話がよく紹介されていた気がするが、読んでみるとこの話はソクラテスが語るのではなく、アリストファネスの話だった。男女だけでなく、男男も、女女も、分けられて求め合うのだという話だった。そうだったかな。憶えてなかった。
あまりおもしろいとも思えない本だが、最後のあたりのアルキビアデスの話で、美しいアルキビアデスがソクラテスを誘おうとふたりっきりになるが、ソクラテスが何もしてこなかったと語る話が印象に残った。
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小林秀雄『ドストエフスキイの生活』

2023年01月26日 23時39分21秒 | 文学
小林秀雄『ドストエフスキイの生活』(新潮社『小林秀雄全作品11』所収)を読んだ。
もう随分前から読もうと思っていたが、ようやく読めた。意外にもたいへんおもしろかった。
評伝のようなものはあまり読まないのだが、おもしろかったので江藤淳の『漱石とその時代』も読んでみようかという気になる。そのくらいにおもしろかった。
なぜこの本がずっと読めなかったかといえば、最初にある「序(歴史について)」が読めなかったせいだと思う。これが数ページ続くのだが何が言いたいのかはっきり言ってよくわからない。何度か読もうとして毎回ここで躓いていたのだと思う。こんなものがずっと続くのかと思うと嫌になって読むのをやめていたのだが、それをすぎるととっても普通のドストエフスキーの伝記になる。おそらく小林秀雄としては、やはり最初にガツンと言っておきたかったんだろうな。まだ若いし。
ずっとおもしろく、最後にまたちょっと難しくなる。
なので、『ドストエフスキイの生活』を読んでいない人には、最初の数ページを我慢して読めば読めますよ、と言いたい。
ドストエフスキーの評伝で一番手に入りやすいものであるし、小林秀雄の代表作でもあるので、読めばいい本だと思う。
ドストエフスキーのギャンブル依存症にものすごく腹が立つ。病気です。

さて、私も、《今は、「不安な途轍もない彼の作品」にはいって行く時》(313頁)なのかもしれない。そんな気がする。
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浜崎洋介『小林秀雄の「人生」論』

2023年01月23日 22時31分39秒 | 文学
浜崎洋介『小林秀雄の「人生」論』(NHK出版新書)を読んだ。
とてもおもしろかった。小林秀雄について、きちんと知ろうとすればまずはこの本を読むべきだと思う。すっきりとわかる。すっきりしすぎるくらい。素晴らしい本。
『ドストエフスキイの生活』
『無常という事』
『私の人生観』
などを今度まとめて読みたい。
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『老人と海』

2023年01月22日 22時07分49秒 | 英語
『老人と海 The Old Man and the Sea (ラダーシリーズ Level 3)』(IBCパブリッシング )を図書館で借りて読んだ。
ヘミングウェイのこの小説は好きなのだが、英語で読むのはむずかしかった。
人間は基本的に老人しか出てこず、三人称でheで呼ばれるのが、老人の場合もあるし、魚の場合もある。たまに、一人称のIで語られることもあり、「と老人は思った」というように続く。魚の名前や体の部分、船の用語など、これまで聞いたことのない単語も多い。
短いのに時間がかかった。
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内田百閒『小川洋子と読む 内田百閒アンソロジー』

2023年01月22日 11時58分56秒 | 文学
内田百閒『小川洋子と読む 内田百閒アンソロジー』(ちくま文庫)を読んだ。
テレビで角田光代が語っているのを聞いて少し興味を持ち、内田百閒を読んでみた。久しぶり。
内田百閒はものすごく好きというわけではないが、たまに何かのおりに読んでみることがある。そしてそんなにものすごく好きというわけでもないなという確認をすることになる。今回もそう。熱心に読んでみようとは思わない。
疲れているときとか、なにか長い話をきちんと追うのが面倒なときにはちょうどよい。古い日本語が心地いいときがある。
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高橋源一郎『居場所がないのがつらいです みんなのなやみ ぼくのこたえ』

2023年01月21日 22時57分49秒 | 文学
高橋源一郎『居場所がないのがつらいです みんなのなやみ ぼくのこたえ』(毎日新聞出版)を読んだ。
新聞連載の人生相談の二冊目。
一冊目のほうが印象深くおもしろかったかな。
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中畑正志『はじめてのプラトン 批判と変革の哲学』

2023年01月20日 23時39分37秒 | 文学
中畑正志『はじめてのプラトン 批判と変革の哲学』(講談社現代新書)を図書館で借りて読んだ。
これのどこが「はじめての」なのだろうか。ひどいと思った。想像力がない。
「はじめてのプラトン」と言われたら、初めてプラトンを読むくらいの、まあ『ソクラテスの弁明』か『プロタゴラス』かなんかを読んで少し興味を持ったくらいの読者を私は想像するが、この本はどのくらいの読者を想定しているのだろうか。自分のゼミ生だろうか。ちょっと腹が立つほどの本だった。
最初の、プラトンの本に登場するソクラテスと対話する人たちは当時の人々には馴染みのある人達で、
《二○二一年の時点で森喜朗や小泉純一郎、西部邁、麻原彰晃といった面々が実名で登場してやりとりすることを想像してほしい》(33頁)
のあたりはたいへん興味深かった。プラトンの本は小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』みたいな本だったんだなと思った。
しかしだんだん難しくなり、半分くらいから読む気が失せる。『国家』の話も初めての人には読めないと思うが、最後の「第八章 プラトン、その後に」は特にひどい。誰に向けて書いているのだろうか。はじめてのひとに対して書くことがなくなったんならもうそこでやめて、薄い本にして、はじめての読者がとっつきやすいようにしたほうがいい。
こういうふうにして哲学に興味を持った人を打ちのめして、どういう未来があるのだろうか。
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