
加藤陽子の本(『戦争まで』)を読んでいたら、吉野作造の論文について、
《吉野先生の論文は、すごく読みやすくて、読み始めると最後まで読みたくなりますよ。》(76頁)
と書いてあり、「そんなことがあるだろうか(いや、ない)」と古文の反語のような感想を抱いたのだがそれでも興味があったので、同じく吉野作造について書かれているらしい井上ひさしの『この人から受け継ぐもの』(岩波書店)を図書館で借りて読む。
(ちなみに書店で吉野作造の本を確認してみたが、やはりちょっと読みやすいとは言えなさそうだった。しかしそのうちに読むかもしれない。)
井上ひさしの本は講演集で読みやすい本だった。後半のチェーホフと笑いについてのエッセイはそんなに興味を惹かれなかった。
吉野作造についての講演は、とても吉野作造に興味を惹かせる講演だった。井上ひさしに『兄おとうと』という戯曲があり、吉野作造が主人公のようだ。吉野作造がどういう論文を書いたかよりも、どういう人でどういう時代を生きたかにまずは惹かれるので戯曲を読んでも良いなと思った。
宮沢賢治についての講演は、僕とは興味があわないなと思った。というのも、
《”性欲に悩む賢治”なんてのは、あまりおもしろくないですね。》(49頁)
とあり、宮沢賢治なんていまそこにしか興味がないのだけれど申し訳ない、と思った。
丸山眞男についての講演は、丸山眞男についてというよりも戦中戦後を振り返るといった感じだった。丸山眞男の「戦争責任論の盲点」、「軍国支配者の精神形態」、「日本ファシズムの思想と運動」を読むべきかなと思った。