![かわいい女・犬を連れた奥さん (新潮文庫)](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51KCKKKEBFL.jpg)
『かわいい女・犬を連れた奥さん』(新潮文庫)を読む。
「中二階のある家」
画家がある家族と知り合いになり、そこの家の次女と仲良くなるが、印象に残るのは長女のほうで、長女と画家は意見が合わないのだが、そういう意見の対立の会話が詳しく描かれる。
読み方がよく分からないのだが、結局この画家は妹ではなく姉のほうに惹かれていたということを、そうは書かずに表現しているという話なのだろうか。
「イオーヌイチ」
昔好きだったけど降られた女に数年後に合うと、なんだか昔の美しさが失われたようで、でも向うからは自分にアタックしてくる。そういう話。
「往診中の出来事」
リーザという工場経営者の娘のところに往診に行く医者の話。
リーザは病気でもないのに、過保護に育てられてベッドに横になっている。夜もいろいろ考えて眠れない。
リーザもリーザの母親も工場の人たちも幸せではないのに、家庭教師の女だけが幸せそうに料理を食べて酒を飲む。工場は家庭教師の女を幸せにするために存在するのだろうか。
そんな話。
「かわいい女」
以前も読んで強く印象に残っている。
女が、付き合う男に影響されて自分の意見をどんどん変える。演出家と結婚すれば芝居が第一、材木屋と結婚すれば経営が第一で芝居などを見る暇なんてないと公言する。
「犬を連れた奥さん」
不倫は文化だと石田純一は言っていないのだが、不倫は文学作品に描かれてきた。チェーホフも不倫を描いている。
そんなに僕にはおもしろくはなかったが、切ない感じは伝わる。
「谷間」
悪い女がいて、一家が不幸になる、というような話なのだが単純にそうとも言い切れない。
アクシーニヤは確かに悪い女で彼女のせいでみんなが不幸になるように思うが、その不幸をだいぶ遠くから描いている。
遠くから見ると不幸は不幸ではない。悪い女も不幸もただの風景、そんなことを言いたいのかも知れない。
「いいなずけ」
何が言いたいのかよくわからない。
サーシャは「生活をひっくり返せ」と言い、ナージャはその言葉に従うが、果たしてどうだったのだろう。生活をひっくり返さないほうがよかったという話なのだろうか、ひっくり返して良かったという話なのだろうか、いいとも悪いとも言えないという話なのだろうか、僕にはよくわからない。
チェーホフは僕にはまだ早かったのかもしれない。