ダブログ宣言!

ひとりでするのがブログなら、
ふたりでするのがダブログ。

夏目漱石『こころ』

2013年04月29日 17時18分28秒 | 文学
夏目漱石『こころ』(新潮文庫)読了。
久しぶりに読んで、この名作にだいぶ感動できなくなっているなと感じた。そこが感動的といえば言える。
夏目漱石では『それから』と『行人』と、この『こころ』が好きだったのだが。
遺書を読むと、先生は、必要なときに何も言わない人間で、しかし最終的には自分が得をするように立ち回るような人間だった。責任をとらない。結構ずるい。今日話そうと思っていたらKが自殺した、みたいに言っているが、自殺しなかったら、今日じゃなくて明日告白しようと先延ばしにする人間のように思える。人には真面目かどうか訊くくせに、自分はぜんぜん真面目じゃないじゃないかと思える。
しかし、そのような、恥ずかしい、人に言えないような人間性をきちんと見せるところ、そこを「記憶して下さい」と言うところ、に夏目漱石の良さがあるのだと思った。

引き続き『行人』と『道草』を読もうと思っている。
コメント

平田オリザ『わかりあえないことから』、漱石『こころ』半分

2013年04月28日 23時17分48秒 | 文学
刊行されたときに気になっていた、平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書)を読んだ。
企業は、自分の意見をきちんと言える人材を求めているといいながら、実は上司の意見を暗黙の裡に感じ取る人材を求めている、という話がこの本の売り文句だったので、そういう話が続くのかと期待していたら、そういう話はあんまり続かず、平田オリザの演劇論の話が中心になった。
おもしろくないことはないが、期待していたものとは違った。
わかりあえると思っているから苦しむので、わかりあえないものだという前提で、ある程度慣れていくことでコミュニケーション能力を上げるという発想は良いと思った。

夏目漱石の『こころ』を半分くらい読んだ。「下 先生と遺書」に入ったところ。
「中 両親と私」で父親があんなに死にそうになっていることをまったく忘れていた。死にそうな父親を放っておいて汽車で先生のところに向かおうとするところで終わる。そういう気持ちって、なんだかよくわからないなあ。そういう気持ちが(世の中に)ある、ということはわかる。でもいまの自分としてそのような気持ちになるということは想像できない。十年前ならあったかもしれない、そんなことを思う。
死にそうな父親というものに、十年前よりも興味がある(?)ということかもしれない。先生みたいな物言いをする人に十年前よりも興味がなくなった。
年齢というものは侮れない。
今回は「私」を「わたくし」と読むことに気を付けている。うっかりするとつい「わたし」と読んでしまっている。新潮文庫でもきちんと「わたくし」とルビが振られているので「わたくし」が正しい。
それがどういうことを意味するかはよくわからないけれど、本を読むというのは自分を捨てて他人の身に自分を置くということなのだろうから、「わたくし」で読まなければいけない気がする。そのうち旧かな遣いで読むべきと思い始めるかもしれない。
コメント

我孫子武丸『弥勒の掌』

2013年04月23日 00時02分50秒 | 文学
我孫子武丸『弥勒の掌』(文春文庫)を読んだ。
『殺戮にいたる病』は宮崎勤事件だったけれど、今回はオウム真理教なんだな。その時々の大きな事件を扱っている。
テーマが新興宗教ということもあるし、章ごとに主人公が交代するというところとか、村上春樹の『1Q84』を思い出した。
途中までは非常におもしろく、これは我孫子武丸の作品はすべて読むべきかもしれないな、とまで思っていたのだが、それまで膨らまし続けてきた風船が最後で一気にしぼむ感じだった。オチの部分も、ああそうですか、という感じで、驚きはなかった。予想できたわけでも、納得できないわけでもないのだが、まあ推理小説のオチですね、といった印象だった。だからいけないということもないけれど、まあ我孫子武丸作品はしばらく読まなくても良いかなと思った。
我孫子武丸が非常にわくわくさせるおもしろい物語を書くということは間違いない。
だんだん数が多くなって順位を付けるのが難しくなってきているが、

1位 『殺戮にいたる病』(我孫子武丸)
2位 『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野晶午)
3位 『仮面山荘殺人事件』(東野圭吾)
4位 『弥勒の掌』(我孫子武丸)
5位 『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ)
6位 『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』(泡坂妻夫)

『仮面山荘殺人事件』と同じかちょっと下か、ちょっと上という感じで、先に『仮面山荘殺人事件』を読んだから、そっちが上かなあ、というくらいです。
コメント

泡坂妻夫『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』

2013年04月19日 21時43分49秒 | 文学
泡坂妻夫『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』(新潮文庫)を読んだ。
この本にはあっと驚く仕掛けがあると聞かされていたので、期待していたが、あっとは驚かなかった。まったく驚かなかった。ごくろうさまでした、といった感想。
もしかして、この本食べれるの? と思いながら読んだのだが、さすがにそんなことはなかった。食べられる本だったらそりゃ本当にたまげたと思う。
そもそもこの本を叙述トリックと呼んでよいのか疑問だけれど、一応ランキングには入れてみる。

1位 『殺戮にいたる病』(我孫子武丸)
2位 『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野晶午)
3位 『仮面山荘殺人事件』(東野圭吾)
4位 『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ)
5位 『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』(泡坂妻夫)

ある程度、読もうとしていた作家のものは読んだ。
あと、もともと計画していたものとしては道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』くらいだけれど、そのほかに有名なミステリーである島田荘司の『占星術殺人事件』と森博嗣の『すベてがFになる』を読んでおこうと思う。
コメント

我孫子武丸『殺戮にいたる病』

2013年04月17日 23時32分10秒 | 文学
我孫子武丸『殺戮にいたる病』(講談社文庫)を読んだ。
完全にやられました。呆然。
びっくり仰天です。
犯人が追い詰められていく感じのわくわく感も良い。
終わりころの、なになに、これなに? と思わせたまま引っ張る感じも凄い。バーテンの話を聞くあたりはほんとうにわくわく。
欠点があるとすれば、怖すぎるということくらいだと思う。傑作。
順位はこうなった。

1位 『殺戮にいたる病』(我孫子武丸)
2位 『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野晶午)
3位 『仮面山荘殺人事件』(東野圭吾)
4位 『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ)
コメント

とっても残虐な『殺戮にいたる病』を途中まで読んだ

2013年04月16日 00時33分11秒 | 文学
オチが来てしまうと印象が大きく変わってしまう可能性があるので、いまのところの感想を。
いま我孫子武丸の『殺戮にいたる病』を読んでいる。この本はひどい。残虐すぎる。どのくらい残虐かというとマンガ『キン肉マン』に登場したてのラーメンマンくらい残虐、といってもそんなにわかるひともいないだろうけれど、とにかく残酷。
こんな本はこどもは読んではいけない。
当時、連続幼女誘拐殺人事件があって、それが背景にあるようだ。
エピローグというのはふつう小説の最後にくるものだが、それが最初にあって、犯人がつかまるところが描かれる。そして犯人と元刑事と犯人の母親の視点で、それぞれが同時進行ではなくて、少し時間的にはずれた時期で描かれる。
とても興味深い描き方なのだが、残虐すぎる。
タイトルはキルケゴールの『死に至る病』から来ているのだろう。
いまのところ、犯人が連続殺人を行っているのが描かれているだけなのだが、これにどんなオチが用意されているのだろうか。
びっくり仰天を期待したい。
コメント

東野圭吾『仮面山荘殺人事件』

2013年04月14日 22時04分14秒 | 文学
東野圭吾『仮面山荘殺人事件』(講談社文庫)を読んだ。
デヴィッド・フィンチャーの映画『パニック・ルーム』を思い出した。それと同じ監督の『ゲーム』も思い出した。
山荘に複数人の人物が集まって殺人事件が起きるという設定は古典的なのだが、その場に強盗が押し入るというところが斬新で、こんなことあるわけないだろ、しかもなんでこの設定でみんなで犯人捜しを始めるの? とは思うのだが、とてもわくわくする展開だった。
叙述トリックの部分よりもほかの部分で驚かせる話だった。
しかし、このオチのつけ方だと「結局最後まで読んだらそんなにおもしろくなかった」という印象になりがちだ。俺のわくわくを返せという気持ちになるからだろうか。小説の結末は、そんなに重要でないようでいて全体の印象を思い返す時に結構大きい部分を占める。しかし、読んでいる間は夢中になれたことを否定してはいけないと思う。

何年か前にSF小説を読んでいた時に順位をつけていたが、それを思い出したので今回も最近読んだ叙述トリックミステリーに順位をつけていってみる。こんなものは読んだ順番とか、そのときの気分とか、いろいろで変わるものであんまりアテにはなりませんが。

1位 『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野晶午)
2位 『仮面山荘殺人事件』(東野圭吾)
3位 『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ)

いまのところこんな感じ。
筒井康隆の『ロートレック荘事件』や島田荘司の『異邦の騎士』や伊坂幸太郎の『アヒルと鴨のコインロッカー』を読んだ時ほどのびっくり仰天になるミステリーに今回はまだ出会わない。
コメント

気になる叙述トリック

2013年04月12日 23時15分10秒 | 文学
叙述トリックのミステリーを読もうと思っていて、いま気になっているのは、
道尾秀介『向日葵の咲かない夏』
我孫子武丸『殺戮にいたる病』『探偵映画』
泡坂妻夫『しあわせの書』
東野圭吾『仮面山荘殺人事件』
あたり。
ミステリーなので、この本が叙述トリックであるらしいということを知ったらそれ以上はあまり調べないようにしている。インターネットで調べればなんでもわかるというのも難しいものだ。
東野圭吾は結構読んだのだけれど、過去の記事から検索してみたが『仮面山荘殺人事件』は読んでいないみたいだ。タイトルは気になった記憶はあるのだけれど、読まなかったのだろう。

いまはジョン・ル・カレの『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』に再挑戦している。
今度は読み終えたい。
そのほか、安岡章太郎の短編集も読んでいる。
コメント (2)

水村美苗『私小説 from left to right』

2013年04月10日 22時09分36秒 | 文学
水村美苗『私小説 from left to right』(ちくま文庫)を読んだ。
横書きで、しかも英語が頻出する変な小説だったが、なかなかおもしろかった。こんな小説は読んだことがないという小説だった。
あらすじというものも特になく、説明のしにくい小説なのだが、日本人女性が結婚もせずに年を取りしかもアメリカにいながら日本に憧れ続けるという非常に妙な話だった。姉もアメリカに住んでいて、長電話をしてくる。母親は男とシンガポールにいる。父親は老人ホームにいる。という設定。
何が言いたいのかよくわからない話なのだが、何が言いたいかよくわからないというところにこのひとの本物を感じる。
誰かに薦めようとも思わないし、また読みたいとも思わないが(読むのに非常に時間がかかってしまった)、凄い小説のような気がする。
コメント

乾くるみ『イニシエーション・ラブ』

2013年04月10日 00時12分19秒 | 文学
乾くるみ『イニシエーション・ラブ』(文春文庫)を読んだ。
最後の二行でどんでんがえしがあるということで読んだが、最後の二行で確かにどんでんがえしがあった。
しかし、最後の二行を読むためになんでこんな小説を読まなくてはならないのだろうという気持ちになった。こういうことがあると、この作家のものは二度と読むまいと思う。ひさしぶりに『世界の中心で、愛をさけぶ』を読んだときのことを思い出した。
いつも思うのだが、お店でも本でもなんでも、人付き合いでもそうかもしれないが、出会うきっかけというのがあってそこがうまくいくと続くのだが、そこがうまくいかないと縁が切れる。なので、いつもきちんとした態度と仕事をしておくべきだと思う。一度だけ、と思っていい加減なことをしておくと、過去にやったいい加減なことを見られてそこで見限られてしまう。ほかは全部いい仕事をしていても。ということはよく思う。
ミステリーファンの理系男子の恋愛妄想につき合わされた気分で、すこしうんざりしてしまった。
うんざりしてしまっていたので、最後の二行のオチを読んでも「だからどうしたんだ! ふんっだ!」という気になってしまった。
コメント (4)