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高橋淳子著「ただ、誠を尽くして浮世を渡る」:日本出版社

2010年11月07日 | 「Weekly 読書感想」

             

 時折那覇から電話を頂く、久茂地の「抱瓶」高橋女将から先般の沖縄出張時寄贈され、帰路の機内で紐解く。聞き語りの様な平明な文章、“バキー、アッコン、アパテ、キ-ミドゥン”等々の八重山方言に微笑み読んでいる内に、後半の記述部門に衝撃、読み続けることが出来ず思わずページを閉じました。

 酒乱癖の父、9人弟妹の長女とし生まれ、16歳で石垣を出島、大阪、神戸、東京上野、新宿二丁目で「女中」「アルサロホステス」「雇われクラブママ」、ヤクザ対応閲歴、最初の夫と離婚、連れ子二人で再婚した夫の死と波乱万丈。ここまではかねてから聞いていましたが、その後の愛娘の不信自殺に錯乱、続くご自身の数度のリストカット自殺未遂、1週間後生還した布団の側に、後追心中の恋人青年の死体を見る衝撃。ここまで来て読み続けられず思わずページを閉じました。「おしん」ストリーなどものの数ではない凄まじいリアルな来歴。

 ここまで逆境、辛酸嘗め尽くすと普通、人は世を儚み、恨み、反社会的スタンスになっても不思議ではないが、私が高円寺「抱瓶」で初めてお会いした時の高橋さんは逆に謙虚、丁重、礼節厚く、気品さえ漂う将に“他に誠を尽くす”の印象。

こうした高橋さんの現在は何処から来るのだろか!「環境、処遇に挫けない志の保持」を見る思いですが、まだ、書かれていない要因があるのか?

極貧、酒乱癖のお父さんと書かれていますが、そのご尊父、実は北海道帝国大卒の獣医というから驚き。あの時代、石垣出身ながら旧帝大・北大進学というのも想像を絶します。

高橋さんを取材、書いた本はこれまでに何冊かありましたが、本書はご自身が語った最もリアルで衝撃度の強い書。とは言え、ご本人も言っておられましたが、まだまだ書かれていない苦労談や事実があるのでしょう。

高円寺に自社ビルを取得し複数店舗を展開、古希を迎え、思い出の故郷那覇久茂地の地に一戸建て民家を改修、店舗展開する一方、私も一度お招きを受けた那覇市街を眼下に見下ろす国際通沿の高層マンションに居住、二人の御子息さんに東京、沖縄とそれぞれ店舗経営委譲、後継作りに励む当年73歳の高橋さんには改めて沖縄先島女性の強さと共に同じ企業創業者としてつくづく頭が下がります。
 那覇「抱瓶」常連の大田元沖縄県知事も推薦メッセージを書かれています。

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