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中島敦「山月記・李陵 他九篇」(岩波文庫)

2004年05月24日 | 「Weekly 読書感想」
 私がこの世に生を受けた翌年、33才で夭折したこの天才作家。確か大学受験時代、参考書で瞥見、いつか読みたいと思った本書、ついに読了。わずかに8ページの「山月記」がなぜこれほど天才作品として名高いのか。

 私には武帝に仕え、匈奴征伐に敗れた主人公を弁護し、宮刑に処された「史記」の司馬遷を一方の主題にし、犀利、雄渾な膂力に満ちた「李陵」の文章の方によほど圧倒された。

 今読んでいる座談会「日本文学史」の中で加藤周一は、「漱石、鴎外は漢文が読めて、漢詩も書けたが、彼以降の自然主義作家は漢文も詠めず、以後日本語のリテラシーを著しく落とした」と言っている。

 しかし、昭和18年33才で「李陵」を書いた著者、四書五経は言うに及ばず、広く中国古典・漢詩に通暁し、漢語を自家薬籠中にしたこの夭折天才、「和漢朗詠集」「懐風藻」もかくやと思うほどのそれこそ日本語リテラシーの凄さには圧倒される。

 所蔵7編あちこち、それこそ文字と言葉に自家中毒、翻弄される著者自身を描いている。
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