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「反復帰と反国家」(その2);社会評論社

2009年02月16日 | 「Weekly 読書感想」
反復帰と反国家―「お国は?」 (沖縄・問いを立てる)

社会評論社

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 著者の前利氏は奄美と沖縄の日本国家へ包摂課程の時間的差異を租税、徴兵、参政権施行等が沖縄は奄美からおよそ20年遅れて導入されたことを統計年度的に考察している。
 さらに、学校教育制度の導入で奄美と沖縄では想像を超える大きな時差があったことには驚いた。例えば1977~79年間、沖縄の人口31万に対し奄美は半分以下の12万。それにも拘らず奄美で開校された小学校は118校(83年)に対し沖縄では半数以下の53校(82年)。就学生徒は奄美が1854人に対し沖縄は1006人と沖縄は奄美の5分の1程しか無かったことになる。教員養成施設や教職員数にも両者には相当の差異があったことを当時の統計から実証している。これまでこういうデータを調べた例を私は知らない。
 これを前利は近代化とか後進性という言葉では表現せず、<ヤマト化><国家への包摂化>という概念で述べ、その背後に沖縄における旧慣温存策を指摘している。
 奄美を“辺境(マージナル)から境界(フロンティア)“という概念で捉え直し、無国籍、反復帰、反国家とアプローチしているが、これには高梨修による最近の奄美諸島の考古学的発見や高橋孝代の沖永良部史研究が背景に見える。ことに高橋論考への思い入れと拘りは要所に瞥見される。

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