世界地図の中で考える(高坂正尭著)

2016-09-21 00:00:55 | 書評
親米派であった政治学者高坂正尭氏の1968年の本が新潮選書として復刊した。

chizu


当時は自民党のブレーンだったようで、そのバックボーンが本書に書かれているかどうかだが、そうは思えない。もっとも当時はベトナム戦争が泥沼化していて社会全体が左傾化する時期だったので、それほど右寄りでもなくても親米自民党寄りとなったのだろうか。

思えば、彼の弟子で有名なのが、民進党の前原誠司氏。政治的な思想はともかく、潔癖症すぎるのは師匠と少し異なる。本書を読む限り、高坂氏は政治学者というか歴史学者に近いような気がする。現代史を説明するために、「過去の歴史的史実」と「人間の本質」を組み合わせて理解しているようだ。

タスマニア土人の滅亡の原因や、英国のインド他植民地の経営法、アメリカの軍事的作戦、20世紀末が「狂気と懐疑の世界」になっているだろうとの予言。

特に、植民地経営だが、植民地化して30年ぐらいは、現地のことを知らない人が管理するという点でうまくいかないことが多く、その後が軌道に乗るということだそうだ。そして戦後の植民地の独立の際は、ゆっくりと植民地を計画的に手放すことになったため、旧主国と独立国の関係を良好に保つ仕組みができあがったということらしい。日韓の場合は、その30年ぐらいで戦争の時代になり、戦後、急に日本人が引き揚げたというところに問題があるのだろう。

全体に未来予測的な部分が多いが、当たっているところと外れているところが半々ぐらいだろうか。


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