医学生(南木佳士著)

2012-03-20 00:00:55 | 書評
IGAKUSEI秋田大学医学部に通う学生、つまり医者の卵たちを主人公とした短編集である。それぞれの短編に、それぞれの純個的な事情を抱えた主人公が登場する。なんとなく私小説を横展開していくと、こういう文学になるのだろうかと思うのだが、本人は、文庫版のあとがきの中で、純文学ではなく大衆文学と書いているのだが、この作品を大衆小説というなら、村上春樹なんて、「娯楽小説」と呼ぶしかなく、渡辺純一は「ポルノ作家」ということになる。団鬼六に至っては、「アニマル」の類となるのだろう。

まあ、大衆小説的に解釈すると、医者になろうという子供たちって、だいたい人徳から大いにはみ出た者ばかりで、医者の息子とか、サラリーマン崩れとか、死体解剖に怯えたり、冷たい死体の感触に耐え切れずに女の温かみに逃れた結果、こどもができてしまって、「人の命を救うべき医者の卵が、堕胎しろ、とか言うべきかどうか」悩んだりする始末になる。

そして、この短編小説群だが、「スタンド・バイ・ミー」のような構造になっているわけだ。


小説の話とは大きく離れるが、知人に医者はたくさんいて、さらに時々医者と仲良くなったりする。同世代の医者たちは、多くは中学や高校の同級生たちで、まあ、色々なコースで現在に至ったというところだが、当然ながら性格を知っているので、かかりたくない人たちも多い。第一、自分よりも年下の医者と親しくしなければ、自分の老後の主治医になり得ない。

そういう意味で、ここ数年来、ちょくちょくお世話になっている自分より15歳ほど若い女医さん(旦那も医者)は、「あうん」の呼吸で、様々な検査を保険扱いで片付けてくれるので、あまり間を開けないように半年に一回は顔を出しているのであるが、そういうのも「医者と患者の友情」ということになるのであろうか。


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