輝ける闇(開高健著)

2020-06-22 00:00:41 | 書評
闇シリーズ三部作といわれるが、直接的にシリーズとして書かれているわけではないように思う。しかし、著者が「闇、闇、闇」と三作に使ったのだから、内面では繋がっているということかもしれない。「輝ける闇」と「夏の闇」の二作は平成7年頃に読んでいて、再読である。再読してもまったく覚えていない本もあるが、本作はかなり記憶に残っている。

何しろ従軍記者であり、かつ戦況を現地の支局で書くわけではなく、戦場やサイゴンの市街の毎日の生活の視点で、ベトナム戦争を描くというスタイルで活動していたため、危険でも街中に出て、街の裏側の情報を探し回らなければならない。戦場にいっても、前線をうろつき回る。

ただ、あくまでも南ベトナム側からの取材であり、いわゆるベトコン側からの取材ではない。アメリカは第二次大戦後も朝鮮半島、ベトナム、中東と、徐々に目的のはっきりしない戦争に突き進んできた。折しも現大統領が世界から引き揚げるようなことを口に出し始めているのだが、ベトナム戦争で亡くなった兵士たちに同情したくなる。

文学なのかルポなのか。本作や横光利一の「上海」といった作品についての評価は、いつまでも定まらないような気がする。

本作の中に登場したマーク・トウェインの「アーサー王宮廷のヤンキー」、開高健は英語で読んでいるようだが、日本語版で読んでみたくなった。

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