レッドアロー号の暴走

2004-10-19 15:27:18 | MBAの意見
先週14日に、西武鉄道の株主偽装事件が発覚した際に、とり急ぎ、断片的な報道から推測し、「西武鉄道が監理ポストへ」という短いブログをまとめていた。

要点は、
1.非上場会社であるコクド社の子会社であったことで、上場資格を失格した。
2.個人所有株がコクド社と一体であることが判明したが、その個人とは「特定の人」ではないか?
3.発覚直前から株価が下がっていたが、インサイダー取引のおそれがないか?
という3点であった。

結果としては、
1についてはまだ報道されていないが事実である。さらに浮動株が20%以下であったことが判明。

2については、1億株分1,200人の個人株主は社員や元社員の名義であるが、実際は単にコクドそのものが株主であったことになる。配当金はまとめてコクドへ送金しており、西武鉄道側は十分に名義借り株主であることを認識していたことになる。だいたい1億株に年初の株価1,500円を掛けて、1,200人で割ると一人1億2500万円の資産になる。そんな資産を持った社員株主が1200人もいると思うのだろうか。

3については、まさかと思っていたが、コクドそのものが市場で放出していたことが明らかになった。浮動株比率を引下げるために名義借り分を売切ろうとしたのだろうが、当然、需給悪化になるので株価は下がる。さらに発覚後は一気に下がり始めている。1500円以上の株価が発覚寸前には1000円に下がり、現在は700円程度である。

さらに、おまけがついたのは、辞任した堤義明氏が、記者会見の中で、「詳しい経理知識がなかった」、とか「西武鉄道が上場している意味がわからない」と会見の席で驚愕の発表をしたことである。

以上に従い、種々考察してみたい。


まず、、西武鉄道が上場を続けるためには、コクドが上場申請しなければならないが、実質オーナーの堤氏にその気がまったくないことから、無理であろう。要するに、西武鉄道と言う会社には株主によるガバナビリティは効かないことになる。つまり上場廃止となる。

名義貸しの問題は悩ましい。実は、多くの不人気上場会社でこの手の問題がある。株主数の不足とかで実質株主がいないので、関連会社の社員まで動員して、名義を借りて株主にあてていることは多いだろう。また社内に持株会とか作り、天引きしているような例も多い。そしてなかなか途中リタイヤできない(私の知人で山一證券の社員がいたのだが、持株会から引き出すことができる数少ない理由である「住宅の購入」に合わせて全額解約した直後に紙屑となったため、株価減損の被害だけは免れた男性がいる)。しかしあまり名義貸しを禁止すると、今度は強制的に実株主にしようとする動きが起こるかもしれないが、結局、そういう株は流動性がなく、株主のガバナビリティの効かない株であることは間違いない。固定株という範疇に含めるべきだろう。

一方、個人の側としては、そういうものに付きあわないようにするためには、「あらかじめ、押し付けられそうな株を、会社と無縁な証券会社でほんの少しだけ持っておく」というのが賢明だ。すでに個人株主リストに書き込まれていれば、株主数の増加効果はないから、会社から狙われにくい。

発表前の売り抜けの行為は、意図はどうあれ、結果として一般株主に大損害を与えたことになる。発覚をおそれて、売却しようとした段階で、もはやどうしようもなかったのだが、株式売却行為が新たな経済的被害者を出したことになり罪は重い。米国で話題の、マーサ・スチュアートの20倍位、罪は重い可能性がある。しかし、誰が罪を負うのかよくわからないが。

1500円程度で、現在の株主から公開買付をして、損害を補填した上、上場廃止をするのが筋だが、もはやどんどん日数は経過し、株価は下がり続けている。

次はオーナーの問題。
会計ルールを知らないとか、上場の意味がわからないというようなことを、会見の席でしゃべることから解釈すると、
・見識がない。
・社内で反対者を粛清し続けた結果、相談者がいなくなった。
・コクドを筆頭にした「みなし連結決算」が重要だが、存在しない可能性がある(実態を認識していない)。

コクドの手持ちの土地資産の評価がどうなっているかは知らないが、長野オリンピックに躍起になった最大の目的は長野まで西武の特急「レッドアロー」を走らせることであり、既に土地は取得済だったという噂もあった。結局JRが既存用地の上に高速電車を走らせてしまった。コクドの資産の目減りは免れないだろう。ただし、鉄道会社は日銭で回る。定期券は前払いだ。元々、キャッシュフロー経営なので、資産の目減りにあまり気をつかわないところがある。しかし、バランスシートが悪化することは一株の価値が下がることを意味している。

このブログ作るにあたって、私鉄各社の運賃を比較してみた。
西武のメイン区間である池袋-所沢は25?で330円だ。同じ池袋から東武線で25?はふじみ野で350円、JRは大宮で380円。
新宿発は京王若葉台が330円、小田急鶴川330円。
渋谷発は、東急長津田が300円、東急東横線横浜が260円と格安。
一方、大阪に行くと、梅田発25?は阪急御影270円、JRは380円、阪神住吉が290円となっている。
一方、なぜか近鉄はぐっと高い。やはり、同一ターミナルでは競合関係が存在するようだ。
しかし、実際の経営内容は運賃の差どころではないのは、ダイエーとイトーヨーカ堂の関係と同じである。

西武ライオンズの問題は、もう少し先になるだろうが、ライオンズの存続よりも西武電車の存続の方が優先度が上なのは間違いない。また、ライオンズはダイエーほど高く売れないと思うし・・・
ちょうど来シーズンが始まる頃にゴタゴタが始まるような気がする。


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