悪夢を見たい方に「パフューム」

2007-02-18 00:00:37 | 映画・演劇・Video
1dd02c80.jpg映画「パフューム」の試写会に行く。東京方面では3月からの公開だが、すでに公開されている地区もあるらしく、評判はネットでも読める。もちろん、それを読み過ぎてから観ると、面白さが半減してしまうから、ナナメ読み。どうも、怖い映画らしいことと、評判が賛否両論に二分されていることがわかった。原作は世界のベストセラーらしいが、読んでいない。

そして、圧倒的に女性客の多い都内のあるホールは、9割以上の入り。なんでも無料の物は人気が高い。デフレ脱却できずだ。そして、ここから延々とストーリーをここに書くと、いかにも不具合なので、象を撫でるように書く。


舞台は、1700年代の中頃のフランス。パリと香水の街グラース。悪臭と香水の渾然としたパリの雑踏で、生まれて直ぐに(ある理由で)孤児になった少年が、世界で二つとない異常に発達した嗅覚を使って、調香師になっていく。彼が調合した香水は、次々に大ヒットしていく。しかし、彼が本当に求めていた香水は、若い女性の体臭の香りのエキスを永久に液体として固定する方法だった。バラの花を煮詰めるような蒸留法は失敗。その他、様々な方法でトライ&エラーの末、たどり着いた方法とは・・

1dd02c80.jpgもちろん、フグの調理法と同じように、あるメソッドが成功する裏側には、多くの失敗とか犠牲が伴う。・・・

と書くと、最近、都内で起きた二つの事件を思いだすかもしれないが、そこまではいかない。事実は小説や映画より過激だ。ただし、スクリーン上の犠牲者の数は非常に多い。ということで、若い女性のヌード(といっても動かない)が多発する。むしろ、ミステリー仕立てのスリラーと言うべきだろう。勘のいい人は、途中で結末が読める。

ところで、映画から少し退いたところで、歴史的周辺情報をサービスすると、この1700年代の中ごろのパリは、糞尿やら生ゴミがあふれる大不潔都市。悪臭が充満し、疫病が流行し、郊外では狼の大群が出没したり・・。例えばベルサイユ宮殿は、絨毯がノミやシラミの巣窟になっていて、駆除業者が大繁盛していた。といっても駆除すべき絨毯の上に、暖めた毛皮をかぶせるという方法。こっちの方が居心地がいいわ、といって絨毯から毛皮に微小動物が移動したあと、中庭でバタバタとはたき落とすといった商売だったらしい(もちろん絨毯に少しは卵を残しておくのが商売のコツ)。

また、風呂に毎日入るというような、江戸的習慣がなかったため、人間の体臭自体が鶏小屋、豚小屋状態だったはず。そのために、香水のニーズが発生し、南フランスのグラースが香水の中心地になっていく。そこは花やハーブを栽培して、原料に使うのだが、それだけではなく、フランスではじゃ香や獣脂などの動物起源や鉱物まで使っていた(日本の香水の事始めは、資生堂がバラの花からエキスを抽出したことになっているから、いかにもおとなしい)。

そして、もちろんそれらの香水を使っていたのは、一部の貴族(封建制度による)であったのだが、この映画のエンディングの後、しばらくして、セーヌ川は赤く染まるわけだ。もちろんバラの花によってではない。

ところで、この映画には大御所であるダスティン・ホフマンが出演している。5番目くらいに重要な役だ。香水業者である。そして、パリなのに英語しか使わない。彼だけでなく、登場人物の誰一人としてフランス語を使うことはなく、全部、英語だ。当時はまだ、フランス語が発明されていなかったらしい。今度、大使館でパーティの時にこの新情報を披露してみよう。  

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