「八月十五日の夜会」(蓮見圭一著)

2011-10-06 00:00:10 | 書評
ちょっと怖い本である。事実なのかフィクションなのか。朝の通勤電車で読むには構わないが、深夜にベッドの上で読むにはちょっとタフな気持ちがなければ眠れなくなる。

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時は昭和20年8月から9月にかけて。場所は沖縄本島の北東にある離れ小島である伊是名島。日米戦争の末期に沖縄本島では日本軍がすでに敗退していた。陸軍も海軍も、組織的には壊滅し、終戦を迎える。

ところが、終戦が終わっても、ここ伊是名島では、日本軍の残党がゲリラ戦を展開していた。島に渡った米兵を射殺したり、島民をスパイ呼ばわりしてリンチ殺人し、浜に埋める。その他、全編が戦争の残忍さで満たされている。

沖縄本島から流れた敗残兵、中野学校の卒業生、仲間から意図的にはぐれ島の浜に不時着した特攻隊員。信じられるものは何もない絶望の世界が描かれている。

作家は、戦争の無残さを訴えたのか。あるいは戦後生き抜いた主人公たちの隠された人生を描いたのか。あるいはそれらの日本の記録を覆い隠す戦後日本の怠慢を描きたかったのか。

仮に、本書がノンフィクションに近いとするならば、「日本最後の戦闘」を描いた作品ということができるのだろうか。


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