今月の「波」誌

2016-02-17 00:00:39 | 書評
新潮社の書評誌「波」は、最近刊の紹介という役目のほかに、複数の作家による連載が含まれている。連載が終わると、少し手を入れて一冊の単行本として上梓されるので、1冊100円の波を読んでいると、たいへんに安い読書ができるわけだ。もちろん、本を買うのではないので、好きな作家を読むわけにはいかない。

そして、現在12の連載が進行しているのだが、たとえば小説に例をとれば、華々しい場面もあれば、流れるように山のない部分もある。12も同時に流れていると、時として、その多くが平坦な場面となる場合があって、全体としておもしろくない。

nami


その逆に、華々しい場面が重なるときもあり、2016年2月号はそうだった。

荒山徹「歴史の極意・小説の奥義」では北条義時というアンチヒーローに視点をおいている。源平時代に最終的に止めを刺し、かつ承久の変では朝廷を無力化する(3上皇の追放&幼帝の廃位)。空前絶後の大反逆。国家の流れと言うことからすれば、重要人物ベスト3のはずだが、まったくの不人気、と指摘。

橘玲「残酷すぎる真実」今回が最終回で、いよいよ禁断の一冊が書店に並ぶことになる。本来は口に出してはいけない犯罪(とか不倫とか)のDNAみたいなことが書かれている。たぶん少しは書き直すと思うのだが。

森功「暗黒事件史 日本を変えた犯罪者たち」ずいぶん過激なタイトルで、今回から新連載。三井物産マニラ支店長誘拐が取り上げられている。連載と言うことは、すでにほとんどが書き終わっているのだろうが、興味津々である。ただ、交響曲と同様に、冒頭に、かなりのエネルギーを注ぎ込む場合もあるので、次回以降については未知数。

堀本裕樹&穂村弘「俳句と短歌の待ち合わせ」今回は『誕生日』が共通のお題。二人は勝ったり負けたりと思うが、今回は引分けかな。
俳句「初音てふ贈りものかな誕生日」
短歌「垂直に壁を登ってゆく蛇を見ていた熱のある誕生日」

津村節子「時のなごり」実に第53回。4年以上の連載だ。今回は玉川上水のこと。全長43キロを傾斜92メートルという緩やかに勾配で、わずか1年で完成させている。太宰治の愛人との入水が、三行で記されている。(そういえば、愛人発覚的事件が立て続いているが、用水路の冷水に浸かろうという人間は現代にはいないようだ。ちょっと恥をかいて終り。)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿