キメラのこと

2018-03-05 00:00:47 | 市民A
最近、ナショナル・ジオグラフィックの週刊メールが面白い。

たとえば、ネアンデルタール人が壁画を描いていたことがわかり、従来の定説は現生人類の方が優秀で、ネアンデルタール人の方が無能だったため、現生人類が滅ぼしてしまったということになっていたのだが、しばらく前にDNA分析でヨーロッパ、アジアの現生人類のDNAの中にネアンデルタール人のDNAが2%含まれていることが発見された。

つまり、アフリカで発生した現生人類は、コーカサスあたりで北東アジアとヨーロッパに分岐したのだがどちらにもネアンデルタール人との混血が見られるわけだ。しかも文化程度は同じぐらいだった。となると、優秀か無能かというよりも、狂暴か温厚かということで存亡が決まったのだろうか。さらに、混血が起きるということは、現生人類とネアンデルタール人とは元々は同一種であったのだろうとの推測が成り立つが、それはいつどこで起きたのだろうかというように謎はどんどんと深く広がっていく。

先週号は、もっと奇怪なキメラの話だった。ギリシア神話に出てくる人獣混血話。ある意味でネアンデルタール人はもはやいないので、ルーツが何であっても構わないと言い切ってもいいのだが、キメラは違う。近未来の話だ。

前座は2017年初頭に行われた「人間と豚のハイブリッド胎児」。ヒト細胞を0.001%持つ豚の胎児が作られた。

今回は、ヒト細胞の比率が10倍(0.01%)になり、「人間と羊のハイブリッド胎児」が作られ、4週間まで育てられたとされる。

何のために、こんなことをするかというと、全米で毎日22人が臓器移植を待ちながら亡くなっている現実に対応し、人工的に人間の内臓を得るため。

原理は、ヒトの幹細胞(遺伝子に書き込まれた設計図通り、どんな細胞にも変化できる)を、羊(以外でも可)の胚に導入し、同時に羊のDNAを肝臓などの特定の臓器を作らないように編集すると、導入された人間の肝細胞がその穴埋めに臓器となる。その臓器は人間の細胞でできた臓器になる。これを取り出して人間様が利用しようということだ。

現在の混入率が0.01%というのはいかにも少なく、およそ全身に対する臓器の重さ比率分は必要だろうと言われている。少なくても1%は混入しないと実用化できない。

ということなのだが、少し考えてみると例えば10%の重さといわれる脳について、馬ののDNAに脳を作らないように書き込み、馬の胚に10%のヒトの肝細胞を導入すると、どうなるのだろう。人間の脳を持った馬が誕生するだろう。ケンタウロス。ペガサス。マラソン無敵。

といって、人間が将来の病気のために自分のクローンをリザーブするようにするのだろうか。一応、クローンの寿命は元の原体と同じと考えられているのだが。

クローンかキメラ。どちらの方法が勝つのだろうか。個人的には自分の脳は深海の海底をぶざまにさまようシーラカンスに埋め込んでほしいな。あまり泳ぎが得意じゃないし、核戦争の影響も少ないし。