昭和史(遠山茂樹、今井清一、藤原彰著)

2016-10-03 00:00:35 | 書評
昭和34年に岩波新書から発行された一冊。昭和は64年まで続くのだから、昭和34年ではまだ半分。今から30年も40年も60年先のことを考えても五里霧中なのだから、そもそも元号が長すぎたのかもしれない。敗戦と同時に天皇が御退位して元号も変えればよかったのかもしれないが、そうすると平成が71年も続いていることになるので、これも○○史と区切るには長すぎる。

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本書の構成としては、なぜ戦争に至り、敗戦したのかという部分が全体の8割で、戦後の体制がなぜ今のようになったのかが2割ということだ。終戦から9年の時に見える歴史の風景と70年経ってから見る風景はおのずと異なり、直後だから実感として見えていることは豊富だが、まだ戦争の続きで隠されていることも多かっただろうし、そのあたりを念頭に読まないといけない。

そういう意味だと、当時の情報的には、日本国憲法の戦争放棄条項だが、天皇制の維持と戦争放棄はセットになって決まったということになっていたようだ。

そして、現代の目からいうと妙なのは「核兵器」。当時の世論としては、日本が核武装することについては、その攻撃対象が中国やソ連だとすると、戦争で痛めつけた上に核攻撃までしてはまずい、という世論だったようだ。もし、朝鮮半島の国々が核武装して当方を狙ったとしても、一発落とされるぐらいは仕方がない、ということなのだろうか。

歴史観(特に現代史)の変遷を知るには、当時の現代史の記載を読むことが重要だということがわかる。