人種とは何か(寺田和夫著)

2015-09-09 00:00:20 | 書評
最近、世界の紛争を見ると、大きく二種類。

一つは領土問題。第二次大戦より前の時代まで遡って争うのだから、キリがない。

そして、もう一つが、宗教、人種、民族といった古典的な排他主義を起源にする紛争(戦争)だ。19世紀後半から20世紀の戦争は、経済的理由やイデオロギーの戦いだったことを考えれば、人間は退化しているのかもしれない。ホモ・サピエンスとは呼べないじゃないのということ。

jinsyuそれで、本書だが、いわゆる「人種」を取り上げている。どちらかというと、遺伝的問題に行きつくこのテーマは、かなりタブーの多い分野で、髪の色、肌の色、体格の大小や鼻やまぶたの形など外見的特徴が問題になるわけだ。

ただし、いかなる人種でも完全に交配可能なのが特徴で、人類は多型的(polytypical)な動物と言えるわけだ。動物によっては、ほとんど同一の特徴を持つ象やキリンのような種もあれば、犬・猫・牛のように様々な形のものもいるが、人類は、個別の能力差が僅少でかつ多型的という特徴があるのだろう。(たとえば、犬類では、各種の成犬を並べて五輪をやるわけにはいかない)

さらに、異なる人種の中にも比率の問題で、特徴の出ないものいる。伝統的日本人だって、一人一人はかなり異なっているし、そういう個体差はどの人種にも共通しているそうだ。

それで、本書から離れ、21世紀、22世紀、・・・と世界の将来を考えれば、世界中の人種は混ざり合っていくのだろうし、究極的には人類の体型や顔つきや肌の色も含め、ほぼ同一の工業製品(ロボット)のようになるのだろうかと、少し心配になる。