日本の方言地図(徳川宗賢編)

2015-09-17 00:00:45 | 書評
hogenまず、編者の徳川宗賢氏だが、姓名より想像できる通り徳川御三卿の一つ田安家の第十代目の二男。また社会言語科学の一人者として徳川宗賢賞が設立されている。質の高い論文が受賞対象なので、本ブログは参加資格なしだ。

本書の目的は、日本各地の方言を使われているコトバと地域を重ねていき、言語の伝播の過程を調べようという壮大な話になる。主に、沖縄地方、西日本、近畿、関東、東北といった場所や歴史が見えてくる。

たとえば宗賢氏が書いた部分に、「薬指」というコトバがある。関西では「べにさしゆび」と呼ぶ場所がある。

もともと薬指というのは、何のためにあるのかわからない指だ。ゴルフのグリップ論でも薬指の使い方は書かれていない。

そういうところから古来日本では、「ななしのゆび」と呼ばれていた。名前をつけられない指ということで、指としてはバカにされている。五人兄弟の4番目で、どうでもいいような呼び方。

しかし13世紀になって突然に重要な名前が与えられる。それが「薬指」なのだが、その薬という意味は、「薬師如来」様の指に起因しているそうだ。その4番目の指を曲げていることが多いらしい。ということで、一気に高貴な名前になる。そして17世紀になり西日本では紅指し指といわれることになる。場所は近畿地方。口紅を4番目の指でさしていたそうだ。

そして、京都大阪方面からの紅指し指は全国制覇の前に薬指が標準語となり、徐々にエリアを狭めているようだ。沖縄では、今でも「ななしゆび」らしい。