殿、その茶碗、枯れてないのでは?

2014-06-15 00:00:09 | 美術館・博物館・工芸品
羽田空港のANA側のターミナルビルの隅っこに「Discovery Museum」がある。時間待ちにのぞくと、「細川家珠玉の名碗」が開かれていた。

いうまでもなく、細川家は名家中の名家である。日本史をふりかえれば、天皇家と公家を除けば、武家といっても平氏も源氏も北条氏の策略で滅亡。北条を滅ぼして室町幕府を興した足利氏も信長・秀吉が追っ払う。となると、室町時代、足利に次ぐ(あるいは匹敵する権力を持っていた)地位にいたのが、細川一門。戦国時代を生き延び、キリシタン疑惑を夫人に押し付け、なんとか熊本方面でやっているうちに明治になる。

代々の殿さまが執着していたのが美術品の収集。半端じゃない。目白の永青文庫がその主たる展示室なのだが、とても入りきらない。室町時代に所有していたものや、その後、買い集めたものであるのだが、最近は、殿さま自らが茶碗を焼くというセルフレジ方式も始めたようだ。選挙で忙しい時もあるらしいが。


1


で、展示されているお宝の特徴は、14~15世紀の朝鮮・中国産のものは、いかにも形状が洗練されていて、いいようもない気品が漂う。細川家が気品を買い集めてしまったから、今や国家に気品がなくなってしまったのではないかとすら思うほどの立派な作が多い。2代忠興の秘蔵品「粉引茶碗 大高麗」が出品されている。


2


それに対し、16世紀日本の桃山時代に千利休の創意を具現化していった長次郎の「黒楽茶碗 銘 おとごぜ」手の中に収めると、心が和みそうだが、手に持てるのは殿様だけだ。


3


戦後の作としては、河井寛次郎の「茶碗 彩碗」。戦後日本の新旧の精神が見事に表現されている。河井は、将棋の大山名人が大不調に陥った時に「助からないと思っても助かっている」という陶板を贈っている。




そして、特別出品として細川護熙氏が出品しているが、それは過去の何にも似ていない美しい造形(ビーナスの乳房とでもいうべきか)と見る者を悩ませるような念入りな色付け。

簡潔に言うなら、「いつまでも生き生きと輝く」茶碗ということになる。

政界に戻る時期だったのだろうか。戻れないんだけど。