ベローナの日傘(演劇)

2013-12-09 00:00:32 | 映画・演劇・Video
千田是也氏の研究会「千田ゼミナール」が発展的に進化した「フォーラム・コイナさんの会」は、20世紀中はブレヒトを中心としていたそうだが、今は創作中心になっているとのこと。

先週末に麻布で「ベローナの日傘」を観劇。実際、ロメオとジュリエットの町であるベローナは、劇中にはほとんど登場しない。静かな海辺の町であるサンレモが舞台である。上流階級の冬季保養地である。

belona


冒頭、ディアナとフランチェスカ姉妹が少女だった時代の海辺の思い出のシーンで始まる。毎年春になると、沖にクジラがやってくる。クジラをみると幸せになるという言い伝えが、劇の底流に流れ始める。つまり、この劇が「幸せか不幸か」という題材を取り上げていることが感じられるわけだ。ただし、最終的にどちらに向かうのか、それはまだわからない。

*あらかじめ言うが、場所はイタリアだが、役者は全部日本人。もちろん日本語。

*一般的に演劇は悲劇をもって最高と思うが、通常演じられるのはハッピーエンド型の方が多い。あまり悲しいと、次の出し物の時に来てもらえないからだろう。

そして、一転して50年後の姉妹が登場。ここで、テーマが老人問題であったことがわかる。姉のディアナは、既に盲目。針のように痩せている。糖尿病のようだ(実際にはダイエットのせいか?)。春になるまで生きていられないと弱音を吐くし、口にするのは、他人の悪口ばかり。心がねじれている。妹が看護しているわけだが、当たり散らす。

そこに、二人が妹のように可愛がっていた相対的に若いサンドラが恋人を連れてきて、家を売って老後資金の貯えとするように説得をはじめる。

さらに、元男爵で没落貴族のデットーリ氏が登場。この方も同年代の老人で、ついに無一文の漂流生活に向かおうとしている。ちなみに元貴族を演じる役者の方は、「俺、元百姓だよ。」と貴族役に不安を表明していたそうだが、実際には、はまっていた。元百姓=土地成金だったということだろうか。

そのあと、あらすじは、あっちに行ったり戻ったりしたあと、「アンバーグリス」というマッコウクジラの腸内に発生する結石が登場する。劇中では「クジラのふん」となっていたが、あくまでも結石で、「天然の香料」として超高額で取引されている。

まあ、登場人物がこの高額拾得物を山分けすることで、人生の難問題をなんとかするだろうと、観客が楽観的予想をたてたところでフィナーレとなる。


網をもって海にいかなければ。日傘を忘れずに。