ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家(1)

2013-02-17 00:00:59 | 美術館・博物館・工芸品
t1横浜美術館で開催中(~3/24)の『ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家』展へ。

実は、ピュリッツァー賞に輝く戦場カメラマンであるロバート・キャパは、ロバート・キャパのことだと思っていた、と文法外れの表現をするのだが、「キャパ」とは個人の名前ではなく、キャパとタローの二人が共同作業としてスペイン内戦を取材しながら発表した写真の共同ペンネームみたいなものだった。

本名はアンドレ・フリーマンがロバート・キャパで、ゲルタ・ポホリレがゲルダ・タロー。一般には、ゲルダ・タローは「キャパの最愛の女性」と言われるのだが、本当は初期のキャパ作品の約半分はタローが撮影したものと推定されている(はっきりは分からないそうだ)。

で、その二人(特にゲルタ)が別々に仕事をすることがあって、その時は、ゲルタをゲルダとし、姓のポホリレがユダヤ系であることを窺わせることから。タローという名前を付けたそうだが、パリで面識のあったオカモト・タロー氏から借用したそうだ。もちろん、岡本氏の太郎は名前の方で、ゲルダ・タローのタローは姓の方なのだから、どこかで勘違いしたのだろうが、後で気付いた岡本氏は訂正要請する機会を失ったのだろうと憶測。

t2それで、ゲルダはスペイン内戦の取材中に27歳で死亡してしまう。女性従軍カメラマンの史上最初の犠牲者となる。そして、二人で使用していたロバート・キャパという架空の名前は、そのまま24歳のアンドレ・フリーマンが独占的に使用することになった。

ゲルダの特徴は、まず正方形のトリミングが得意だったそうだ。バルセロナ近郊で訓練中の共和国軍の女性兵士が銃を構える写真が代表作。

t3もう一つの特徴はヒューマニズム。共同制作中はゲルダ撮影の作品の方が良質であるように思える。キャパの方は、まだ写真家として発展途上だったのではないだろうか。ゲルダは戦争の悲惨さを、兵士の死を写すだけではなく、民衆の被害者を含めた人類の愚かさを訴えようとしているように感じる。