『ひめち』 劇集団「五色の花」公演

2010-03-28 00:00:08 | 映画・演劇・Video
himeti久しぶりに「麻布演劇市」に行く。六本木の麻布区民ホール。

今回は、結構本格派である。作・演出は川口圭子さんが3年をかけて練り上げ、照明や音楽も本格的。客の入りも上々である。

ひめち、とは徳島県南部の地魚で、一見、髭のはえた金魚みたいだが、どうも病みつきになるらしい。その地魚もめったにとれなくなり、蜜柑山も採算に乗らなくなり、そこに高速道路の計画がどこからか湧き上がり、裏金の飛び交う中、ついに工事に着手。

そういう町を二分する騒動の中、お遍路さんを相手の旅館の女将の周辺に起きる様々なできごとが、たまたまある一日に集中して起きる(というか、劇だから次々に勃発しないと困るが)。

地方と中央、自然保護と金権政治、家族愛と不倫愛、若者と老人。そして現在と過去、そして未来。さまざまな対立軸が1時間50分の中、旅館のロビーにある応接セットで繰り広げられる。


ところで、演劇を観ていると、映画よりもずっと怖く感じることが多い。というのも、例えば「鉄道員」とか、「横溝正史物」とか、現在を演じていながら、突然過去の忌まわしい思い出が筋立ての中に登場したりすることがよくあるのだが、演劇の場合、演じている人物が、すぐそばの舞台の上にいるわけだ。上手い役者の演技は、あたかもその生身の人間が実際にそういう体験をしたのではないかと思わせるものである。

その、なんとも現実と非現実のもやもやとした感覚が、ちょっと怖くて、だからやめられない。

3月26日~28日まで。