goo blog サービス終了のお知らせ 

ピストンエンジンは永遠か!な?

バイクを中心に話題を紹介します

SUキャブに加速ポンプは?

2005年12月04日 | 吸気系
人気blogランキングへ*クリックお願いします。

ハーレー用のキャブレターでCV、HSR、FCRなど殆んどに加速ポンプがついていますが、SUには見当たりません。
まず何故加速ポンプが必要なのか考察してみましょう。

s-1111
これは一般的にケイヒンバタフライなどと呼ばれ、エボの初期までずっと使われていた固定ベンチュリーのキャブレターの簡単な構造図です。
アイドリングでは吸入空気を最大に制限しているので、スロットルバルブ(バタフライバルブ)の前ではほとんど負圧はないのでメインジェットからのガソリンの流入はありません。それだけではアイドリングは不可能なので、スロットルバルブの僅かに開く部分に設置してあるスローポートから、パイロットスクリューで計量されたガソリンが吸入されます。
s-2222
スロットルバルブが急激に開かれると、エンジン回転数もまだ低く全般的に負圧が低くなってしまい、スローポート周辺の負圧もなくなりメインジェットからもガソリンは吸入されません
早く加速したい気持ちとウラハラにA/Fがとんでもなくリーン(薄い)になってしまいます。
アクセルが一定のときの空燃比が14:1~16:1なのに対し、加速をしたいときは8:1前後の濃い空燃比が必要になります。
アクセルをどんなに捻っても、この状況ではハーレーは加速してくれないのです。
s-3333
こういった状況を救うために、加速ポンプからガソリンを水鉄砲のように出してやって辻褄を合わせてやるというシステムですね。
s-4444
この図は加速ポンプとは関係ありませんが、アクセルが一定の場合やそれに準じた状況では、アクセル開度やエンジン回転数に応じた負圧によってメインジェットで計量されたガソリンが吸入されます。


s-5555
さていよいよSUの番ですが、CVの祖先であるためあらゆるところ原始的ではあります。
ピストンはドームの中を摺動しているのでサクションチャンバー(負圧室)の密閉度は低いし、ピストン自体も大きく重いので安定した素早い動きは望めません。
ところがタブンに逆説的ですが、スロットルバルブが急激に開かれてもピストンが機敏に上がらないため、ジェットニードルの付近は負圧が高くガソリンの吸入が行われて息つきは発生しません。

ダンパー?
古いタイプのSUキャブはドームの頭のキャップにダンパーが付いています。メーカーのリベラの説明ではオイルは入れるなと書いてあります。潤滑用にWD40をスプレーするだけとなっています。
昔ワタシが乗っていたベレGのSUにはオイルが入っていた覚えがあるので、ハーレーについたSUのダンパーにオイルを入れてみた事がありますが、ピストンの動きが抑えられすぎたようで加速ポンプの吐出量が多すぎるのと同じに黒煙がでてしまいましたね。
s-IMG_0218
左がSUのピストンとドーム、右がCVのサクションピストンです。
CVのはゴム製のダイアフラムにより摺動部を密閉して、しかもピストン自体を小さく軽くしてレスポンスを改善しています。
しかしそのために加速ポンプが必要になっていますね。



SUキャブ作動原理

2005年12月03日 | 吸気系
人気blogランキングへ*クリックお願いします。

今更という気もしますが、何か新しい発見があるかもしれません。

s-44

各部の名称もつけておきました。
カッコ内はメーカーにおける呼び名です。
SUキャブはこのようにスロー系統はもっていませんので、エンリッチナー系統(チョーク)を別にすればアイドリングから全開まで1つのジェットで司ることになります。

アイドリング付近のミクスチャー
主にアイドリングの(1/3スロットル開度くらいまでは影響)のミクスチャー調整は、バイメタリックスクリューを回転させる事によってメインジェットを上下に動かし行われるのも良く分ると思います。

バイメタル?
バイメタルとはご存知のとおり、温度による膨張率の異なる金属を組み合わせてその働きを利用するものですが、メインジェットを上下させるバイメタリックレバーはその名の通り1部にバイメタルが組み込まれていて、温度が上がるとメインジェットを上方向に動かして(50℃上昇で0.5mm程度?)ミクスチャーが薄くなるように温度による補正をさせる機能があります。

フロートバルブは以前にはガラスボールを使っていましたが、現在は一般的なものに変わっています。

s-11

ピストンの吸入行程で負圧が発生しますが、アイドリング時はスロットルバルブはほとんど閉まっているのでスロットルバルブの前では負圧が弱くなってしまいます。
サクションピストンは自身の重量とスプリングで下方向に押されていますので、弱い負圧では上昇しません。
ジェットニードルはテーパー角が付いているので根元付近は一番太くなっているため、メインジェットとニードルの隙間の開口部が小さいのでガソリンの流入量も最小限になります。
この最小限の量を調整するのがアイドリングのミクスチャーですね。

s-33
s-22




スロットルバルブの開度が大きくなると、サクションチャンバー内の負圧が大きくなりピストンが上昇して空気とガソリンの流入する量も増えるのがイメージできると思います。ベンチュリー効果によってメインチューブからガソリンが吸いだされ、それがフロートレベルに影響されるのもイメージできます。

中高速のA/Fは?A/Fとはご存知のように空燃比ともいい、文字通り空気と燃料の重量比のことですが、可変ベンチュリーキャブレターはジットニードルを何らかの方法で変化させてA/Fを変更します。
FCRキャブなどは、ニードルの形状違いが何十種類も用意され、しかもニードルを5段階に上下させることができます。
それに対してSUでは、ニードルは全部で4種類でしかも固定です。
実におおらかですね~。
ちなみにメインジェットは3種類です。

フロートレベル?
フロートレベルはフロートについたツメを動かす事により調整することができます。レベルの高さはガソリンの流入量にも影響しますが普通は規定値にしておきます。

可変ベンチュリー?
キャブレターはガソリンの気化というか流入をさせるためにベンチュリー効果を利用しています。
バタフライバルブも付いていますが、SUとかCVキャブのようにガソリンの出てくるジェットのところを負圧で上下するピストンを使ってベンチュリーの絞り面積を変化させるものを負圧式可変ベンチュリーといい、、FCRとかHSRのようにダイレクトにピストンを動かす方式と区別します。
昔のハーレーのようなケイヒンキャブやS&Sのキャブは固定ベンチュリーですね。
s-55







SUキャブレターの分解②

2005年11月28日 | 吸気系
人気blogランキングへ*クリックお願いします。

s-IMG_0120
完全に分解したらガム化したガソリンやカーボンを除去します。
右のコンデショナーは、キャブがエンジンに付いたままクリーニングできるエアゾールタイプですけれど、強力なので今回のような分解クリーニングにも使用できます。
今回はコンデショナーが在庫切れしてしまったので、更に強力な左の剥離剤を使ってみます。

s-IMG_0122

剥離剤はホントに強力で、掛けた瞬間にカーボンが浮いてきます。
強力なので、手に付いただけで痛いほどですから目に入ったら大変です。気を付けましょう。
s-IMG_0123
剥離剤は水で流せますが、下水に流してしまうと環境汚染を引き起こします。
SUキャブは一般的なキャブと違いスロー系統がないので、ごく小さい穴がありませんが、通路の中などはパーツクリーナーなど使って完全にクリーニングして下さい。
カルフォルニアではガソリンや有機溶剤で部品を洗わず、水溶性の洗剤を使っていましたね。有機溶剤は法律で禁止されていると聞きました。
写真はティクラーポンプのシリンダー内側をスチールウールで掃除しているところです。細いドライバーに巻きつけて余り力を入れず回転させるように擦れば良いでしょう。
他のブラス製パーツもスチールウールで擦れば輝きを取り戻します。
擦りすぎると磨耗して機能に影響してしまいますゾ。
s-IMG_0127
完全にクリーニングし終わったパーツ。



SUキャブレターの分解

2005年11月27日 | 吸気系
人気blogランキングへ*クリックお願いします。

ハーレー用SUキャブレターはその独特な外観と特性によって根強い人気があります。
外観に負けずに構造も独特ですが、決してブラックボックスではないのでこの際メカニズムも把握してしまいましょう。
メンテナンスを怠ると調子を崩してしまい本来の性能を発揮できませんので、自分のものは自分で面倒みることができるようになると乗る楽しみは倍増します。
s-IMG_0117
このSUキャブは長いあいだ放置されていたもので、俗にいうガソリンが腐っている状態です。
これでもまだ初期症状で、液体の面影があります。末期症状になるとガソリンが緑の粉末!になってしまい小さいポートが詰まってしまい完全に清掃するのには大変な作業を要する事もあります。
s-Picture2

今回は完全に分解するのでエンリッチナーやスロットルバルブのレバー類もはずします。
ドームやフロートチャンバーの取り外しは省略します。
ナットを緩める前にロックタブを起こす必要がありますが、「工具の使い方」の項で説明したように、加工したドライバーを使いタブを起こします。
s-IMG_0075
エンリッチナーのカムレバーはナットを取れば外れますが、スプリングには無理な力を加えないように注意。

s-IMG_0077
レバーを外すと白いカバーがあり、その奥には黒いシールが付いています。

s-IMG_0078
抑え金具を外せば、チョークボディ(メーカーの呼び名)を取り出すことができます。
s-IMG_0080

チョークボディには一部切り欠きがあり、回り止めになっています。
分解するときに確認しておけば組みつけのときに迷わずに済みます。
s-IMG_0081
抜き出したチョークボディで、Oリングのために抜くのは少々力が必要でしたね。
s-IMG_0083
外してみると、ガソリンが粘着して外しにくかったのが分ります。
薄いガスケットにも注意ですね。

s-IMG_0085
チョークボディには写真のようにスピンドルがはいっています。
スピンドルを回転させることにより通路を開けてガソリンを流入させる仕組みが分ると思います。

s-Picture4
スロットルバルブを外す前に、明るいほうに透かして見てバルブとボディの密着度をチェックしておきます。
密着が悪いと、スロットルアジャストスクリューを戻してもアイドリングが下がらないという現象が起きますが、必ずしも完全に密着しなければならないということではなく、今までそういった不具合がなければ、多少の隙間は許容範囲ということです。そのためには現状を把握しておくことは大切ですね。
s-IMG_0091
スロットルバルブのシャフトに付いていたレバー類を外すと、決して一回転はしませんがクルクルまわりますので裏を見てみると、大抵のバタフライバルブの取り付けスクリューは、このように緩んでも脱落しないようになっています。
s-IMG_0093
このようにプライヤーで摘めばスクリューを緩める準備ができます。
s-IMG_0099
このスクリューは大きさの割りに強く締まっているので、気合を入れなければ緩みません。
しかし!ドライバーの先が入る溝が引っ込んだ状態なので、ドライバーの先の幅もぴったりでないと使えません。幅が合っても薄いと力が入りませんね。
s-IMG_0098
手持ちの工具でドライバーはPBの#3が丁度良かったですね。スナップオンは幅が良くても薄くて力を入れるとドライバーのほうが負けそうでした。
s-IMG_0105
バタフライバルブはシャフトのスリットに入りスクリューの穴が大きくて、位置の調整ができるようになっているのが分ります。つまり、こうしたキャブレターは組み立て方によって大きく調子が変わりますので、細心の注意と愛情が必要です。
s-IMG_0112
バルブのシャフトにはこのようにシールが使われています。
シールが不良になると、ここからエアを吸ってしまいアイドリングが落ちないとか不安定などの不具合が発生します。

s-IMG_0114
分解した部品を並べてみました。結構な数の部品がありますね。

s-IMG_0116
オーバーホールキットに含まれている部品です。
これだけあればほぼ完全なオーバーホールが可能です。
付属のインストラクションにはパーツリストもあり、構成部品の全てが別個に買うことができるので、飽きなければ何時までも使用可能ですね。