三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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ソウル市長「安全性が検証されていない汚染水放出に反対、韓国政府も同じ考え」

2023年06月19日 | 
「The Hankyoreh」 2023-06-16 08:30
■ソウル市長「安全性が検証されていない汚染水放出に反対、韓国政府も同じ考え」
 ソウル市のオ・セフン市長は、安全性が検証されていない日本による福島第一原発の汚染水放出に反対するとの立場を明らかにした。
 オ市長は15日、ソウル市議会第319回第4次本会議の市政質問で、共に民主党のイ・ソラ議員から福島第一原発の汚染水放出に対する考えを問われ、「1000万人のソウル市民の健康と安全に責任を持つべき市長として、国際基準に合わず、客観的に科学的に安全性が検証されていない日本の汚染水放出には断固反対する」と答えた。
 「国務会議で尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対して、汚染水放出に反対するとの立場を表明する意向はあるか」とのイ議員の質問に対しては、「中央政府と私の考えは同じなのに、立場を明らかにする必要があるのか」と問い返した。そして「対政府質疑の過程でのハン・ドクス首相やパク・チン外交部長官の発言は私の考えと同じだが、誤解を受けている」、「政府が安全性の確保を疎かにしたように映る場面が演出されており、非常に残念だ」と語った。続いて「むやみに反対スローガンを叫び、怪談に近い扇動を行う勢力にも明らかに原因がある。その部分を明確にしなければならない」と付け加えた。
 オ市長は、下半期に汚染水が放出された時に備え、ソウル市はどのような対策を考えているのかと問われ、「食品の安全に責任を負う食品医薬品安全処、農林畜産食品部などの中央政府が、二重三重に今より徹底した検証システムを作動させ、汚染物質検査を増やすだろう」とし「ソウル市も検査要請があれば、どんな対象に対しても検査できるシステムを整えていく」と答えた。
ソン・ジミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-15 15:26


「The Hankyoreh」 2023-06-16 09:15
■[フォト]「放射性廃棄物入りドラム缶」模型を日本大使館へ…「放出やめよ」 =韓国

【写真】日本の放射性汚染水海洋投棄阻止ソウル行動のメンバーが15日午後、「放射性廃棄物」と記されたドラム缶をリアカーに積み、在韓日本大使館に向かって行進している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の環境団体が、福島第一原発の放射性汚染水の海洋放出の中止を求めて「放射能廃棄物」と記されたドラム缶を車に積んで在韓日本大使館まで行進した。
 「日本の放射性汚染水海洋投棄阻止ソウル行動」のメンバーは15日午前、国民の命と海を守るための抗議行動を開始し、ソウルの西大門(ソデムン)駅の前から「放射性廃棄物入りのドラム缶(模型)」をリアカーに載せて引いてソウル鍾路区(チョンノグ)にある在韓日本大使館まで行進した。
 日本大使館前に到着した人々は「日本による福島第一原発の汚染水放出の中止を求める抗議記者会見」を行い、日本政府に放射性汚染水の海洋投棄の中止と自国内での保管を要求した。続いて抗議書簡を日本大使館に渡そうとしたが、警察に制止された。
 ソウル行動は24日の全国第3回集中行動の日まで、毎日昼休みに日本大使館に抗議書簡を渡す予定だ。
 日本政府は12日、福島第一原発の放射性汚染水の海洋放出に使用する海底トンネルの2週間にわたる試運転を開始した。

【写真】日本の放射性汚染水海洋投棄阻止ソウル行動のメンバーが「放射性廃棄物」と記されたドラム缶をリアカーに載せ、在韓日本大使館に向けて行進している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社
【写真】日本の放射性汚染水海洋投棄阻止ソウル行動のメンバーが在韓日本大使館に向かって行進している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社
【写真】日本の放射性汚染水海洋投棄阻止ソウル行動のメンバーが在韓日本大使館を目指して行進している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社
【写真】日本の放射性汚染水海洋投棄阻止ソウル行動のメンバーがソウル鍾路区の在韓日本大使館前で抗議の記者会見を行っている=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社
【写真】日本の放射性汚染水海洋投棄阻止ソウル行動のメンバーがソウル鍾路区の在韓日本大使館に抗議書簡を渡そうとしているのを、警察が制止している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社
【写真】日本の放射性汚染水海洋投棄阻止ソウル行動のメンバーがソウル鍾路区の在韓日本大使館前で「汚染水放出、絶対にだめ」と記されたプラカードを手にしている=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

キム・ボンギュ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-15 16:55


「The Hankyoreh」 2023-06-15 08:51
 韓国政府と野党は国会での対政府質問最終日の14日にも、福島原発汚染水の海洋放出の安全性をめぐり舌戦を続けた。与党は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の福祉・報勲分野政策の成果を強調することに力を入れた。
 野党「共に民主党」はこの日国会で開かれた教育・社会・文化分野の対政府質問で、福島原発汚染水の海洋放出問題をめぐり、前日に続いて政府与党に攻勢をかけた。同党のナム・インスン議員はハン・ドクス首相に「日本が海洋放出にこだわる理由は、原発事故の痕跡を消せるうえに最も安価で簡単な方法であるため」だとし、「(原発)事故が起きた場合、汚染水を海に投棄する非常に悪い先例を作ることになる」と指摘した。
 これに対し、ハン首相は「今後日本が行う予定の30年間にわたる海洋放出の過程で、執拗かつ徹底的に国際機関と協力しながら科学的な措置が取られるようにする」とし、「違法で非科学的な海洋放出が行われた場合は、大韓民国が先頭に立ってそのような問題に反対しなければならない」と述べた。
 政府が国際原子力機関(IAEA)の調査結果を疑いもせず従っているという指摘も出た。民主党のユン・ジュンビョン議員は「IAEAは東電の試料だけを採取し分析しており、(東電から受け取った)情報も偏ったものであるため、分析結果が一貫していない」とし、「極めて限られた検証に過ぎないのに(韓国政府は)これに従っている。政府は国民の信頼を得られるよう独自に試料を採取し検証すべきだ」と述べた。
 特にハン首相が12日の政治・外交・統一・安保分野の対政府質問で、世界保健機関(WHO)の飲用基準を満たせば汚染水を「飲める」と発言したことに対しても攻勢が続いた。ナム・インスン議員は「首相は(汚染水を)一度飲むだけの話だが、福島沖と太平洋の魚たちは30年にわたり(汚染水に)されされ続ける。それについてどう思うか」と尋ねた。これに対してハン首相は「(国際的飲用)基準を満たしていれば、(原発汚染水から)韓国国民の健康は守られると思う」と答弁した。
 与党「国民の力」は、尹錫悦政権の政策を強調した。ユン・ジュギョン議員は、「(国家報勲処が)国家報勲部に昇格したのは尹錫悦政権の大きな業績であり、第21代国会が収めた与野党協力の成果だ」と述べた。ユン議員は尹奉吉(ユン・ボンギル:朝鮮の独立運動家。1932年上海虹口公園でひらかれた日本居留民による天長節祝賀会の会場で爆弾を投げて日本の高官たちに重傷を負わせた)義士の孫娘にあたる。一方、同党のキム・イェジ議員は政府の障害者政策予算の拡大を要求した。視覚障害をもつキム議員は、点字で印刷された質疑資料をもとに国務委員に対して落ち着いて質疑を行い、本会場の議員たちから拍手を受けた。
イ・ウヨン、シン・ミンジョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2023-06-15 02:39


「The Hankyoreh」 2023-06-15 07:06
■「日本の汚染水放出をただ傍観…大統領らしからぬ行動容認できない」=韓国
 釜山水曜集会参加者、日本総領事館前で集会 
 約10万人の反対署名を集め、大統領室などに渡す予定

【写真】14日、釜山東区草梁洞の日本総領事館前の「平和の少女像」付近で、釜山の市民団体が福島原発汚染水の海洋投棄を傍観する尹錫悦政権を批判する水曜集会を行った=キム・ヨンドン記者//ハンギョレ新聞社

 釜山水曜集会の参加者たちが、福島原発の汚染水海洋投棄に反対しない尹錫悦政権を批判した。
 釜山で日本の戦争犯罪謝罪・賠償運動をする「釜山キョレハナ」は14日、釜山市東区草梁洞の日本総領事館前の「平和の少女像」付近で水曜集会を開き、「絶対に容認できない福島原発汚染水投棄を手をこまねいて傍観している尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権を糾弾する」と明らかにした。
 同団体は「国民の憂慮を代弁すべき尹錫悦政権は、韓日関係改善という名目で原発汚染水の海洋投棄に対して全面的に日本政府と意思を共にしている。海洋投棄そのものに対して憂慮や遺憾、反対のような語彙を一度も使ったことがない。さらに与党『国民の力』は、日本の汚染水投棄に賛成することが国益だという虚言を並べ立てている」と批判した。
 また同団体は、「日本政府は戦争犯罪に対する心からの謝罪と賠償もなく、全世界の生命体の安全を脅かす原発汚染水の海洋投棄を推進している。今月末、国際原子力機関の最終報告書が出れば、汚染水の海洋投棄を始めるという。海が汚染されれば、地球の水が汚染されるのと変わらない。しかし、日本側は価格が安いという理由だけで汚染水の海洋投棄に積極的に乗り出している」と主張した。
 「釜山青年キョレハナ」の会員パク・ボムシクさんは「国民の安全を無視して国家間の関係だけに集中する大統領らしからぬ態度をこれ以上容認できない。汚染された海を絶対に後世に譲らないという気持ちを込めて(原発汚染水の海洋放出阻止に)最善を尽くす」と述べた。
 同団体は、釜山の市民社会団体と多くの政党が共にする「日本の福島第一原発汚染水の海洋投棄に反対する釜山市民10万人宣言運動」を先頭に立って知らせ、市民と力を合わせて汚染水の海洋投棄反対に努める方針だ。
 これに先立って釜山の市民団体は8日、「日本の福島第一原発汚染水の海洋投棄に反対する釜山市民10万人宣言運動」に乗り出した。1カ月間で釜山市民10万人の汚染水海洋投棄反対署名を集め、大統領室と釜山市、日本大使館などに渡す計画だ。
キム・ヨンドン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-14 14:23


「The Hankyoreh」 2023-06-12 07:23
■IAEA最終報告書が出る前に…汚染水放出、きょうから「試運転」

【写真】福島第一原発の敷地のタンクに保管中の放射性物質汚染水/聯合ニュース

 東京電力は、福島第一原発に保管中の放射性物質汚染水の海洋放出に向け、12日から試運転を開始する。国際原子力機関(IAEA)の最終報告が出ていないにもかかわらず、事実上、放出の日程を繰り上げている。
 東電は、今年夏の放出を前にして、12日から中心となる設備などに問題がないかを点検する試運転を約2週間実施する予定だと明らかにした。放射性物質がない水と海水を混ぜ、約1キロメートルの長さの海底トンネルを通じて海洋放出する作業を実際に進める予定だ。緊急状態が発生した場合、汚染水を止める遮断装置が正しく作動するかどうかも確認する。
 原発が位置する海岸から1キロメートルの長さで作った海底トンネルは、汚染水放出のための中心となる設備だ。海底トンネルを通じて、少し離れた場所から汚染水を放出すれば、水産物の汚染の懸念による漁民への被害を減らせるとする日本政府の考えによるものだ。試運転は約2週間ほど行われる計画だ。
 現在、汚染水放出に関しては、海に排出する前に汚染水を集めておく水槽の一部の工事だけが残っている状況。東電は今月末までにすべての工事を終わらせる方針だ。
 IAEAの最終報告も今月中に出される。IAEAは、先月29日から今月2日まで福島を訪問し、汚染水についての最後の調査を進めた。今月中に、汚染水の安全性▽原子力規制委員会の対応の妥当性▽試料調査の結果など3つの分野を包括的に含めた最終報告を発表する。日本では「何の問題もない」とする報告書が出てくると確信されており、放出の日程が進められている。
 日本政府は放出を控え漁業者に会い、詰めの説得作業に乗りだしたが失敗した。西村康稔経済産業相は10日、汚染水の放出によって直接の被害を受けることになる福島県と近隣の宮城県、茨城県など3カ所を訪問し、各地域の漁業団体関係者に汚染水放出に対する理解を求めた。
 3県の漁業者は「海洋放出に断固として反対する」と明らかにするなど、これまでの立場を守った。福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は取材陣に「今後も国の説明は聞くが、(汚染水放出)反対は変わらない」と述べた。西村経済産業相は「反対の声は受け止めないといけない」としながらも「夏ごろの放出方針に変わりはない」と明らかにした。
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-12 02:30


「The Hankyoreh」 2023-06-09 07:21
■「セシウム180倍のクロソイにNO…汚染水を日本の陸地に保管せよ」=韓国

【写真】福島原発汚染水の海洋投棄に反対する国際連盟団体の関係者らが、汚染されたクロソイが描かれたプラカードを掲げている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 福島原発汚染水の海洋放出に対する市民社会団体の懸念の声が高まり続けている。
 8日午前、ソウル鍾路区(チョンノグ)の日本大使館前を訪れた市民社会団体はそれぞれ記者会見を開き、日本政府の原発汚染水の海洋放出を糾弾し、「汚染水の海洋投棄を阻止するためのソウル行動」の発足を宣言した。彼らは口を揃えて「日本政府は福島原発汚染水を自国の陸地に保管せよ」と叫んだ。
 まず記者会見を開いた環境、農漁民、労働、市民社会などの団体が参加した「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するための共同行動」は8日、国際海洋のデーを迎え、共同行動を起こした。同共同行動には93の韓国の市民団体と76の日本の市民団体、その他27カ国の72団体および国際団体7団体が名を連ねたうえ、31カ国から208人の個人も参加し、汚染水の海洋投棄に対して反対する意思を伝えたと明らかにした。彼らは日本政府に福島原発の汚染水を陸地で保管処理するよう求めた。
 さらに「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するためのソウル行動」が記者会見を開いた。同団体は国際海洋デーを迎え、ソウル環境連合、ソウル民衆行動などソウル地域の20余りの市民社会団体で発足された。彼らは「日本政府は7月以後、福島原発の放射性物質汚染水の海洋投棄を予告している」とし「日本政府は福島原発の汚染水を陸地に保管する代案などが存在するにもかかわらず、海洋投棄を強行しようとしている」と糾弾した。また、「放射性物質汚染水の海洋放出は絶対だめだ」などと書かれたプラカードをポスターに貼り付けるパフォーマンスをした後、日本大使館に抗議書簡を渡そうと試みたが、警察によって制止された。
 一方、福島第一原子力発電所の港湾で獲れたクロソイから放射性物質のセシウムが食品基準値の180倍も検出されたという日本メディアの報道以降、海洋水産部は7日、これに関連して「福島産水産物の国内輸入はない」と明らかにした。
 問題のクロソイは大きさ30.5センチ、重さ384グラムで、原発1~4号機の沿岸で防波堤に囲まれたところでとれた。
 同日の現場を写真で振り返る。

【写真】「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するためのソウル行動」の発足記者会見で、参加者たちが原発汚染水の海洋放を糾弾するパフォーマンスを行っている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するためのソウル行動」の発足記者会見後、参加者たちが、日本大使館に抗議書簡を渡そうとしたが、警察によって制止されている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】福島原発汚染水海洋投棄に反対する国際連盟団体の関係者らが、日本大使館前で原発汚染水の海洋投棄を糾弾する記者会見を開き、スローガンを叫んでいる=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】8日午前、ソウル鍾路区の日本大使館前で「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するためのソウル行動」の関係者らが記者会見を開き、日本政府の福島原発汚染水の海洋投棄を阻止する「ソウル行動」発足を宣言している=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

シン・ソヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-08 20:46


「中央日報日本語版」 2023.06.06 07:08
■日本「海底トンネルに海水注入開始」…汚染水放流準備が大詰め
 日本が今年の夏の福島第一原発汚染水放流を控えて放流準備に拍車を加えている。
 地元民放である福島テレビは5日、東京電力を引用して陸側と海側の両方から海底トンネル内に海水を入れる作業が始められたと伝えた。
 東京電力関係者はこの放送でトンネルの大きさを説明しながら海水を満たすのに「単純計算で20時間くらい(かかる)」と明らかにした。変数が発生しない限り、早ければ6日にも海水を満たす作業が完了するものとみられる。
 日本は発電所から海まで掘った約1キロの海底トンネルを通じて汚染水を放出する予定だ。海水を満たす手続きに着手したということは放流が迫っているという意味でもある。
 東京電力は掘削作業を完了したのに続き、最近トンネル内部に残っていた各種重機などを撤去して原子力規制委員会(NRA)による検査を受けてきたが、これも前日に終了した。
 同メディアは「海底トンネルの工事は2023年6月末までに完了する見通し」としながら「これにより設備面での準備は整うことになる」と報じた。
 これに先立ち、日本政府は汚染水放流時期を今年夏ごろと予告して強行意志を曲げないでいる。先週には国際原子力機関(IAEA)調査団の包括的検証手続きも完了した。
 IAEAは日本が汚染水を放流する前に最終報告書を公開する予定だという。
 一方、先月21日に福島汚染水放流関連の現場点検のために日本に出国した韓国政府の福島視察団は、31日、「視察過程で東京電力から汚染水の多核種除去設備(ALPS)の入・出口の濃度ローデータ(未加工データ)を要求して確保した」と明らかにした。


「The Hankyoreh」 2023-06-06 06:59
■日本の原発汚染水海洋放出、最終段階に突入…海底トンネル完成、海水の注入開始
 福島第一原発汚染水の海洋放出のため、海底トンネルに海水を入れる作業が始まった。福島第一原発汚染水を海に放出するための準備作業が大詰めを迎えている。
 福島テレビなど福島地域のマスコミは5日、同日午後に福島第一原発から海まで続いた海底トンネルの掘削作業が完了し、海水の注入作業が始まったと報じた。福島第一原発の隣接海岸から長さ1キロメートルの海底トンネルを作る作業は、汚染水を海に放出するための核心工事。海底トンネルを通じて海岸から若干離れたところで汚染水を放出すれば、放射性物質のトリチウムの希釈が容易になり、水産物汚染に対する懸念から漁業関係者が受ける被害も減らせるというのが日本政府の考えだ。
 トンネル内部を海水で満たし、トンネルと海を連結すれば、汚染水の放出準備はかなり完了することになる。福島第一原発の運営会社である東京電力は今月末までに海底トンネル工事を完了する予定だ。国際原子力機関(IAEA)は最近、福島第一原発汚染水の海洋放出に関する最後の現地調査を終え、今月中に最終報告書を発表するものとみられる。今年春か夏に汚染水の海洋放出を始めたい意向を示してきた日本が、IAEAの最終報告書発表後、汚染水の放出を強行する可能性がある。
チョ・ギウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-06 00:24


「The Hankyoreh」 2023-06-05 20:03
■「汚染水が安全なら、なぜ日本に置かないのか」…「直撃弾」飛ばしたフィジー長官
 日本防衛相とともにしたアジア安全保障会議の公開発言 
 「島国は地球環境問題が安全保障と直結」

【写真】3日(現地時間)、シンガポールで開催された第20回アジア安全保障会議(シャングリラ対話)中に開かれた「海洋の安全保障秩序」に関するセクションに、ティコンドゥアンドゥア内務長官(右)と浜田防衛相が出席した/ロイター・連合ニュース

 「日本が(福島第1原発の)汚染水が安全だと言うなら、なぜ日本の中に置かないのか。フィジーは海洋放流を非常に心配している」。
 フィジー内務長官のティコンドゥアンドゥア氏が、日本の浜田靖一防衛相とともに出席した国際会議で、福島第1原発に保管している放射性物質汚染水の海洋放流を公式に批判したという。
 5日付の朝日新聞によると、3日(現地時間)シンガポールで開催された第20回アジア安全保障会議(シャングリラ対話)中に開かれた「海洋の安全保障秩序」関連セクションに、フィジーのティコンドゥアンドゥア長官と浜田防衛相が出席した。ティコンドゥアンドゥア長官はこの日「気候変化にともなう海面上昇などに露出した島国は、地球環境問題が安保と直結している」と訴えた。
 討論の中である参加者が浜田防衛相に福島汚染水の海洋放流について質問を投げかけた。浜田防衛相は「国際原子力機関(IAEA)が確認し、様々な国の科学者にも評価を受けながら安全性を確認し、理解を受ける中で放流していく」と説明した。
浜田靖一防衛相が3日(現地時間)、シンガポールで開催された第20回アジア安全保障会議(シャングリラ対話)中に開かれた「海洋の安全保障秩序」関連セクションで発言している。フィジーの内務長官(右端)が演説を聞いている/ロイター・連合ニュース
 浜田防衛相の話が終わると、近くにいたティコンドゥアンドゥア長官は「日本が汚染水は安全だと言うなら、なぜ日本に置かないのか」と批判した。続いて「もし海に放流すれば、いつか(汚染水が)南側に流れてくる。非常に心配している」と強調した。フィジーの内務長官が浜田防衛相の面前で汚染水の放流をめぐる日本の矛盾を直撃したわけだ。
 フィジーは太平洋の島国18カ国が作った太平洋島嶼国フォーラム(PIF)の加盟国だ。太平洋の島国は、核物理学・海洋学・生物学など各分野の国際専門家で構成された独立的諮問団を構成し、1年間検証した末に福島原発汚染水の安全性が不確実だとし「放流延期」を求めている。
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-05 18:50


「The Hankyoreh」 2023-06-05 08:38
■韓国の沿岸漁業者団体が汚染水放出を批判した教授を告発

【写真】福島第一原子力発電所にある汚染水貯蔵タンク。日本は原発事故で発生した貯蔵中の汚染水133万トンを30年かけて海に放出する計画だ/聯合ニュース

 韓国の漁業者が、福島第一原発の汚染水放出に批判的な意見を表明してきたソウル大学原子核工学科のソ・ギュンニョル名誉教授を告発した。
 忠清南道の泰安(テアン)警察署の4日の説明を総合すると、韓国沿岸漁業人中央連合会は2日、ソ教授を業務妨害容疑で処罰するよう求める告発状を提出した。
 警察の関係者は「漁業者団体は告発状で、ソ教授が放送などに出演して事実ではない内容を語るなど、漁民の業務を妨害したと主張している」と説明した。
 ソ教授はこれまで放送などに出演して「水深200~500メートルの水は中国の方へ行き、中国の東シナ海と南シナ海の方へと進んでから台湾海峡を通って済州道近海を進み、東海(トンヘ)に流入するのに5~7カ月かかる」と主張してきた。また「きれいな水であれば、私なら捨てないと思う。工業用水、農業用水として使う。安全ではないということを反証している」などと発言した。
 韓国沿岸漁業人中央連合会は、ソ教授の発言のせいで漁民が被害を受けていると主張している。同連合会のキム・デソン会長はハンギョレの電話取材に対し、「(ソ教授は)科学的根拠なしにいいかげんな発言をしている。被害はまるごと漁民がこうむる。現在、南海(ナムへ)に住んでいるが、(福島第一原発事故から)12年たったのに汚染水の影響を受けた魚は釣ったことがない。科学的根拠があれば漁民が損害を受けても発表すべきだが、今はそのようなものはない」と主張した。
 キム会長はまた「ソ教授は地下に浸透した汚染水をカタクチイワシが食べ、カタクチイワシは大きな魚に食べられてがんを誘発するというが、理解できない。魚に関心のない人はそのままやり過ごしても、我々にとっては生計だ。命だ。科学的根拠なしに言ってはならない。ソ教授は国際原子力機(IAEA)も信じられないと言っているが、国際機関を信じられなかったら我々国民は何を信じるべきなのか。荒唐無稽だ。あんな話をされたら消費が落ち込んでしまう。我々は破綻・消滅の道を歩まなければならない」と訴えた。
パク・スヒョク、アン・テホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-04 19:42


「中央日報日本語版」2023.06.01 17:10
■日本の汚染水5カ月後に韓国周辺海域に? 韓国海洋水産部、教授の主張に反論
 韓国海洋水産部が最近日本の福島汚染水放流と関連してソウル大学原子力核工学科のソ・ギュンリョル名誉教授が提起した疑惑に対し積極的な釈明に出た。政府が特定教授の主張にひとつずつ反論するのは異例だ。
 海洋水産部が1日に発表した「国民の健康と安全を守れるよう努力します」という題名の報道説明資料によると、ソ名誉教授は最近ある放送に出演し「水深200~500メートルの水は中国側に行き、中国、東シナ海と南シナ海側に行って台湾海峡を通じ済州島(チェジュド)近海に行き東海(日本名・日本海)に流入するのに5~7カ月かかる」と主張した。
 だが海洋水産部は最近発表した韓国原子力研究院と韓国海洋科学技術院で発表したシミュレーション結果を引用し「放出された汚染水のうち三重水素は4~5年後から韓国周辺海域に流入し10年後に1立方メートル当たり0.001ベクレル前後に到達することが明らかになった。この濃度は韓国海域の三重水素平均濃度(1立方メートル当たり172ベクレル)の10万分の1水準」と反論した。海水が流入する時期もはるかに遅く、それにともなう影響もわずかだという趣旨だ。

◇「バラスト水交換、実効性ない」vs「以前から使っていた方式」
 船舶のバラスト水交換と関連した攻防も続いた。バラスト水は船舶のバランスを取るためタンクに注入・排出する海水で、これまで原発汚染水がバラスト水を通じて国内海域に流入しかねないという懸念が提起されていた。これに対し韓国政府は福島近隣2県で注入されたバラスト水は管轄水域外で交換し入港するように措置している。
 ソ名誉教授は公海上でのバラスト水交換は船舶がバランスを失いかねずとても難しいと指摘した。また、バラスト水を交換しても排出したバラスト水が再び船舶内に注入されるため実効性がないと明らかにした。
 だが海洋水産部は「バラスト水交換はタンク別に順番に交換したり注入と排出を同時に行うなど船舶の安定性に影響を与えない方法で航海中でも十分に可能で、すでに使われてき方式。ほとんどの船舶は注入口と排出口の位置が違うため排出したバラスト水が注入されるのではない」と反論した。

◇「水産物は自由に行き来する」vs「韓国沿岸に来る可能性低い」
 ソ名誉教授は水産物が海流と関係なく日本と韓国を思いのままに行き来するのでしっかりとした検査が大変だとも指摘した。これに対し海洋水産部は「水産専門家の意見によると国内で漁獲される魚類の分布、回遊ルート、操業位置、海流移動などを考慮すると、福島周辺海域の魚類が韓国沿岸まで移動する可能性は極めて低い」と明らかにした。続けて「日本の原発事故を機に生産段階の水産物の放射能検査品目と件数を拡大し、遠洋産・近海産・養殖水産物すべてに検査を実施している。2011年3月から現在まで実施した約2万9000件の検査で放射能の基準値を超過した事例はなかった」と付け加えた。
 海洋水産部関係者は「確認されていない事実に基づいた主張で漁業関係者だけでなく水産業界への被害が懸念される点を考慮して一方的な主張を流布しないよう求めたい」と強調した。


「中央日報日本語版」 2023.06.01 09:09
■「疑問を解消できない視察」 汚染水視察団の発表を韓国環境団体が批判

【写真】福島県富岡駅にある放射能線量計。ここは福島第1原発から10キロ離れている。イ・ヨンヒ特派員

 福島第1原発の汚染水処理施設を点検して帰国した韓国政府視察団の結果発表に対し、環境団体が31日、「懸念したように日本政府を立てるような視察だった」と批判した。
 日本放射性汚染水海洋投棄阻止共同行動(以下、共同行動)はこの日午後2時、ソウル市中区(チュング)で記者会見を開き、「視察団派遣を決定した時から懸念されたように、日本政府の立てるような視察だったことが明らかになった」と主張した。
 共同行動は▼視察団が試料採取と検証もできずに帰国し、東京電力が提示した標本の代表性問題に対する疑問を解消できなかった▼廃炉(原子炉永久閉鎖)過程が進行されない状態で30年以上続く汚染水発生問題の対策への評価がない▼トリチウムの生物学的濃縮と海洋生態系に及ぼす影響を十分に扱っていない点などを問題に挙げた。

◆「海洋投機が他の代案と比べてよいという根拠を知るべき」
 この日、記者会見に参加した専門家らは「視察団が日本の汚染水処理設計自体に問題がある可能性を検討した内容が発表になかった」と指摘した。海洋放出が他の処理方式と比較してこの問題を解決するうえでよいという根拠を視察団が確認、把握することができなかったというのが最も重要な問題ということだ。
 ソウル大の白道明(ペク・ドミョン)教授(元ソウル大保健大学院長)は「原子力業界である措置を取る時は『正当化の原則』(措置を取って得る社会構成員の利益が害よりも大きくなければいけないという原則)に基づかなければいけない」とし「日本の汚染水海洋投棄(放出)が正当化の原則に基づくものかについて視察団が点検したのか疑問」と述べた。
 原子力の安定と未来(民間原子力団体)のイ・ジョンユン代表は「福島原発事故が発生した2011年から海洋投棄を決定するまでの過程をみると、最初から海洋投棄を念頭に置いて汚染水処理計画を設計して進めてきたことが分かる」と主張した。

◆「トリチウム体内被ばく時は有害という反論も」
 トリチウムの有害性もさらに深く問いただすべきという指摘もあった。白教授は「トリチウムの場合、外部被ばくが危険でないと知られているが、有機結合を通じて体内に蓄積された水産物を摂取するなど体内被ばく時に人体に悪い影響を及ぼすという反論が引き続き提起されている」と説明した。
 イ代表も「一般原発から放出するトリチウムとALPS(多核種除去設備)を経た福島汚染水は違う」とし「汚染水にはトリチウムの他にもプルトニウムなど多核種が含まれていて、ALPSはこれを減らすだけで完全に除去することはできない」と話した。

◆「視察団がすべき質問と検証はこれ」
 視察団が海洋放射能レベルを評価する際、表層海水調査に限定するのではなく、海底堆積物、魚類の放射能数値に基づいて福島汚染水海洋放出安全性問題を判断すべきという指摘も出てきた。単純に表層海水の放射能を根拠に人体に及ぼす影響を検討してはいけないということだ。
 白教授は「韓国原子力安全技術院(KINS)の海洋環境放射能調査の結果をみると、東海岸の海底堆積物からセシウム137の濃度が(福島原発事故が発生した)2011年に急激にピークになった後、減少している」とし「この数値が意味することについて質問を投じるべきだ」と述べた。


「The Hankyoreh」 2023-06-01 07:40
■韓国の環境団体「汚染水視察団を解体し、海洋法裁判所に日本を提訴すべき」
 「汚染水投棄阻止共同行動」主催の懇談会 
 「トリチウム濃度、微々たるものでも発がん物質」

【写真】市民団体と環境団体が集まった「日本の放射性汚染水の海洋投機阻止共同行動」が5月31日、ソウル中区のフランシスコ教育会館で記者懇談会を開き、政府が派遣した福島原発汚染水視察団は日本政府の汚染水海洋投棄の手助け役だと批判した=ナム・ジョンヨン記者//ハンギョレ新聞社

 先月31日、福島原発汚染水の韓国専門家視察団が行なった発表と関連し、韓国の環境団体が日本政府の汚染水投棄を手助けするものだと批判した。
 市民団体と環境団体が集まった「日本の放射性汚染水の海洋投機阻止共同行動」は31日、ソウル中区のフランシスコ教育会館で記者懇談会を開き、福島原発汚染水専門家視察団を解体し、日本の汚染水海投棄の件を国際海洋法裁判所(ITLOS)に提訴するよう政府に求めた。
 加湿器殺菌剤やアスベスト(石綿)など安全保健について研究してきたソウル大学のペク・ドミョン名誉教授(保健学)は、同日の懇談会に出席し、「視察団は主要設備が設計通りに建てられたのか見てきたというが、設計自体については質問しなかった」と指摘した。ペク教授は、日本政府が海洋放出の基準値を設定するにあたり、一年間の露出を想定した点や、原発汚染水の貯蔵タンクで19個の核種だけを測定した点などについて(専門家視察団が)質問しなかったとし、「そもそも日本の仮定と設計が(健康被害について)最大限の注意を払っていない」と批判した。
 日本が排出する原発汚染水のトリチウム濃度は微々たるもので安全だという一部の主張に対し、ペク教授は「トリチウムは放出エネルギーが少なく、健康影響が大きくないと知られているが、依然として遺伝毒性と生殖毒性のある発がん物質だ。体を構成している成分と結合すれば、より大きな生物学的効果が現れる可能性もあるという反論が提起されている」と説明した。
 原子力安全分野を専門とする「原子力の安全と未来」のイ・ジョンユン代表は、日本は福島原発事故以降どれだけ多くの放射性物質が海と地下水に流れたのかについて情報を発表していないとし、「海と地下水の流入総量を提示し、これを分析・評価して、今後の生態環境にどのような変化をもたらすのかを考えなければならない」と指摘した。特に「最も重要なのは、コリウム(炉心溶融物)が建物の床を突き破って地中に染み込み、地下水と交流しているという点」だとし、「日本はこれに関する解決策を示す取り組みをおろそかにしている」と指摘した。コリウムは使用済み核燃料が溶けて流れ落ちた物質で、専門家たちはこれを福島第一原発で生成される放射能の主な源泉だと指摘する。これについて、イ代表は「日本は公海上に汚染水を捨てる破廉恥な行為をやめ、この問題を独自に解決しようとせず国際社会に協力を求めるべきだ」と主張した。
 福島原発汚染水視察団が日本側から受け取った多核種除去設備(ALPS)のデータはあまり意味がないという主張も提起された。環境運動連合のアン・ジェフン活動処長は、この日ハンギョレとの電話インタビューで、「東京電力ですでに遂行された、サンプル数の少ないデータ」だとし、「ALPSで本当に核種の除去がうまく行われるのかどうかを共同実験し、何回行って濃度がこれだけ減ったということが示されなければ、信頼性を得られなくなるだろう」と指摘した。ソウル大学のソ・ギュンリョル原子核工学科名誉教授も「安全施設の異常点検をするために(視察団を)派遣したわけではない」とし、「ALPSの性能を見るためには、そこでろ過される不純物、セシウム、ストロチウムなどがきちんとろ過されているかを確認する必要があるが、それができなかった」と指摘した。
ナム・ジョンヨン、キ・ミンド記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-05-31 17:29


「The Hankyoreh」 2023-06-01 07:02
■[7問7答]40年間海に捨て続ける汚染水、人類にどんな危険をもたらすのか
 福島第一原発汚染水の海への放出7問7答 
 「放出賛成」のIAEAが検証独占 
 日本は放射性物質の測定も縮小

【写真】福島第一原発の敷地内の汚染水保管タンク=東京電力提供//ハンギョレ新聞社

 国際原子力機関(IAEA)の調査団は先月29日から今月2日まで、福島第一原発の汚染水の海への放出についての包括的検証に向けた最終調査を日本において行う。23~24日に福島第一原発現地を点検した韓国視察団も、31日に視察結果を説明する記者会見を予定している。日本政府が2021年4月に汚染水の海洋放出を公式決定してから2年あまり。国際的な安全性検証が最終段階へと向かっているわけだ。今年の夏ごろに現実化するとみられる福島第一原発の汚染水の海洋放出は、人類にどのような影響を及ぼすのだろうか。主な争点を7つに分けて検討する。

(1)汚染水はなぜ発生するのか
 最も根本的な問いだ。2011年3月の東日本大震災で巨大な津波が発生し、福島第一原発を襲った。そのため冷却装置が機能しなくなり、1~3号機の3つの原子炉の核燃料棒が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)が発生した。溶けた核燃料は周囲の構造物を溶かして塊(デブリ)となり、原子炉の底に残っている。人が近づけば1時間以内に死んでしまうほどの高線量の放射線が漏れ出ている。
 計880トンにのぼるデブリからは今も膨大な熱が発生しているため、冷却水で冷やさなければならない。その水が触れることで、人体に致命的な影響を与える各種の放射性物質を含んだ汚染水になる。
 問題は、周辺の地下水や雨水までもが原発に流入し、日々大量の汚染水が生み出されているということ。東電は地下水をくみ上げたり、1~4号機の周りに凍土壁(地面を凍らせて作った壁)を構築したりして、汚染水を減らすために死力を尽くしたが、成功していない。汚染水の増加量は今も1日当たり90~140トン。この汚染水を貯蔵するため、原発の敷地内には1073基の水タンクが設置されている。18日現在、貯蔵されている汚染水の量は133万トン。タンク容量の97%がすでに使用されている。

(2)なぜ海に放出?
 その理由は大きく分けて3つ。1つ目、汚染水を保管するタンクの不足。ただし変数がある。日本政府は2021年4月に海への放出を決めた際に、今年の夏ごろにタンクがいっぱいになるとの予想を示した。しかし降水量の減少と、汚染水低減政策などが一部効果を上げたことで、すべてのタンクが満杯になる時期は来年2~6月となっている。
 2つ目、廃炉(原発解体)に向けた作業スペースの確保。廃炉の最重要課題は1~3号機の底に溶け落ちているデブリの処理だ。日本政府はデブリを取り出し、汚染水タンクのある場所に保管施設を作る計画だ。人の命を奪うほどの高線量の放射線が漏れ出ているため、人の代わりにロボットが入っていって作業しなければならない。しかし、ロボットの開発は遅れている。昨年はまず2号機でデブリ除去作業を開始する計画だったものの、日程の遅れで作業開始は早くても今年下半期になる見通しだ。1、3号機は処理の時期や方法すら決まっていない。今のように急ぐ理由は存在しない。
 3つ目、コスト。日本政府は2016年に、海洋放出▽大気放出▽地下埋設などの複数の汚染水処理方法を検討した。海に放出すれば34億円(約321億ウォン)程度で済むが、大気放出には349億円(約3300億ウォン)、埋設には2431億円(約2兆3000億ウォン)かかる。福島の漁業関係者が強く反対したため、大気放出案も最後まで検討された。毎日新聞は「政府内では放射性物質を含む気体が東京まで達したらどうするのかという不安が高まったため、海洋放出でまとまった」と報じている。海への放出が「唯一の代案」ではないことは日本政府が最もよく知っている。

(3)IAEAによる検証は信頼できるのか
 汚染水の安全性についての検証を独占するのはIAEAだ。客観的な検証能力に疑問を呈する声は絶えない。1957年に設立されたIAEAは、原発の平和的利用を強調する。そして基本的に「原発拡大」を重視する。原発の危険性を全世界に知らしめた福島第一原発事故の円満な決着は、日本とIAEAの共通の目標だ。
 原発大国である日本はIAEAへの影響力も強い。IAEAの正規予算の分担率(2021年)を見ると、日本は8.32%で、米国(25.25%)、中国(11.15%)に次いで第3位。4つの連絡・地域事務所のひとつは東京にある。現職のラファエル・グロッシ事務局長の前にIAEAを率いたのは、日本人の天野之弥(1947~2019)だった。彼は2009年から2019年に亡くなるまで事務局長を務めた。
 汚染水の海洋放出はIAEAと協議して決定されたものだ。日本政府が放出を決めると韓国、中国、台湾、ロシアは強く反発したが、グロッシ事務局長は真っ先に「歓迎する」との立場を示した。海洋放出決定にかかわった主体が検証を担っている格好だ。彼らは試料採取などを独占し、他国による独自の追加検証を徹底して防いでいる。このような閉鎖性も不信を募らせる大きな原因となっている。

【写真】福島第一原発の汚染水の海洋放出に反対する農漁民団体の決起集会が2月、済州道庁前で行われた。集会を終えた参加者たちが日本総領事館までデモ行進している=イ・ジョンヨン先任記者//ハンギョレ新聞社

(4)二度のうそ、信頼が地に落ちた東電
 経済産業省と東京電力は、汚染水は安全であると主張してきた。しかし日本国内でも信じられないという声は大きい。二度のうそで信頼が地に落ちたからだ。2018年8月、原発敷地内のタンクに保管中の汚染水の約70%にセシウム、ストロンチウム、ヨウ素などの人体に致命的な影響を及ぼす放射性物質が法的基準値以上含まれていることが、日本のメディアによって暴露された。一部のタンクからは基準値の2万倍を超えるストロンチウム90などが検出された。トリチウム(三重水素)を除くすべての放射性核種をろ過できる「万能の装置」と宣伝されている多核種除去設備(ALPS・アルプス)の不良などが原因だった。東電はそれまで、ALPSで浄化した「処理水」は放射性物質が除去され、トリチウムだけが残ると宣伝していたが、真っ赤なうそだったのだ。今は、ALPSで2回すれば放射性物質が基準値未満に低下すると主張している。この言葉をそのまま信じるには、すでに不信が高まり過ぎている。
 日本政府は漁業者との約束も破った。東京電力は2015年8月に社長名義で、汚染水処理について福島県漁業協同組合連合会と「関係者(漁業者)の理解なしには、いかなる処分も行わない」と文書で合意した。日本政府と漁業者を一つにまとめる「信頼の象徴」のようなものだが、日本政府はこれを無視して海への放出を決定してしまった。

(5)ALPSの性能は信頼できるのか
 100%信頼することは難しい。ALPSで浄化した汚染水の70%には、依然として人体に致命的な影響を及ぼす放射性物質が基準値以上含まれていることが確認されているからだ。
 さらに一歩進んで、汚染水の安全性をこの1年間、独自に検証してきた太平洋の18の島国からなる「太平洋諸島フォーラム(PIF)」の専門家パネルは、ALPSの性能をきちんと検証するには資料が非常に不十分だと主張する。米国ミドルベリー国際大学院のフェレンツ・ダルノキベレス教授(核物理学)は1月、韓国国会の討論会で「日本がフォーラムに提供したデータは不完全で一貫性もなく偏向しているため、何らかの決定を下すには不適切だ」と批判した。また同氏は、東京電力は汚染水に含まれる64の放射性物質のうち、セシウム137など9つだけに焦点を当てており、残りはほとんど測定していないと付け加えた。
 このような事情は5月21~26日に訪日した韓国視察団も同じだ。ユ・グクヒ視察団長(原子力安全委員長)は24日、記者団に対し、「ALPSの処理前後の64の核種の濃度に関する原資料も受け取ったため、これから分析する」と述べた。言い換えれば、ALPSの性能を点検するのに最も必要な資料を放出が行われる直前に確保したということだ。このような状況では、韓国政府がきちんとした独自の評価の結果を国民に示せるはずはない。

(6)トリチウムは安全か
 ALPSが完全に作動したとしても、トリチウムはろ過できない。トリチウムの安全性については、意見が大きく分かれる。日本政府は、他国の原発もトリチウムを含む水を海に放出しているが、健康被害は報告されていないと主張する。しかしトリチウムは水産物から人体に取り込まれ、有機結合型トリチウムに変化すれば、内部被ばくの危険性を高めることが知られている。
 生物学者たちは、トリチウムが引き起こす生物学的な遺伝子損傷の程度は、代表的な放射性物質であるセシウムの2倍以上だと憂慮する。日本は、放出が始まれば年間22兆ベクレル(Bq=放射性物質の1秒当たりの崩壊回数の単位)のトリチウムを海に排出する予定だ。これは2011年の福島第一原発事故前の年間2.2兆ベクレルの10倍だ。

【写真】専門家からなる韓国視察団が今月23~24日、福島第一原発を訪問し、汚染水の海洋放出の安全性点検を実施した=東京電力提供//ハンギョレ新聞社

(7)汚染水は危険だとの主張は「怪談」なのか
 韓国の与党と原子力の専門家たちは、汚染水は危険だという主張に「怪談」というレッテルを貼って攻撃する。このような論理だと、放射性物質の「潜在的リスク」を認めた世界貿易機関(WTO)の判断も怪談だということになる。
 韓国は2019年4月、福島産の水産物の輸入禁止について日本が起こしたWTO紛争解決訴訟で、一審での敗訴を覆し「逆転勝訴」をおさめた。日本政府は世界最高の科学者たちを動員して「科学的数値」を示した。福島産の水産物をサンプル調査するとセシウムなどは基準値以下で、他国と似たような水準だと主張した。独自調査だけでなく、放射能に関連する国際機関の客観的資料を証拠として提示し、圧迫した。
 韓国政府はこれに抗して、福島第一原発事故が発生した日本の特別な環境は、このような事故が発生していない他の国にはない「潜在的リスク」だと主張した。WTOは韓国に軍配を上げた。彼らは「食品の放射能検査の数値ばかりを問題にするのは誤りだ。汚染に影響を与えうる日本の特別な環境的状況なども考慮すべきだ」と判定した。SPS(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)紛争で訴えられた国が勝ったのは、これが初めてだった。放射性物質についての初の判断でもあった。
 WTOは、過去の様々な紛争解決手続きでは環境や健康よりも貿易関係を重視してきた。そのようなWTOでさえ福島第一原発事故による放射性物質の潜在的リスクを認めたのだ。原発爆発事故で発生した130万トン以上の放射性物質汚染水を30~40年かけて海に放出しようとしている国は、日本が世界で唯一だ。それによって発生しうる様々な危険性を日本政府に対して指摘し、十分な情報公開を求め、それが聞き入れられなければ反対意見を述べることは、国民の健康と安全に責任を負うべき国の当然の責務だ。
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-05-31 05:00


「中央日報日本語版」 2023.05.29 07:32
■韓国野党「福島汚染水は放射能テロ」…頭をもたげる不安マーケティング

【写真】2008年6月10日、ソウル・世宗路プレスセンター前で開かれた米国産牛肉輸入反対集会の様子。[中央フォト]

 「福島汚染水投棄は放射能テロだ!」
 28日、ソウル永登浦区(ヨンドンポク)の国会前に、韓国野党「共に民主党」が掲げた横断幕だ。反対側には汚染水反対署名運動の横断幕もあった。「福島放射能水産物輸入5000万人に反対する!」というプラカードもソウル各地で目にすることができる。
 民主党が日本の福島原発汚染水に党力を総動員している。28日現在、民主党主導の署名運動には10万人以上が参加した。来月3日には釜山(プサン)で場外集会を開く。国会レベルの福島汚染水放流反対決議案の採択も行う。汚染水視察団を対象に懸案質疑も推進中だ。
 言葉はもっと荒々しい。民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は26日、ソウル光化門(クァンファムン)広場で開かれた署名運動出陣式で「福島原発の核物質汚染水は危険だから、安全ではないから、人体に有害だから、混ぜて海に捨てようということだ」と主張した。李代表は15日の党最高委員会でも「一緒に使っている井戸に毒劇物を入れておいて『安全だ』と主張する」とした。浄化処理された汚染水を毒劇物に遠回しに例えたのだ。民主党党員の中には「汚染水が安全なら飲んでみろ」というような発言も少なくない。鄭清来(チョン・チョンレ)最高委員は25日、フェイスブックに「大統領府から『福島印の汚染ミネラルウォーター』を注文して飲め」と書き込んだ。
 しかし、民主党の一方的な福島汚染水反対の動きが「第2のBSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)事態を狙った扇動」という指摘も少なくない。国民の命に直結する重大な問題に精密にアプローチするのではなく、非科学的で刺激的なスローガンに頼っているからだ。2008年、李明博(イ・ミョンバク)政権が韓米自由貿易協定(FTA)交渉過程で米国産牛肉輸入の議論が浮上すると、進歩派陣営は「牛を利用して作る化粧品・生理用ナプキンなどを使っても狂牛病に感染する」「韓国人の95%が狂牛病に脆弱な遺伝子を持っている」など、怪談レベルの論理を連発した。MBC(文化放送)の調査報道番組『PD手帳』が主導した。光化門広場では「脳みそに穴が開く」と言ってろうそくデモが毎日行われた。しかし、BSEの懸念は非科学的な陰謀論にすぎず、15年経った現在、BSE事態は悪質な扇動だったという評価が支配的だ。「ザ・モア」のユン・テゴン政治分析室長は「科学的に懸念を表明することと、反日扇動・恐怖煽動は違う」と話した。
 民主党内部でも批判が上がっている。民主研究院副院長出身で新成長経済研究所のチェ・ビョンチョン所長(50)は22日、フェイスブックに「韓国、日本の水産物は安心して食べてもいい」という済州(チェジュ)大学のチョン・ソクグン教授の寄稿文を共有した。そのうえで、「(民主党の主張は)私のような人間にもあまり説得力がない」とし「民主党が汚染水の深刻さだけを強調すれば、水産業従事者の生計を脅かし、むしろ逆風が吹くだろう」と書いた。586運動圏出身のさしみ店社長であるハム・ウンギョン氏も15日、フェイスブックに「科学的に問題になることがない福島汚染水放流問題をめぐり、フェイクニュースを生産して扇動する詐欺師や巫俗行動を直ちに中断せよ」と主張した。
 福島汚染水を政治争点化するために民主党が死物狂いで行動しているのは最近の党状況とも無関係ではないという分析だ。「現金封筒バラマキ」疑惑や「金南局(キム・ナムグク)コイン」問題などの局面から脱却しようとする狙いというものだ。先に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の強制徴用第3者弁済案に反発して掲げた反日攻勢を続けようとする側面もある。時代精神研究所のオム・ギョンヨン所長は「民主党が政府・与党の上昇に不安を感じ、福島汚染水を一番の弱点と判断した」とし「短期的には支持層に訴求力があるが、中長期的には反日感情だけに頼るのは20~30代の離反につながる可能性がある」と述べた。
 国際原子力機関(IAEA)が来月福島原子力発電所汚染水に対する海洋排出計画をモニタリングした報告書を発行する計画だが、韓国政府は独自に検証に取り組むべきだというのが民主党の主張だ。党対策委員長である魏聖坤(ウィ・ソンゴン)議員は28日、電話取材に対して「IAEAは2015年から日本政府の汚染水排出の立場に同意した」とし「そのため、現在のモニタリング過程も客観的だと評価するのは難しい」と述べた。韓国独自の検証が事実上不可能であるにもかかわらず「汚染水は危険なので、無条件に信用できない」という立場を貫くという意味だ。建国大学国家情報学科のチャン・ソンホ教授は、「葛藤を調整すべき政治圏がむしろ関与して問題をより複雑化させる場合が多い」とし「福島の汚染水処理はイデオロギーや政治ではなく、科学の領域だ」と述べた。
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「日本から回収した高麗の仏教経典『妙法蓮華経』」

2023年06月18日 | 韓国で
「中央日報日本語版」2023.06.16 11:31
■【写真】日本から回収した高麗の仏教経典『妙法蓮華経』

【写真】日本から回収した高麗仏経『妙法蓮華経』[写真 文化財庁]

 韓国文化財庁が15日、国立故宮博物館で3月に国外所在文化財財団を通じて日本から回収した高麗時代の写経『妙法蓮華経巻第六』を公開した。写経は仏教経典を書き写した経典で、14世紀に製作されたと推定される妙法蓮華経は紺色の紙に金色・銀色の顔料を使って筆写したものだ。

「中央日報日本語版」 2023.06.15 11:29
■韓国文化財庁、仏の教え書き写した700年前の金・銀色経典を日本から回収

【写真】「妙法蓮華経巻第六」 写真=文化財庁

 高麗時代に仏の教えを書き写したものと推定される仏教経典が日本から戻った。
 韓国の文化財庁と国外所在文化財財団は15日、今年3月に日本から高麗時代の写経「妙法蓮華経巻第六」を回収して国内に入ったと明らかにした。
 写経とは仏教経典を書き写す作業、またはその経典をいう。 高麗時代には国家の発展と個人の安寧を祈る写経が盛んに行われ、仏教経典の書き写しを担当した国家機関の写経院が運営されたりもした。
 この写経は、仏になる道は誰にでも開かれているという思想を基本とした経典「妙法蓮華経」の内容を金・銀色の顔料を使って筆写した経典。 中国僧侶の鳩摩羅什(344-413)が翻訳した経典7巻のうち第6巻を写したものだ。 紺色の紙を使ったこの経典は屏風のようにたたんで広げることができる形態で、14世紀末の高麗の写経の特徴がよく表れているという評価を受ける。
 この写経は昨年6月に日本人所蔵者が財団に遺物を売り渡す意向を伝えてきたことで初めて存在が確認された。 所蔵者は個人的に写経を購入して保管してきたという。
 文化財庁と財団は追加で調査と交渉を進めた後、宝くじ基金を活用して遺物を回収した。 文化財庁は「700年近い歳月が経過したが、保存状態が良好であり、今後、さまざまな研究や展示に活用されると期待される」と伝えた。
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ポストモダニズム歴史学は「慰安婦」の真実を明らかにできるのか

2023年06月17日 | 日本軍隊性奴隷
「The Hankyoreh」 2023-06-17 10:46
■[レビュー]ポストモダニズム歴史学は「慰安婦」の真実を明らかにできるのか
 歴史リテラシー授業 
 誰もが歴史を語る時代に過去と向き合う方法
 
【写真】チェ・ホグン著、青い歴史刊『歴史リテラシー授業』

 西洋史学者のチェ・ホグン高麗大学教授が書いた『歴史リテラシー授業』は、歴史を理解する方法を指南する本だ。著者は「何のために歴史を勉強しなければならないのかと尋ねる人に親切に説明してあげる本が必要だ」とかなり前から考えており、同書を書くことになったと語る。全8章にわたって29のテーマについて実際に講義するような形で易しく書かれている。
 歴史学者として著者の苦悩が最も深くにじみ出るところは「客観的な歴史叙述の夢」を扱った第7章だ。「歴史を客観的に叙述するのは可能なのか」という問いは、最近の歴史学界の最も大きな問いであるからだ。著者がここで注目する歴史家たちは「歴史学とは無秩序な事実の山に意味を与えるだけ」だと主張した20世紀の歴史家たち、中でも過去数十年間にわたり歴史学の雰囲気を変えたポストモダニズムの歴史家たちだ。彼らは「歴史とは何か」ではなく、「誰のための歴史なのか」を問う。同じ事案をめぐっても、人によって国籍、宗教、人種、ジェンダーの違いによって違う見方をするというのがポストモダニズムの歴史観だ。したがって、誰もが同意できる歴史というものはなく、特定の党派性に基づいた歴史解釈があるだけだ。ポストモダニズム歴史学は、従来の歴史学界が十分に意識できなかった「歴史学の前提」を疑って覆すという点で大きな意味がある。例えば、過去の西欧主流の歴史学界は自分たちの立論を支えていた西欧中心主義や男性中心主義を自覚できなかった。
 しかし著者によると、ポストモダニズムは、このような前提を疑って解体する水準に留まらず、事実自体、真理そのものを否定して拒否することで、認識論的相対主義をもたらすことに至る。ここで著者は尋ねる。「客観性に対する懐疑と不信を一方的に強調する(極端な)相対主義以後、我々に残るものは何だろうか」と。ポストモダニズムの認識の態度には、人間の生き方の多様性と多性性に対する鋭い感覚を育てるポジティブな面があるのは事実だ。だが、ポストモダニズムの相対主義を最後まで突き進めた場合、どのような予期せぬ結果がもたらされるかも一緒に考えなければならない。
 歴史研究の基礎資料である「史料」の場合を見てみよう。権力者のための記録は溢れているのに対し、弱者の記録はほとんど見当たらない。「史料の絶対的非対称性が問題になる時、ポストモダニズムの立場で歴史批評家にできることは何だろうか」。ポストモダニズムは史料を解体的読法で読み替えることを代案として示す。しかし、「行間の意味を読み取り、テキストを読み直し、読み替えていくだけで、すでに屈折した過去を正すことができるだろうか?」 著者によると、ポストモダニズムの解体主義的な歴史読法は、従来の解釈に異議を唱えるのには刺激を与えられるが、歴史的真実そのものを争う時は無力になるという本質的な弱点がある。
 著者は、日本軍「慰安婦」問題をその例に挙げる。「この反人道的な国家犯罪を如実に表わせる日本側の公文書はほとんど見当たらない。被害者側の私的文書もほとんどない。残っているのは何人かの生存者の証言だけだ」。このような状況で、「過去に関する記録には証拠的価値がない」というポストモダニズムの過激な主張がどのように役立つだろうか。ポストモダニズムの歴史観から出てくる結論は「これも信じられないが、あれも信じられないというような両非論(どっちも間違っている)」にならざるを得ず、このような両非論は「日本軍性奴隷問題そのものに対する冷笑」につながる。著者は、ポストモダニズムの歴史観が真実そのもの、歴史そのものを否定することに帰結する危険性があることを指摘し、ポストモダニズムに向かって「いったい誰のための解体なのか」と問わなければならないと語る。「極端な相対主義の代償は、私たちが予想するよりもはるかに大きい。そしてその被害は弱者に集中しがちだ」。だとすれば、ポストモダニズムの相対主義が持つ致命的な弱点を越え、歴史学を再構築しなければならない任務が歴史学者たちにある。

コ・ミョンソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-16 10:31
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北朝鮮住民とみられる遺体を火葬へ 韓国の引き渡し提案に回答なし

2023年06月16日 | 北部朝鮮
「聯合ニュース」 2023.06.16 14:15
■北朝鮮住民とみられる遺体を火葬へ 韓国の引き渡し提案に回答なし
【ソウル聯合ニュース】韓国統一部のイ・ヒョジョン副報道官は16日の定例会見で、韓国側で見つかった北朝鮮住民とみられる1人の遺体について「北が遺体引き取りの意思を示していない」とし、引き取り手がいない死者として扱う予定だと説明した。
 遺体は5月19日に北西部の仁川・江華島近くの海で見つかった。遺留品などから北朝鮮住民とみられる。
 同部は今月9日、北朝鮮に対し遺体を引き渡す意向を示し、南北間の通信線で迅速に立場を知らせてほしいと呼び掛けたが、北朝鮮側は反応を示さなかった。
 政府は昨年11月にも北朝鮮住民とみられる別の遺体を引き渡そうとしたが、北朝鮮側からの回答はなく、遺体を火葬した。
 2010年以降、北朝鮮住民とみられる23人の遺体が韓国から北朝鮮側に引き渡されている。最後の引き渡しは19年11月だった。


「聯合ニュース」 2023.06.09 13:43
■北朝鮮住民とみられる遺体引き渡しへ 通信線での返答求める=韓国当局
【ソウル聯合ニュース】韓国統一部のイ・ヒョジョン副報道官は9日の定例会見で、韓国側で見つかった北朝鮮住民とみられる1人の遺体を引き渡す意向を示し、北朝鮮側に「南北間の通信線で迅速に立場を知らせてほしい」と呼び掛けた。
 イ氏によると、遺体は5月19日に北西部の仁川・江華島近くの海で見つかり、病院に安置されている。身長167センチ、20~30代と推定される男性で、遺留品などから北朝鮮住民とみられる。
 政府は、6月16日午後3時に南北軍事境界線上にある板門店で北朝鮮側に遺体を引き渡したいと呼び掛けた。
 遺体は軍が見つけたとされる。遺留品の中に違法薬物らしき物があったことから、当局はこの人物が違法薬物を所持して朝鮮半島西側の黄海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)を韓国側へ越境しようとし、溺死した可能性があるとみているようだ。
 北朝鮮住民の遺体を引き渡す場合、通常は統一部が南北共同連絡事務所を通じて北朝鮮に通知文を送る。だが北朝鮮は4月7日から南北共同連絡事務所と軍通信線を通じた韓国との定時連絡に応じていない。通知文を送ることができないため、統一部はこのように定例会見で北朝鮮に呼び掛けた。通信線を使った返答を促したのは、北朝鮮が一方的に遮断した南北連絡チャンネルの再開のきっかけづくりを期待するものといえる。
 北朝鮮が応じるかは未知数だ。
 韓国政府は昨年11月にも北朝鮮住民とみられる別の遺体を引き渡そうとしたが、北朝鮮側からの回答はなく、遺体を火葬した。
 北朝鮮はそれまで、遺体の服に故金日成(キム・イルソン)主席と故金正日(キム・ジョンイル)総書記の肖像画をあしらったバッジがついていたり北朝鮮の身分証が見つかったりすれば、北朝鮮住民と見なして遺体を引き取っていた。昨年の遺体にはこうしたものがあったにもかかわらず引き取りに応じなかった。これについて韓国では、北朝鮮が新型コロナウイルス対策として国境を封鎖していたためとの見方も出ていた。
 2010年以降、北朝鮮住民とみられる23人の遺体が韓国から北朝鮮側に引き渡されている。最後の引き渡しは19年11月だった。


「聯合ニュース」 2022.11.25 13:38
■北朝鮮 韓国の遺体引き渡し提案に回答せず=火葬へ
【ソウル聯合ニュース】韓国統一部のイ・ヒョジョン副報道官は25日の定例会見で、北朝鮮住民とみられる女性の遺体の引き渡しを北朝鮮側に提案したが回答がなく、関連規定に基づいて遺体を火葬すると明らかにした。
 韓国政府は11日に北朝鮮住民とみられる遺体の引き渡しの意向を記した通知文を送ろうとしたが、北朝鮮は受け取る意思を示さなかった。韓国は引き渡しの期日を17日として北朝鮮からの回答を待った。だが北朝鮮は通知文を受け取らず、韓国は24日までに北朝鮮が回答しない場合は遺体を縁者のいない死者として扱う方針を示していた。
 遺体は7月23日、南北軍事境界線から近い韓国北部の京畿道漣川郡にある郡南ダム付近で見つかった。服に故金日成(キム・イルソン)主席と故金正日(キム・ジョンイル)総書記の肖像画をあしらったバッジがついていた。捜査当局は今月10日、遺体は北朝鮮住民とみられるとの調査結果を示した。
 統一部によると、北朝鮮は韓国政府が遺体の引き渡しの意思を示すと長くても6日以内に回答していたが、今回は回答をしなかった。北朝鮮が遺体の引き渡しに応じないのは異例。
 同部によると、2010年以降、北朝鮮住民とみられる23人の遺体が韓国から北朝鮮側に引き渡された。17年に2人、19年に1人の遺体に関し北朝鮮が意思表示をせず、引き渡されなかった。当時、北朝鮮は具体的な理由を示さなかったが、北朝鮮の住民という明確な証拠がなかったためとの見方が出ていた。最後に引き渡しが行われたのは19年11月だった。
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水曜デモ、1600回目の叫び…「私たちは一緒に平和へと向かう」=韓国

2023年06月15日 | 朝鮮史
「The Hankyoreh」 2023-06-15 07:32
■[フォト]水曜デモ、1600回目の叫び…「私たちは一緒に平和へと向かう」=韓国

【写真】14日昼、ソウル鍾路区の日本大使館前の平和路で行われた第1600回日本軍性奴隷制問題解決のための定期水曜デモで、参加者が日本政府の公式謝罪を求めるスローガンを叫んでいる=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 「1600回目の日本軍性奴隷制問題解決のための定期水曜デモ」が「私たちは共に平和へと向かう」をテーマに行われた。
 14日正午、ソウル鍾路区(チョンノグ)の日本大使館前の平和路は、日本政府の公式謝罪、日本軍性奴隷制の被害者に対するヘイトをやめることなどを求める文言の記されたプラカードを手にした市民で埋め尽くされた。水曜デモの最前列には、大谷小学校の5年生の生徒たちが前日の授業時間に自分たちで作ったプラカードを手にして座っていた。生徒たちは先週、歴史小説『砂時計になった慰安婦のおばあさん』を一緒に読んで人権について学習し、人権を守った人物として慰安婦被害女性を挙げ、水曜デモに参加したという。
 発言に立った人権活動家のイ・ヨンスさんは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対し「慰安婦問題を解決するという国民との約束を守ってほしい」と訴えた。
 今回の水曜デモに合わせ、平和路周辺では母親部隊などの保守団体の20人あまりのメンバーが「慰安婦」被害者を非難する内容の横断幕を張り、イ・ヨンスさんの仮面をかぶって嘲笑するなどのヘイト発言でデモを妨害した。警察は両団体の間で立っているだけで、集会デモ届けを出していない極右団体を制止しなかった。
 1992年1月8日から30年間にわたる平和デモは、ヘイトに屈せずに続いてきた。「日本軍性奴隷制問題解決のための定期水曜デモ」は1992年1月8日の宮沢元首相の訪韓を機に開始され、日本軍性奴隷制問題の真相究明や責任履行などの問題解決、そして被害者の名誉と人権の回復を求めてきた。2002年3月13日の500回目の水曜デモで「単一テーマで行われた最も長期にわたる集会」としてギネスブックに登録され、その後も毎回記録を更新している。

【写真】イ・ヨンスさんが第1600回日本軍性奴隷制問題解決のための定期水曜デモで発言している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】大谷小学校の5年生の生徒たちが第1600次日本軍性奴隷制問題解決のための定期水曜デモで「岩のように」に合わせて踊っている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】イ・ヨンスさんが第1600回日本軍性奴隷制問題解決のための定期水曜デモで、参加者たちと共にスローガンを叫んでいる=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

ペク・ソア記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-14 15:43
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韓国の真実和解委員長、民間人虐殺の補償を「不正義」…真実でも和解でもない

2023年06月14日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-06-10 10:00
■[社説]韓国の真実和解委員長、民間人虐殺の補償を「不正義」…真実でも和解でもない

【写真】真実和解委のキム・グァンドン委員長が9日、ソウルの永楽教会で「朝鮮戦争での韓国キリスト教の受難と和解」と題して講演している=ユン・ヨンジョン記者//ハンギョレ新聞社

 真実・和解のための過去事整理委員会(真実和解委)のキム・グァンドン委員長が、朝鮮戦争前後の民間人集団虐殺の被害者に対する補償のことを「深刻な不正義」だと述べた。「5・18(光州民主化運動)は北朝鮮介入の可能性」発言に続き、真実和解委の委員長の資格を疑わせる妄言だ。キム委員長は遺族に謝罪し、直ちに職を辞すべきだ。
 キム委員長は9日、韓国福音主義協議会が主催した月例朝食祈祷(きとう)会で「侵略者に抗して戦争状態を平和状態にするために軍人と警察がもたらした被害に対して(犠牲者)1人当たり1億3200万ウォン(約1430万円)の補償を行っている。このような不正義は大韓民国で初めて見た」と述べた。同氏は「侵略者によってもたらされた犠牲は隠し、侵略を防ぐ過程で発生した民間人の犠牲は『国家犯罪、国家暴力』という名で教育し、補償している」と暴言を吐いた。歴史的事実を悪意をもって歪曲したのだ。真実和解委で認められた朝鮮戦争期の民間人虐殺は、軍人の正当な戦闘行為とは全く関係がない。当時犠牲になった民間人は「侵略者」ではなかった。激しい左右対立の中で不当に犠牲となった民間人たちだ。遺族たちは親兄弟が虐殺されたにもかかわらず「アカ」の烙印を押され、公権力による弾圧や不利益を受けた。真実和解委は徹底した調査によって真実究明の決定を下した。彼らに対する補償は司法で勝訴したケースのみでなされた。一体何を根拠に「不正義」だと言って冒とくするのか。
 キム委員長はまた、「敵対勢力による犠牲者の遺族も軍や警察に殺されたと通報する。人民軍やパルチザンによって殺されたと言えば補償が受けられないから」だと述べ、遺族を侮辱した。北朝鮮軍による民間人虐殺がきちんと補償されないのは、北朝鮮軍の蛮行まで国が責任を取るべきなのかについての司法判断に由来する問題だ。これは新たな法を作って解決すべき問題に過ぎず、補償差別とは全く関係がない。にもかかわらず、それを巧妙にねじ曲げて理念紛争として利用している。キム委員長は今年3月にも、国会に出席した際に「北朝鮮が(5・18光州民主化運動に)介入した可能性までは排除できない」との妄言で国民の怒りを買っている。キム委員長は任命当初からこのような非常識な偏向性のせいで、適切でない人事だとの指摘があふれた。にもかかわらず尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はこれを無視して任命を強行した。その結果がこれだ。歴史の真相究明を通じて被害者の傷を癒やすべき真実和解委員長が、むしろ傷を再びほじくり返している。これが真実和解なのか。いつまでキム・グァンドンを我慢せねばならないのか。

韓国語原文入力:2023-06-09 18:36
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韓国政府の不参加で中途半端な6月民主抗争記念式…「民主化の歴史をおとしめる

2023年06月13日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-06-12 08:22
■韓国政府の不参加で中途半端な6月民主抗争記念式…「民主化の歴史をおとしめる」
 記念事業会が後援した団体が「政権退陣」広告出したことを理由に、政府不参加 
 後援撤回でも方針変えず…国の記念日制定後で初

【写真】10日午前、ソウル中区の明洞聖堂で開催された第36周年6・10民主抗争記念式で、参加者たちが「広野で」を歌っている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 6月民主抗争が2007年に国の記念日(6月10日)に指定されて以来初めて、「6・10民主抗争記念式」が政府の参加なしに行われた。記念式を主催してきた行政安全部は、主管機関である民主化運動記念事業会が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領退陣のスローガンを掲げた行事を後援したことを問題視し、事業会が後援を撤回したにもかかわらず記念式への不参加を撤回しなかったことから、尹錫悦政権は「自由民主主義」に対する後進的な認識をあらわにしているとの激しい批判が起きている。6月民主抗争は軍部独裁に抗して1987年6月に全国で起きた民主化運動で、大統領直選制改憲を引き出した大韓民国民主主義の歴史における象徴的な事件だ。
 今年で36周年を迎えた「6・10民主抗争記念式」は10日、当時独裁打倒座り込み闘争が起きた象徴的な場所であるソウルの明洞聖堂で開催された。この行事は2007年以降、行政安全部が主催し、行安部傘下の公共機関である民主化運動記念事業会が主管してきた。当初は、今年もハン・チャンソプ行安部長官職務代行が出席し、記念演説を行う予定だった。しかし行安部は行事前日の9日に突如として「民主化運動記念事業会が後援した進歩団体の行事の広告に『尹錫悦政権退陣』との文言があった」として不参加を通知してきた。広告の文言が分かった後の8日、民主化運動記念事業会は説明資料で「当該団体が協議なしに大統領退陣要求などの政治的内容を入れた。(当該団体の2023年民主化運動精神継承協力事業)公募選定取り消しを通知し、支援金も執行しない」として収拾に乗り出したが、行安部が立場を曲げなかったことで記念式は「主催者のいない中途半端なもの」となった。
 政府の記念式不参加は、保守政権である李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両政権でもなかった。そのうえ、発足以降数回にわたって「自由民主主義」の価値を強調してきた尹錫悦政権が、実務団体の公募事業が気に入らないとの理由で民主化運動の最も象徴的な記念式に参加しなかったことで、これまでの発言の真意さえ疑われると評する声まであがっている。自由言論実践財団のイ・ブヨン名誉理事長は「韓国社会の民主化運動の成就を完全に無視したことは、尹大統領が普段から叫んでいる『自由』という価値がどれほど選択的かをよく示している」と批判した。また「尹大統領は保守政権の大統領としては初めて5・18光州民主化運動記念式に2年連続で参加したが、その真意すら疑われる」とし「光州(クァンジュ)精神を改めて胸に刻もうとしたのではなく、単に票を意識した政策の一環だったようだ」と語った。韓国外国語大学のパン・ビョンニュル名誉教授(史学科)も、「政権批判を口実として法律で定められた記念日の行事に出席しないというのは、政府自らが民主政権ではないと認めたもの」だとし、「国民の大半が共有する民主的価値を無視した行動」だと指摘した。
 民主化運動記念事業会側の他の団体からの批判も激しい。5・18民主化運動ソウル記念事業会のチャン・シンファン会長は「国の記念日に政府がこのように幼稚で偏狭な態度を示したことに少なからず当惑した」とし、「民主化運動記念事業会に対する追加的な特別監査も予告しているが、腹いせにしか見えない」と述べた。イ・ハンニョル記念事業会のハン・ドンゴン理事長は「政府支援金を受け取って政権退陣の声をあげたのは適切なスローガンではなかったかもしれないが、なぜそのような声があがっているのかを振り返ってみるのが民主主義国家のなすべきこと」だと述べた。パク・ジョンチョル記念事業会のパク・レグン理事も「国の記念日への出席は政府の任務だ。不参加の理由も納得できないが、後援が問題だったとしても、それは記念式不参加とは別であるべきだ」と指摘した。
 建国大学法学専門大学院のハン・サンヒ教授は「6月民主抗争は、現行憲法体制で言うところの民主秩序の基本的な価値をなす歴史的な事件」だとし「現行憲法体制を基盤として発足した現政権ならば、当然6月民主抗争の憲法的な意味を尊重し、改めて胸に刻むべき。記念式への不参加は公式に6月民主抗争の憲法的意味をおとしめるもの」だと批判した。
 全国民族民主遺族協議会のチャン・ドゥヨン事務局長は「政権退陣スローガンを小さく広告に掲げたと言って激怒し、特別監査を予告して記念式に参加しなかったのは『政府を批判すればただではおかない』と言っているのと変わらない」とし「そのような時間があるなら、政府は国民生活のための政治をしてほしい」と語った。
クァク・チンサン、パク・チヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-11 19:13


「The Hankyoreh」 2022-01-10 07:29
■「6月抗争の炎」李韓烈さんの母ペ・ウンシムさん死去…息子の遺志継ぎ民主化の闘士に
「民主主義はただやって来たのではなく、血と涙と汗にまみれてやって来た」

【写真】故李韓烈烈士の34回追悼行事がソウル西大門区の延世大学の「韓烈の園」で行われた昨年6月9日午後、ペ・ウンシムさんが発言している=資料写真//ハンギョレ新聞社

 1987年の6月民主抗争の導火線となった故李韓烈(イ・ハニョル)烈士の母、ペ・ウンシムさんが9日に死去した。享年82。
 ペさんは3日に心筋梗塞で倒れ、病院で治療を受けていたが、8日退院していた。退院後は無理なく会話を交わすなど健康を回復したかに見えたが、翌日に再び倒れた。家族がペさんを発見し、すぐに病院に運んだものの、再び起き上がることはなかった。息子の意志を継いで民主化と人権のために闘ってきたペさんは、息子の死から35年を経て息子のもとへと旅立った。他の地域に住む家族が全員病院に到着し次第、解剖するかどうかや葬儀の手続きなどを決める予定だという。
 1987年6月9日の李韓烈さんの死は6月民主抗争の炎となり、全国へと広がっていった。息子の死はペさんの人生を完全に変えた。平凡な主婦だったペさんは、息子の果たせなかった夢のために民主化運動に身を投じた。ペさんは「ハニョルの名において」全国民族民主遺族協議会(遺家協)に参加し、全泰壱(チョン・テイル)烈士の母、故イ・ソソンさん(1929~2011)や朴鍾哲(パク・ジョンチョル)烈士の父、故パク・チョンギさん(1928~2018)らと共に、民主主義と人権のためのデモや集会が行われる現場なら全国どこにでも駆けつけて協力した。
 ペさんは遺家協の会長を務め、1998年から422日間にわたって国会前のテントで座り込みを行い、民主化運動補償法と疑問死真相究明に関する特別法の制定を引き出してもいる。2009年には、龍山(ヨンサン)惨事のことを聞いて被害者の家族と共に涙を流し、龍山汎対策委員会の共同代表を務めて協力した。ペさんは民主化と人権運動に献身した功労が認められ、2020年6月に6・10民主抗争33周年記念式で文在寅(ムン・ジェイン)大統領から故イ・ソソンさんらと共に国民勲章牡丹章を授与された。ペさんは受章の席で「33回目の6月10日に送る手紙」を朗読し、「二度と民主主義のために人生を犠牲にし、苦しむ家族が生じない国になってほしい」と切実な願いを語っている。
 ペさんは2018年6月、李韓烈さんが通っていた延世大学と李韓烈記念事業会が共同主管して延世大学で開かれた李韓烈烈士第31回追悼祭で、「民主主義はただやって来たのではなく、人々が血と涙と汗にまみれて、一歩ずつやって来た。(烈士たちの)死は無駄にならず、歴史に長く残ると信じている」と述べている。

ホ・ホジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2022-01-09 10:48
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「韓国の離散家族再会申請者 5年間で約1万6千人死亡」

2023年06月12日 | 韓国で
「聯合ニュース」 2023.06.11 11:12
■韓国の離散家族再会申請者 5年間で約1万6千人死亡
【ソウル聯合ニュース】朝鮮戦争などで生き別れになった南北離散家族の再会行事が2018年を最後に中断されてから5年近くの間に韓国側離散家族のうち約1万6000人が死亡したと推定されることが11日、分かった。

【写真】韓国で暮らす離散家族が北朝鮮にいる家族に宛てて準備したビデオレター。大韓赤十字社ソウル事務所に保管されている(資料写真)=(聯合ニュース)

 統一部の資料によると、韓国側の離散家族再会申請者(23年5月末現在)は計13万3680人で、このうち死亡者は69.2%の9万2534人に上る。今年1~5月だけで1483人が亡くなった。
 19年から先月までの死亡者は1万5313人で、ここ数年の年間死亡者数が3400~3700人であることを考慮すると、18年8月を最後に再会行事が中断されてから1万6000人余りが亡くなったと推定される。
 再会申請者の大部分が高齢で、存命者が急減している。存命中の申請者4万1146人のうち80歳以上が67.0%を占める。90歳以上は31.1%に上る。
 離散家族の再会行事は、2000年6月の南北首脳会談で採択された南北共同宣言に基づき同年8月に初開催され、18年8月までに計21回開かれた。しかし、19年2月の米朝首脳会談決裂後、朝鮮半島情勢が急激に冷え込んだ影響で5年近く開かれていない。


https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191231002000882?section=news
「聯合ニュース」 2019.12.31 14:34
■南北離散家族の交流を積極支援 機関設立も検討=韓国政府が基本計画
【ソウル聯合ニュース】朝鮮戦争などで生き別れになった南北離散家族の高齢化が進む中、韓国統一部は31日、第三国で行われる民間レベルの離散家族交流を積極的に支援する内容の「第3回南北離散家族交流促進基本計画(2020~2022)」を樹立、発表した。

【資料写真】離散家族の再会を望む人々のメッセージが貼り付けられた壁=(聯合ニュース)

 今回の基本計画には▼民間交流経費の増額▼既に離散家族再会行事に参加した人を対象とした財政支援拡大▼民間団体の能力強化――などの方策が盛り込まれた。
 統一部は現在、民間レベルでの離散家族交流経費の支援を1回に限っているが、指針改正によって支援額と回数を拡大する方針だ。政府は現在生死確認に300万ウォン(約28万円)、再会に600万ウォン、手紙の交換に80万ウォンを支援している。
 また、南北の当局が行う離散家族再会行事に参加したことがあっても手紙の交換経費などを受け取れるようになる。
 民間レベルの南北交流・協力、人的往来事業などによる故郷訪問や電話での通話、北朝鮮脱出住民(脱北者)を通じた故郷の様子の確認や交流などの新たな交流方式も推進される。
 統一部は「新しい方式の民間交流が活性化されれば、これを体系的に支援する制度を設け、機関の設立なども検討する方針だ」と明らかにした。
 特に、民間レベルの離散家族交流活性化のためには関連団体の能力強化、信頼度向上も必要とみて、政府と団体間の協力システムなどを構築し、モニタリングも体系化する方針だ。
 今回の基本計画には2018年9月の南北首脳会談で署名された平壌共同宣言の合意内容である離散家族再会のための面会所の復旧・開所、映像による再会やビデオレターの交換計画なども盛り込まれた。また、基本計画に含まれる離散家族の範囲を軍の捕虜や拉致被害者、抑留者や海外に住む離散家族などにも拡大した。
 統一部は「対面による再会、映像による再会、ビデオレターの交換は定例化・常時化を推進し、故郷訪問、全面的な生死確認、手紙・郵便物交換の実現を目指して北と協議する」と説明した。 
 今回の発表は09年に制定された「南北離散家族生死確認および交流促進法」に基づくものだ。同法は3年ごとに基本計画を発表するよう定めている。


https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191225000700882
「聯合ニュース」 2019.12.25 13:33
■韓国の離散家族再会申請者 今年3100人死亡=高齢化進む
【ソウル聯合ニュース】朝鮮戦争などで生き別れになった南北離散家族のうち、北朝鮮にいる肉親との再会を申請した韓国側離散家族が今年3100人以上亡くなったことが、25日までに分かった。

【資料写真】離散家族再会申請者の家族写真=(聯合ニュース)
【資料写真】離散家族の再会を望む人々のメッセージが貼り付けられた壁=(聯合ニュース)

 韓国統一部と大韓赤十字社が運営する離散家族情報統合システムに登録された韓国側の離散家族再会申請者のうち、今年1~11月の間に3147人が死亡した。
 2017年には3795人が、18年には4914人が肉親との再会を果たせないまま世を去った。
 11月30日現在で大韓赤十字社に登録された再会申請者は累計13万3365人で、このうち存命者は5万2997人(39.7%)。約6割が再会を心待ちにしながら亡くなったことになる。
 離散家族は高齢化が進み、年間死亡者数は年々増加する見通しだ。90歳以上の存命者は1万2115人(22.9%)、80~89歳は2万1442人(40.5%)で、全体の63.4%が80歳以上の高齢者だ。
 第三国を通じた民間レベルでの生死確認や手紙のやりとりも、かろうじて命脈のみ維持している。
 2000年代の初めから半ばごろには第三国を通じて行われる個別の生死確認は年間300~400件に上っていたが、11年以降は1桁台に減少し、今年は2件のみにとどまった。
 手紙のやりとりも多い時で年間800~900件に達したが、次第に減少して今年は16件のみだった。
 統一部の関係者は「(民間レベルでの離散家族の交流を)主導していた人々自身も離散家族だったが、高齢化で活動できない状況だ」とし、「民間活動を期待することは難しくなった」と述べた。
 当局主導の離散家族交流も当分の間、望めない状況だ。
 南北は昨年8月に北朝鮮南東部の金剛山で約3年ぶりに離散家族再会行事を開催したのに続き、同年9月に北朝鮮・平壌で行われた南北首脳会談で常設面会所の開所、映像を通じた再会実施、ビデオレター交換などに合意したが、今年2月にベトナム・ハノイで行われた米朝首脳会談決裂の余波で南北関係も冷え込み、実現に至っていない。
 韓国政府は今後、南北間の対話が再開されれば北朝鮮と離散家族再会問題を最優先で協議する方針だが、非核化交渉を巡って朝鮮半島が再び乱気流に巻き込まれる中、新年も突破口を見いだすのは容易ではないとみられる。
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インドネシア先住民族、インターネットの遮断要請

2023年06月11日 | 国家・社会
「AFP」 2023年6月10日 15:02 発信地:ジャカルタ/インドネシア
■インドネシア先住民族、インターネットの遮断要請

【写真】インドネシア・バンテン州ルバック県にある先住民族バドゥイ人の村(2023年5月27日撮影)。(c)GUS NAD / AFP
【写真】インドネシア・バンテン州ルバック県の村で、機織りをする先住民族バドゥイ人の女性(2023年5月28日撮影)。(c)GUS NAD / AFP 
【写真】インドネシア・バンテン州ルバック県の村を流れる川で、石で遊ぶ先住民族バドゥイ人の子ども(2023年5月28日撮影)。(c)GUS NAD / AFP 

【6月10日 AFP】インドネシアの先住民族バドゥイ(Baduy)人が、オンライン世界の「悪影響」を最小限に抑えるために居住区域でのインターネットを遮断するよう求めている。当局が9日、明らかにした。
 バドゥイ人はジャワ(Java)島のバンテン(Banten)州に約2万6000人いるが、テクノロジーを部分的に受け入れる開放派と、現代生活を避ける閉鎖派に分かれている。
 AFPが確認した嘆願書によると、閉鎖派は当局に対し、インターネットを遮断するか、近くの通信塔を移設して、居留地に電波が届かないようにしてほしいと要請している。
 バドゥイ人の代表は「この要請は、スマートフォンによる悪影響を最小化する試みの一環だ」と説明。居住区域の近くに通信塔があると、生活様式を脅かされ、若者がインターネットの誘惑に駆られて堕落する恐れがあると主張している。
 ルバック(Lebak)県の当局者はAFPに対し、5日に嘆願書を受け取ったと説明。通信・情報省と協議して要請に応じることで合意したとし、「基本的には、バドゥイの人々の希望と、彼らの伝統と地元の教えを維持するためのニーズには常に応じたいと考えている」と述べた。
 オンラインビジネスを立ち上げた開放派のバドゥイ人にはインターネットが必要だが、訪問者や観光客がインターネットにアクセスしてバドゥイ人にとっては不適切なコンテンツを見せることを懸念しているという。
 バドゥイ人の閉鎖派は、森の中での生活を選択し、テクノロジーやお金、昔ながらの学校教育を拒み、欧米メディアに「アジアのアーミッシュ(Amish)」と呼ばれている。
 バドゥイ人は、首都ジャカルタから車で数時間ほどの距離にある4000ヘクタールほどの区域にある三つの村に住んでいる。政府は1990年、この区域を文化保護区に指定した。
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「維新抵抗」の金南柱詩人ら42人に31億の国家賠償、光州地裁が判決

2023年06月10日 | 韓国で
「東亞日報」 June. 09, 2023 08:29
■「維新抵抗」の金南柱詩人ら42人に31億の国家賠償、光州地裁が判決
 維新独裁体制に抵抗して拘留され、過酷な行為を受けた故金南柱(キム・ナムジュ)詩人(1946~94)ら被害者が国家を相手にした損害賠償訴訟で勝訴した。
 光州(クァンジュ)地裁民事合議14部(羅卿部長判事)は8日、金氏の遺族と当時全南(チョンナム)大学の大学生だった5人、その家族など計42人が政府に対して起こした損害賠償請求訴訟で、原告の一部勝訴判決を下した。裁判所は、彼らが請求した金額の一部を認め、1人当たり390万~11億5970万ウォンなど計31億ウォンを支払うよう判決を下した。
 金氏ら6人は、全南大学在学中の1972年12月、反維新初の地下新聞「喊声誌」作り、全南大学、光州地域の高校に配布した。いわゆる「喊声誌事件」で73年3月、金氏らは捜査機関に167~284日間拘留され、拷問と苛酷な行為を受けた。金氏は同年3月19日に連行され、11月27日まで284日間拘留された。
 当時、彼らに対する国家保安法違反容疑が有罪と認められ、懲役2年、資格停止2年を宣告されたが、2021年の再審で無罪が確定した。当事者と遺族は14年に再審を請求し、光州高裁は6年後の21年に政府の違法逮捕・監禁などを認め無罪を言い渡した。
 今回の損害賠償訴訟で、金氏らの訴えを認めた裁判所は、「国家がむしろ加害者になって国民を違法に拘留し、証拠を捏造して違法な裁判を受けさせた不法性が非常に大きい」とし、「50年余り賠償が遅れた点などを考慮した」と明らかにした。
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