升屋の経営をとして、現実の経済(流通)を合理的に考えるようになった。
蟠桃の知識欲は、天文学へも発展した
蟠桃の天文学
寛政五年(1793)九月、蟠桃は天文暦学の論稿「昼夜長短図並解」を書きあげた。
ここで蟠桃は、季節や緯度のちがいによって、一年間の昼と夜の長さがどう異なるかを計測している。
地球が丸いとする日常感覚としては信じられなかった時代のことである。
蟠桃が、天文に興味をいだいたのは、直接には師の中井履軒(りけん)の影響が大きかった。
履軒は儒者ではあるが、西洋流の天文学や解剖学も学んでいる。そして、その履軒の友人が、麻田剛立(あさだごうりゆう)だった。
麻田剛立は、なにせ暦にない日食の起こる日時を正確に予言した天才である。
宗教論争
また、寛政六年(1794)、 蟠桃は故郷神爪(現、高砂市米田町神爪)村の正覚寺住職に仏教問答めいた書簡を送っている。
十項目ほどのか条にまとめているが、彼の考え方がよく分かって面白い。
その内、一つだけであるが読んでおきたい。
・・・ある(仏教の)経典によると、西方十万億土の地には極楽と呼ばれる別世界があって、阿弥陀と呼ばれる仏がおられるとのことです。
しかしと地球の周囲は、日本里で計るとおよそ一万里(約四万キロ)で、西方十万億土という場所は、まったく見当がつきません。
十万億里というのは、地球を一万回ぐるぐる回る距離のことでしょうか。
インド、中国、日本はともにアジア州に属しています。その西はアフリカで、さらにその西は海を越えてアメリカ、さらに海を越えると日本に戻ってきます。
つまり、いくら西に向かっても極楽には到着できないのです。
蟠桃は、いくら西に向かってみても地球をぐるぐる回るだけで、極楽などにはぶつからないと断言する。
彼の合理(科学的)主義が読み取れる。
*『蟠桃の夢(木村剛立著)』(トランスビュ)参照
*写真:現在の正覚寺(高砂市米田町神爪)
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