タケル白鳥に
大和に帰ろうとします。
オトタチバナヒメのことが忘れられません。
しかし、悲しんでいるばかりおれません。
甲斐の国(今の山梨県)を過ぎ、信濃(今の長野県)に入り、そこにはびこっている悪者を従え、尾張の国(今の愛知県)に帰りつきました。
そこには、結婚の約束をしたミヤズヒメが待っていました。
姫の顔はなぜかさえません。
「本当に長い年月を待っていたので、とうとう病気になってしまいました・・・・」と答えるばかりでいた。
タケルは、剣をミヤズヒメに預けて伊吹山の賊を征伐に出かけました。
「この山の神(賊)ぐらい素手でも捻りつぶしてやるぞ・・・」と山を登って行くと、白い大きなイノシシが現れました。
気にもとめず、さらに登りつづけました。
このイノシシこそ、山の神が姿を変えて現れていたのでした。
やがて、枝葉が折れるばかりの雹(ひょう)が降ってきました。
「苦しい(寒い)・・・どうすればいいのか・・・・」タケルは歯を食いしばり、山を下り、やっと正気に戻りました。
タケルの旅はさらに続きます。
ある村にたどり着いた時でした。
「ああ・・・私の足はこんなに三重に曲がってしまった。もう歩けない・・・」とつぶやくのでした。
そのため、その地を三重(今の三重県)と呼ぶようになったといいます。
それでも我慢して能煩野(のぼの)というところまでたどり着きました。
そこからはあの懐かしい大和の地が見えます。
大和は 国のまほろば
たたなづく 青垣
山ごもれる 大和しうるはし
タケルは、この歌を歌い終わると、力つき息を引き取りました。
皆が泣き悲しんでいる時でした。
一羽の白鳥が、海岸の方へ飛んでいくでは、ありませんか。
タケルの魂が白鳥になり、大空に舞い上がったのです。
王子たちは、どこまでも、どこまでも追いかけて行ったといいます。(no4762)
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