樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

煙の味

2010年02月18日 | 木と飲食
知り合いから「燻製の漬物」をいただきました。いぶして干した大根をたまり醤油に漬けたもので、私は見るのも食べるのも初めて。ラベルには、京都を代表する木・北山杉でいぶしたと書いてあります。


(京北町は最近京都市に編入された山里)

この「いぶり干したくわん」のオリジナルは秋田県。同じくスギの名産地なので、林業つながりで京都に移入されたのでしょう。
もともとは囲炉裏の上で干した大根を漬けたのが始まりで、いぶすことで水分が抜けて素材の旨みが凝縮され、パリパリした歯ごたえと香ばしい香りが生まれるとのこと。
この大根とスギもそうですが、世界各国の燻製には食材と木の取り合わせがあります。例えば、アメリカでは肉にはヒッコリー(クルミ科)、魚(ニシン)にはシラカバまたはオーク(ナラ)、ドイツではウナギにトネリコまたはブナ、スコットランドではタラにシナノキまたはニレを使うそうです。
日本では肉にはサクラ、魚にはナラが常識のようで、アウトドアショップではそれぞれのチップを販売しています。


(いぶり干したくわんをいぶす北山杉)

鰹節も燻製にしますが、遠洋ものは熱帯に多いヒルギ(いわゆるマングローブの木)でいぶすとか。また、つるし柿も昔は囲炉裏の上で半燻製にしてから露天で乾燥させたそうで、その囲炉裏で燃やす木はケヤキが一番。理由は煙が多いから。信州には「ケヤキの薪を3年焚くと盲になる」という言い伝えがあるそうです。


(いぶり干したくわん)

木は実だけでなく、種(コーヒーやギンナン)や葉(お茶)や皮(シナモン)を食材として、木材や樹液(漆)を食器や調理道具の材料として、さらに炭や薪など熱源として提供してくれるうえに、煙まで食文化に役立ててくれます。人間にとっては実にありがたい存在です。
さて、「いぶり干したくわん」を実食した感想。妻は「おいしい!」と気に入ったようですが、私には煙の匂いが強過ぎて、たくわんを燻製にする意味がよく分かりませんでした。
コメント (2)
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