樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

温暖化と野鳥

2018年07月19日 | 野鳥
西日本豪雨や連日の猛暑は地球温暖化による現象と思わざるを得ません。鳥の世界でも同様の異変が起きているのではないかと思って調べてみたら、やはり憂慮すべき事態になっていました。
身近なところでは、ウグイスの初音が最近の50年で約1か月早くなっているという報告が九州で上がっています。さえずりが早くなるということは繁殖活動が早くなるということ。イギリスでは1971~1995年の24年間で、65種類の野鳥のうち20種類で産卵時期が平均9日間早くなっているそうです。
産卵時期が早くなるということは、ヒナに与える餌にも影響が出てきます。新潟では、ソメイヨシノの開花時期よりもコムクドリの繁殖時期の早期化のスピードが2倍ほど早いため、ヒナに与えるサクランボが不足しているとのこと。ヒナが食べ盛りなのに、サクランボがまだ十分に実っていないわけです。
下は近くの探鳥地で撮ったコムクドリ。京都府内は通過するだけで繁殖はしませんが、ソメイヨシノの葉につく虫を食べています。



コムクドリは繁殖成功率の低下には至ってないようですが、ヨーロッパのマダラヒタキは繁殖時期と餌である昆虫の発生時期がずれたために、個体数が顕著に減少しているそうです。
フランス国立自然史博物館は、「温暖化によって国内の野鳥の一部が絶滅するかもしれない」という論文を2008年に発表しています。
アメリカの野鳥保護団体オーデュボン協会も、「温暖化がこのまま進むと今世紀末までに北米に生息する野鳥の半数314種が絶滅するおそれがある」という衝撃的な報告書を2015年に発表しました。
同協会の会長は「鳥類は人間に警告を発しています。温暖化の抑制や生息地保護のために今すぐ何かすべきだと警告する“炭鉱のカナリア”なのです」と語っています。
日本で絶滅が危惧されるのはライチョウ。温暖化は水平方向だけでなく垂直方向の環境変化ももたらします。平均気温が1℃上昇すると森林限界が154m上昇し、それ以下の標高のライチョウの縄張りが消滅すると仮定すると、個体数は平均気温が1℃上昇すると10%、2℃上昇すると50%、3℃上昇すると80%減少すると推定されています。
そして、3℃上昇すると御嶽山と乗鞍岳のライチョウは絶滅し、南アルプスでも35羽にまで減少するとのこと。
下は私が撮ったわけではないですが、乗鞍岳のライチョウ親子。温暖化が続くと、彼らは絶滅するわけです。



温暖化をテーマにしたドキュメンタリーではホッキョクグマの悲痛な姿が描かれますが、それと同じ状況に日本のライチョウも追い込まれているわけです。
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2 コメント

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Unknown (kazuyoo60)
2018-07-19 09:20:32
深刻な問題ですね。餌が不足すれば雛の数が減ってくるのですね。希少種については人が手助けしているケースもあると聞きますが、全てには行き届かないと思います。
雷鳥は鳥、鶏と同じように初めて見る動いたものを親と認識、そうなのかなと思っています。あらら、左下の5匹目の子、早く親の傍へ行かないと。
ホッキョクグマなど極地の生き物は氷が無いと獲物を獲れません。適応する年月の余裕もなく気候急変動です。私たちは冷房で一時しのぎ、しなくては体がもちませんし。なるべくは扇風機にしています。
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kazuyo様 (fagus06)
2018-07-20 07:55:51
そうですね。コウノトリやトキは人工的に餌を与えたり、繁殖を手助けして、絶滅を防いでいます。ライチョウもそういう保護をすることになるかもしれません。
鳥に限らず、動物でも人間でもヒナを見ていると可愛いですね。
わが家はここ1週間ほどはクーラー全開です。京都市は38℃越えが続いています。宇治は少しマシですが、外に出る気になれません。2人で家に閉じこもっています。
kazuyo様も熱中症対策に万全を期してください。
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