樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

南大門と金剛松

2008年02月20日 | 木と文化
韓国の南大門が放火で焼失しました。国宝第1号だそうですから、日本で言えば法隆寺や姫路城が焼失したくらいの衝撃でしょう。
ニュースを見ながら、防火システムや日本の木造文化財、再建のための建築材などに思いを巡らせていました。
日本の寺社建築の主要材はヒノキですが、韓国ではアカマツです。南大門もほとんどアカマツだったようで、1960年代の補修工事で楼閣全体の約1割の部材を同じアカマツ材で交換したそうです。その時の報告書によると、楼閣の柱の長さは最長で2.98m、直径は最大58.6cmだったとか。
奈良の東大寺にも南大門があります。建築材はほとんどがヒノキでしょう。大きさを競うわけではないですが、こちらの柱は長さ19.17m、直径1.01m。現存する日本の国宝や重要文化財では最も太い柱です。

       
          (東大寺の南大門。金剛力士像でも有名です)

マツは油分が多いので燃えやすいですが、放火されたらヒノキも同じ。日本でも金閣寺が放火で焼失しましたが、建築材はヒノキだったはずです。
韓国の宮殿や寺院に使われるのは東部地域に自生するアカマツで、特に「金剛松」と呼ばれています。幹が真っ直ぐで、硬くて腐りにくく、「生きて千年、死んで(つまり材として)千年」と言われているそうです。
韓国の林野庁がギャラップ社に依頼して「好きな木」を調査したところ、第1位がアカマツで46%。2位のイチョウが8%ですから、ダントツです。日本ならサクラとヒノキを足したくらいの人気です。それだけ韓国の人々はアカマツ(金剛松)を誇りにしているということでしょう。
昨年も光化門という文化財を再建するために、直径56~94cmの金剛松26本が使われたそうです。南大門もおそらく金剛松を使って再建されるはずです。
金剛松の情報はコチラ
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4 コメント

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ちょっと意外・・・ (guitarbird)
2008-02-20 22:08:14
アカマツって日本にもよくあるあのアカマツですよね。
針葉樹には珍しくあまりまっすぐに伸びないあのアカマツですよね・・・
この話題は必ずfagusさんが記事にされるだろうと思っていたのですが、
アカマツをを使っているというのはちょっと意外でした。
でもだから、まっすぐでいい材を集めるのが大変だから、
余計に価値があるのかな、とも思いました。
が一方で私の知識が足りないだけで、実際はいい材が結構とれる・・・
そう思って愛読書である辻井先生の「日本の樹木」を見たのですが、
材のことや韓国のことには触れられていませんでした。
長くなりましたが、それだけ驚いたということでご了解いただければ(笑)。
ちなみにアカマツは私の記事でイスカが来たお向かいさんの松がそうですが、
こっちでも割合よく植えられています。
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朝鮮半島に自生するアカマツ (fagus06)
2008-02-21 07:25:20
と日本のアカマツでは多少違うのかも知れませんが、基本的には日本のアカマツと同じようです。
韓国の樹木学者が書いた本(日本語です)によると、昔は、人が生まれたらアカマツの薪で沸かした産湯につかり、アカマツで造った家や家財道具で暮らし、死ぬとアカマツの棺に入る、というくらいアカマツ文化だったらしいです。
韓国でも普通の山に自生しているアカマツはクネクネ曲がっているらしいですが、東部の江原道地域に自生する「金剛松」は幹が真っ直ぐで、節間が長いとか。日本では、マツの曲がった部分を逆に利用して、民家の梁に使ったりしていますね。
辻井先生の本(新書)は私も2冊とも持っています。特に1冊目はマーカーの印だらけになっています。
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Unknown (まろ)
2013-12-16 02:39:08
韓国の南大門ですが、手抜き工事、中抜きにより
材木のひび割れや塗装のハゲが
問題になっているようですね。
南大門の再建に使われたのは
いちおう金剛松ではあるものの
32本の柱のうち、7~8本の柱が
韓国産ではなくロシア産であることが
調査により発覚したそうです。
なんでもロシア産の金剛松の価格は
韓国産のそれの1/100だったということで
担当者が差額を懐に入れてしまっていたようです。
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まろ様 (fagus06)
2013-12-16 06:56:47
情報ありがとうございます。
ロシアにも金剛松があるんですね。
こういう事件はあちこちであり得ることですね、一種の建築偽装。
多分、日本でもあるんでしょう、不届きな業者による偽装が。
ロシア材の100倍ということは、韓国では国内の木材価格が急騰しているのかも知れません。
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