樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

邪馬台国九州説を支持します

2015年09月14日 | 木と歴史
以前、「1800年前の植生」と題して『魏志倭人伝』に書かれている日本の樹種をご紹介しました。
『魏志倭人伝』は『三国志』の一部で、全部で12ページ。そのうちの6ページ目に樹木の記載があります。下の赤枠に8種類の樹木がリストアップされています。


『魏志倭人伝』の画像はパブリックドメイン

写真の樹木リストを書き直すと以下のようになります。
①木冉(木へんに冉)、②杼、③豫樟、④ 、④櫪、⑤投、⑥橿、⑦烏号、⑧楓香
これらの漢字がどの樹種を意味するかはツリーウォッチャーにも気になるところですが、考古学者にとっても大きな問題です。樹種によって邪馬台国の位置が推測できるからです。そういう背景も手伝ってか、これらの漢字をどう読むかは学者によって意見が分かれています。
①の木冉(木へんに冉)はタブノキ、③の豫樟はクスノキ、④の櫪はクヌギ、⑥の橿はカシ、⑧の楓香はカエデというあたりは共通しているようですが、以下の3種は意見が分かれています。
②の杼…トチノキ説とコナラ説
⑤の投…スギ説とカヤ説
⑦の烏号…ヤマグワ説とカカツガユ説
私の勝手な推測では、②の杼はコナラ。使節団が訪れたのは平地の集落で、トチノキが生えるような山中には行かなかったでしょう。第一、トチノキは日本固有種ですから、中国人は知らないはず。
⑤の投はカヤでしょう。これも同じく、スギは日本固有種なので中国人は知らなかったはずです。もちろん、実際に見たのはスギだけれども、中国にはない木なのでとりあえずカヤの字で表現したということはあるかもしれませんが、トチノキとコナラは葉も樹形も全く違いますから、言い換えることはないでしょう。


トチノキは複葉、コナラは単葉

⑦の烏号は、カカツガユという樹を植物園でしか見たことがないので何とも言えませんが、これを唱えているのが植物学者で、日本固有種かどうかを踏まえてコナラやカヤと読み解いている人なので、カカツガユが正しいと思います。
さて、タブノキ、クスノキはどちらかと言えば南方系の樹木。カカツガユにいたっては、台湾、中国南部以外では本州(山口県)、四国、九州、沖縄にしか分布しません。
これらの植生からすると、邪馬台国は九州にあったと言わざるを得ません。関西人としては畿内説を支持すべきですが、ツリーウォッチャーとしては九州説に寝返ります(笑)。
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2 コメント

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こちらでも (fagus06)
2015-09-16 07:46:12
トチノキの街路樹は時々見かけますが、セイヨウトチノキ(フランスではマロニエ)が多いようです。
自生のトチノキは、私の感覚では山中の谷筋に分布する樹種です。
古い文献から自然環境を類推するのは、想像力が掻き立てられて面白いです。
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Unknown (guitarbird)
2015-09-16 06:47:50
おはようございます
樹木から邪馬台国に考えが及ぶというのはさすがですね。
文書から昔のことを想像するのは、樹木に限らず楽しいし興味深いですが、この記事もそんな思いで読みました。
トチノキはこちらでは自然分布しておらず、しかし駅前通りの街路樹に使われていてよく見るので、そうか本来は山の木なんだと思いました(笑)。
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