樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

古代船なみはや

2010年04月15日 | 木と乗物
1988年に大阪の古墳から4世紀末の船形の埴輪が出土しました。そのレプリカが大阪市立歴史博物館に展示してあります。
全長129cm、オールの受口が左右に4個ずつあるので8人漕ぎ。船首と船尾がワニの口のように開いているのは波よけらしいです。


(歴史博物館に展示されている古代船の埴輪)

翌年(1989年)に市制100周年を迎えた大阪市は、記念事業としてこの埴輪をモデルに古代船を復元し、「なみはや」と名づけました。
しかも、実際に海に浮かべて、大阪港から韓国の釜山港まで約700kmの航海実験を行いました。船を漕いだのは大阪市立大学のボート部員。ところが、バランスが悪くて安定せず、なかなか進まないため、伴走船に牽引されてようやく釜山港に到着したそうです。
航海実験としては失敗だったようですが、埴輪を参考にして古代船を復元した情熱は賞賛に値します。その「なみはや」は現在、大阪市立海洋博物館に展示してあります。サイズは、全長12m、幅1.9m、重さ5t。


(海洋博物館に展示されている古代船「なみはや」)

『古事記』や『日本書紀』には、スサノオノミコトが「船にはスギかクスノキを使え」と指示する話があり、実際にスギの丸木舟やクスノキ製の船の断片が発掘されているので、当時の船にはスギかクスノキが使われたはずですが、「なみはや」に使われたのは米国オレゴン州の山から伐り出されたダグラスモミ。
「ベイマツ(米松)」とも呼ばれ、建築材として大量に輸入されています。アメリカの木材会社から寄贈された直径2.6mの巨木を使って、古代船を研究する神戸商船大学の教授が設計し、岡山県の船大工が建造したそうです。
その時の木材が大阪市立自然史博物館にあります。玄関にはダグラスモミのベンチが、館内には根元の輪切りが展示してあります。


(古代船の残材で作ったベンチ)


(自然史博物館に展示されているダグラスモミの根元)

埴輪(歴史博物館)、それを復元した古代船(海洋博物館)、それに使った木材(自然史博物館)…。私がたまたま訪れた3つのミュージアムが、古代船で一つにつながるという不思議な因縁でした。
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2 コメント

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木の人 (guitarbird)
2010-04-15 09:57:28
おはようございます
fagusさんの魂は古代から木でつながっているということですね!
口があいているのは視覚的にかっこいいですね。
しかし実際にうまく航海できなかったというのは、
昔の人もいろいろなノウハウを持っていたのでしょうね。
ロマンがある話ですね。
しかし、もう一度再検討して航海に再挑戦してほしいです。
でも、今の世の中では仕分けにあってしまうかな・・・(笑)。
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古代船の航海実験は (fagus06)
2010-04-16 08:59:07
ほかにも何回かチャレンジされているようで、若い頃の角川春樹氏は「野性号」で2~3回挑戦しているらしいです。
魏志倭人伝のルートを検証するために、釜山~博多を航海したり、古代人は南から渡来したことを実証するためにフィリピン~鹿児島の航海をしています。
いずれも到着したようですが、カヌー+帆船で、帆のない「なみはや」とは船の構造が違うみたいです。
その角川春樹の弟の角川歴彦氏が、上海万博で、遣唐使船の航海実験をやるようです。
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