日々のことを徒然に

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父の話重なる赤い絵

2019年08月09日 | エッセイサロン
2019年08月09日 中国新聞「広場」掲載

 5日付広場欄で広島の高校生が描いた原爆の絵に関する投稿を読み、入市被爆した父の話を思い出した。
 父は原爆が投下された日、業務連絡で広島へ自転車で赴いた。惨状を目にしたはずだが、聞いても語らなかった。ただ一つ「防火用水に人も犬も頭から漬かって亡くなっていた」と話してくれた。その話はモノクロで記憶していた。
 ある年、原爆展で「水を求めて」という一枚の絵の前で足が止まった。父の話と同じ光景だった。違うのは熱線で焼けた体が赤く描かれていたこと。その赤は今もまぷたに残っている。
 投稿によると、生徒は証言者の記憶に最も近い絵に表現しようと努めているという。筆者は「あの日の被爆者の様子を写した写真はわずかだ。生徒たちの描いた絵は限りなく写真に近い貴重な記録となるに違いない」と述べている。
 被爆者の語り部の活動と絵画による被爆の悲惨さを伝える活動が携え合い、核兵器禁止運動の糧となることを心から願う。
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