中国躍進の終わりのはじまり?

2008-04-10 00:00:11 | 市民A
チベット問題は、中国国内でも四川省に飛び火しているし、さらに新疆ウイグル自治区でも騒乱が発生しているようだ。ここも独立運動を抱えている。もともと内蒙古でも煙は上がったことはあるし、朝鮮国境でも中朝(韓)の摩擦はある。やっかいなのは、多くは民族運動であるのと同時に宗教対立であり、さらに数十年にわたる中国政府による漢民族の移住政策のため、少数民族を漢民族が混住していることである。パレスティナ、バルカン半島などをみれば、同じような政策は同じような悲劇の始まりと、暗い未来を想像してしまう。

日経ビジネスオンラインに以下のような記事があった。チベット問題と地下資源の関係を強調している。かなり長いが、いずれネット上から消えるだろうから、ここに引用しておく。

チベット騒乱の背後に地下資源問題--青蔵鉄道の本当の意味--
2008年4月8日 NIKKEI

去る3月14日、中国チベット自治区の首都ラサで大規模暴動が起きた。中国政府は北京オリンピックを間近に控え、鎮圧、沈静化に躍起である。外国メディアの取材をシャット・アウトしていたため、実態はよく見えない。

中国人民解放軍が最初にラサに進駐してチベットを併合したのは1950年、半世紀が過ぎた。その間、戒厳令が発令された大規模な暴動としてはダライ・ラマを追放した1959年3月と1989年3月であった。どういうわけか今回も3月、これまでのチベット人の犠牲者は100万人を超えると言うわれている。1989年の動乱の映像がYouTubeで放映されているが、その弾圧の過酷さがよく見て取れる。今回も似たようなものと容易に想像できる。

中国はなにゆえそのように強硬手段でチベットを統治しようとするのか。それは、チベットに眠っている豊富な地下資源である。その眠りを覚ます役割が、2006年7月に開通した青蔵鉄道である。青海‐ラサ間1145キロメートル、約3200億円かけて建設された鉄道は採掘された資源の輸送手段になるわけだ。

国あるいは地域を実効支配する常套手段が鉄道建設である。自国民を大挙して送り込み、資源を収奪する方法は、かつて、日本も満州で行った。国策として南満州鉄道を建設し、100万人移民政策を推進、鞍山の鉄鉱石、撫順の石炭その他有用資源を確保した。青蔵鉄道も全く同じ手法である。この方法を中国は今、チベットだけでなくアフリカのコンゴ民主共和国でも実行している。

チベット自治区とその周辺のチベット族居住地域の地下資源は、資源飢餓国中国としては絶対に開発したいところである。青蔵鉄道建設に先立ち、その沿線地域において政府地質調査団が広範囲にわたり探鉱した結果、銅、鉛、亜鉛、鉄鉱石の鉱床が発見された。これら資源の価値は1250億ドルと評価されている(Interfax-China)。銅が2000万トン、鉛・亜鉛が1000万トンで、1カ所の銅鉱床で確認された埋蔵鉱量789万トンは、中国全土で2番目の規模である。

これら調査結果を2007年1月25日、新華社通信が公表した。多くのチベット人にとっては、それまで青蔵鉄道建設が資源収奪を目的とするものだと疑念を抱いていたが、そのことが確認されたというわけである。チベット高原における中国の行為は、インフォームドコンセントもなく、チベット人には何らの自由も優先権もなく、中国の資源収奪は占領されたチベットにおける、“白昼堂々の盗み”とまで表現するチベット人もいる。鉄道に反対してきたのは、資源収奪もさることながら、漢民族がどんどん増えることによってチベット人が駆逐されることを恐れていたからである。

ちなみに、2007年ラサの人口35万人のうち漢民族が既に20万に達している。

さらに、チベットの人たちが心配していることは、資源開発に伴う環境破壊である。今、チベットはまさにゴールドラッシュ。中国企業のみならず、カナダ、オーストラリアなどの外資も権益を取得して探鉱・開発に参入してきている。これに対して、“自由チベット”の活動家たちは反対の声を上げている。

例えば、カナダのコンティネンタル・ミネラルズ(Continental Minerals Corp.)がラサの南西240キロの地域で行っている4.5億ドルの銅・金鉱床の開発プロジェクトが標的になっている。

ダライ・ラマも鉱山開発による自然環境破壊には懸念を表明し、2003年には欧米企業の鉱山開発を再考するように呼びかけた。その内容は「チベットにおいて事業を行うことを考えているすべての外国企業とその株主の皆さんに、事業を始めるに当たって倫理的な価値について注意深く検討することをアピールします」(I appeal to all foreign mining companies and their shareholders who are thinking about working in Tibet to consider carefully about the ethical values when embarking on such a venture)というものであった。2003年に、オーストラリアの鉱山会社、シーノ・ゴールド(Sino Gold Ltd.)はチベットにおける探鉱権益を放棄した。

2007年5月には、四川省側にある町で、数百人のチベット人が暴動を起こした。それは、チベット人が先祖代々聖なる山と考えている9つの山の1つ、ヤラ山(Yala Mountain)で始まった中国企業による鉛・亜鉛鉱山の開発をやめさせようとしたものである。

8人の代表者が四川省成都の省政府に開発中止の嘆願に行ったところ、彼らは今、行方不明になっている。

金属鉱物資源だけではない。中国地質調査所の副所長(Zhang Hongtao)によると、チベットの西の辺境キャンツェ(江孜)盆地には“超大型石油・ガス田”と大規模オイル・シェール鉱床が発見されているので、青蔵鉄道の終点ラサからさらに西200キロの町、シガツェ(日喀則)までの延長が、第11次5カ年計画の中で優先度の高いプロジェクトとして上がっているということである。

中国にとって、チベットの豊富な資源の本格的な採掘が始まれば、アフリカその他リスクの大きい遠い外国の資源への依存を減らすことができるわけであり、チベットの地政学的な価値は極めて大きい。したがって、13億人の人口と経済成長を考えると、北京政府が外縁発展を強力に推し進めようとするのを阻止することは難しいであろう。

2007年10月21日の第17回中国共産党全国大会において胡錦濤国家主席は、過去5年間の政権運営の活動報告を行った。その冒頭で胡政権が抱える“困難と課題”を列挙し、その第1番目が「資源・環境・格差」であった。資源は国家の最重要課題なのである。国民に直結した問題の「雇用、社会保障、教育医療、所得分配」が第2番目となっているくらいであるから、地下資源豊富なチベットとチベット族が住む周辺地域の統治のためにはいかなる弾圧も辞さない構えである。


実は、青蔵鉄道が完成し、旅客車(貨客車)が走ったのは2年前。当時、偶然テレビ(たぶんCNN)で観た開通式の際、客車の後ろに連結された貨物車に何が満載されていたか?

これも地下資源とも言えるのだが、一辺が1メートル近い立方体型の巨大なペットボトルにミネラルウォーターを詰め、それを満載して運んでいたわけだ。おそらく沿海部に住む豊かな市民が、少しはきれいな水を飲みたいが、都会では手に入らないということで、チベットで井戸を掘ったのだろう。

しかし、一辺が1メートルの水の重さは1トンである。そのままスーパーマーケットに並べても、個人では運ぶことができない。どこかで、小瓶に詰め替えるのだろうが、それであれば最初(チベット)から、ペットボトルではなく、タンク車のようなものの方がいいはず。なぜ、ペットボトルか考えていたのだが、最近わかってきた。タンク車のような容器の場合、その決まった容積までしか運べない(それ以上は、タンクに入らないわけだ)。それに対してペットボトルの形にすれば、いくらでも貨車に上乗せできるわけだ。要は過積載可能。


中国の自治区を考えれば、さらにベトナム国境に接する広西チワン族自治区がある。人口3000万人の約半数がチワン族と言われる。この地区にもオタカラがある。インフルエンザの特効薬タミフルの原料となる植物『八角』の世界の80%がこの地区産なのである。

今後、次々に自治区に抗議運動が広がっていき、さらに香港、マカオといった特別区でも騒ぎが大きくなれば、ついに中国の大動乱が始まるということかもしれない。その時、日本にできることは、オリンピックの肩代わり開催くらいしかないのかもしれない。

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