ショパンの謎(2)幻想即興曲

2010-02-25 00:00:50 | 音楽(クラシック音楽他)
先週のショパンの謎(1)前奏曲集についで、二回シリーズの二回目。

今度は幻想即興曲について。ショパンの作品の中でも人気はベスト10には入るだろう。とにかく冒頭の高揚感。ロマンティックで息苦しくそして繰り返し繰り返しメロディは続いていく。


しかし、作曲家自身、この曲が好きではなかったらしい。

生前、発表もされなかったし、遺言の中で、この曲の楽譜を燃やすように、わざわざ指示していた。

つまり、遺言執行人が、忠実に仕事をしていたら、この曲は地上から永久に消滅していたはずだ。

ますは、遺言執行人に乾杯! あるいは座布団2枚。

では、なぜショパンは、この楽曲を破棄したかったのか。

chopin1さっそく、ルヴィンスタインの演奏を聴いてみる。ちょっとあっさり弾いていた。やはり、もっと若い演奏家の方がよかっただろうか。

まあ、演奏はともかく謎解き。

よく言われるのは、「他の曲に似ているから」という理由。似ているとされるのは、ベートーヴェンのピアノソナタ『月光』第三楽章。こちらは、全体の感じではなく、ある一部分のパートが一瞬似ているということらしい。(私には、よくわからない)

次に、ショパンと同時代の作曲家であるモシュレスの即興曲89番という説。大まかな作りが似ているそうだ。それに互いに親交があったらしい。ただし、モシュレス版は長調だがショパンが書いたのは短調。新築住宅で間取りが似ているといっても方や和風の畳みで方や洋室みたいな差だろうか。それに有名じゃない。

さらに、曲の類似という観点で言うと、幻想即興曲にはショパンの大胆な実験が含まれている。「リズム」。基本的には同じ拍の中で、右手は4等分された音を弾き、左手は3等分された音を弾く。4と3だから、割り切れない。この微妙な不一致が男女の心の揺れとか割り切れないリズムを作る。割り切れないまま両手が突き進んでいくわけだ。

だから、死後「剽窃者」と言われないように考えたのかもしれないという説も、やや頷けない。

しかも、そういう問題があるならば、遺言なんか書いている暇があれば、チョコチョコと書き直せばいいだけだろう。元々、自分の書いた作品を自分で直すのだから、何の問題もないし、彼の能力から考えれば、いとも簡単だろう。


おそらく、もっとショパンの内面的な問題に起因しているのだろう。

たとえば、
1.自分にとって大切な思い出のある曲で、後世の他人が好き勝手な解釈で弾かれては困る
2.何か不吉なところがある曲で、弾くたびに不幸があるので、廃棄したかった。
3.当初はいい曲だと思ったが、自分の作品群の中では規格外だ
4.世界最高の曲だと思っていて、某日本企業の社長が名画を棺桶に入れようとしたのと同じ動機。つまり、今後、誰にも聴かせないため。
5.単に、天国に一曲持って行きたかった。生前のご乱行をとがめられて、地獄行きにならないように、天国地獄仕分け人への手土産だった。

もっとも、こういうのは、わかることのない謎なので、何でも書けるわけだ。

私の解釈では、
「焼却」といったところで、この名曲が焼却されるわけもないだろう。その場合、「焼却されそうになった名曲」ということで、人気が高まり、さらには『ショパン』という名前を末長く音楽史に残すことになるだろう、と彼自身が考えたのではないだろうか。


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