「だからお店は面白い」のかな?

2004-11-26 21:31:23 | 書評
174ebf73.jpg「だからお店は面白い(たかはたけいこ・繊研新聞社・2004年3月・1600円)」は、なかなか面白い本である。分類すればマーケティングということになるのだろうが、学者やアドバイザーが書いた本ではなく、「アップルハウス」というブランド婦人服の経営者自体の日々の奮闘記だからである。また、過去の回顧録ではなく、現在進行形の記録でもある。だからこそ、マーケティングの公式から少しずれた位置の視点が新鮮である。例えば、「お客様は神様でありますが、しかし・・・」とか「ファッションの基本はトータルコーディネートでありますが、しかし・・・」とか「クレジットカードでの販売はうれしいが、しかし・・・」といった、公式から逸脱していく現実が、「そうか、なるほど」ということばかりなのである。

直営店と既存店のバッティング問題あり、店長の突然退職あり、棚卸の不整合あり、お客様からのクレームあり、多岐にわたった経営上の問題を「よくここまで書くな」ってほどリアルに書いている。もちろん、紙に書けない部分もあるだろうが。また、どんな商品を取扱う業種でも、結構同じような問題があることがわかる。本当に読むだけで、店長になって「たかはたオーナー」を手伝ってあげたくなる。

で、本を読んで、HPを眺めて、納得しただけでブログにしてしまうと、きわめてイージーなものになってしまうので、店舗を見に行くことにした。

HPで46店舗の場所をさがすと、私の通勤途中にあるのは、東急線溝ノ口駅前、ノクティ2号館の丸井の店内店舗である。(注1:もっとも遠い店は、オーナーご自慢のロンドン店。注2:溝ノ口周辺では、ミゾノクチと言わないで、ノクチと略す。だからビルもノクティと言う)

丸井4階は半分がインザルームという家具売り場である。ちょっと北欧風な家具だが、中の上の客層狙いだ。残り半分が婦人服だが、競争は厳しい。ブランド対抗戦のようなフロアになっている。なにしろ、ベネトンにマンゴ、GAPにニューヨーカーに23区、ポロジーンズ。20才台後半から40才台前半までを主ターゲットとしたブランド店が競い合う。アップルハウスの対抗は23区かもしれない。
しかし、これらのブランド、結構個性が強く、混ぜて着るようなものではない(GAPだけはベーシックだが)。そういう意味だと、アップルハウスのトルソーはトータルコーディネートになっているし、マンゴも同じような路線。ベネトンは、一品主義でやっている。結構、各店舗とも苦労している。

販売実績を上げるには、商品、店舗、店長、どれも重要なのだが、変革が難しいのは「商品力」なのかもしれない。店舗や店長は替えてしまえばいいのだが、商品の質の問題は簡単ではない。

店舗ごとの売上げ高は、秘密なのだろうが、アップルハウス溝ノ口店は苦戦しているのではないだろうか?店舗も小さいし、店内には店長一人しかいなかったので、気兼ねして撮影はしなかった。天然素材に自社独自の調合の染色で出す風合いに魅力はあるが、東急線の人は、もっと明るく、繊維の表に浮き出す派手な色が好きみたいだ。ベネトンとマンゴはまさにそういった路線だ。

しかし、会社は進化し、ファッションは変化する。ファッション業界は下手をすると、自分で販売した商品が、自分の翌年の売上げの阻害要因になることが多い(ユニクロのフリース現象)。ブランドの枠の中で変化が必要。ロンドンで日本の風を売るのも重要だが、日本にロンドンから風を吹き込むことも考えていけばいいのだろう。英国と日本は、レベルはどっこいであまり違和感はないだろう。

そして、オーナーとしての彼女に、もっとも重要なものは、ナンバー2選びかもしれない。一人でできることには限界もあるし、長期政権に問題があるのは経済界に数多くの類例がある。

しかしライターとしての彼女に、ナンバー2の育成は不要であることは論を待たないところだ。  


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