モーリス・ドニ(子どものいる風景)

2011-11-20 00:00:41 | 美術館・博物館・工芸品
損保ジャパン東郷青児美術館で開催中(~11/13)のモーリス・ドニ展に行った。

損保ジャパンの優良顧客に配られる招待券が、期間終了間際に長い経路の末、手に入る。まあ、しょうがない。

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モーリス・ドニ(1870-1943)は、19世紀末のフランス象徴派の代表画家である。あえて、やや平面的な構図と単純な造形と色彩の対照を多用するテクニックが特徴だが、聖書や神話を題材にする場合と、もう一つのジャンルが「こども」である。「こども」といっても、一般的な子供ではなく、これが「自分のこども」をモデルにしたところが徹底している。

しかし、家族をモデルにするというのは、売れない画家の初期作品の特徴であり、それはモデル料の関係もあるのだが、ドニの場合、ちょっと歪んだ経路をたどったようだ。

つまり、最初にドニ夫妻に授かったのは、男の子だった。多くの家庭でも最初の子供の時の喜びはひとしおで、彼も生まれたての子を題材に何作も描いている。親バカぶりだ。

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しかし、

最初の子供は、わずか数カ月で感染症で亡くなってしまったのだ。落ち込むドニ。画風は真っ暗になる。

そして、数年後に二人目の子(女児)が生まれると、それから、こどもの絵を描き続けることになる。現代でも、一日中カメラを持ってこどもに付きまとう親がいるが、まさに同じ。

そして、早世した長男の後に8人のこどもが生まれたわけだ。最初の妻が7人を産み、途中で妻が亡くなり、後妻が二人を産む。展覧会場にはこどもの家系図があったが、多くは長命だ。

こどもに夢中になりすぎたのか、臨海学校などのこどもの学校行事にまで付いて行って、題材取材をしているようで、長女の山梨への修学旅行の追っかけを行った、どこかの国の貴族ママと同じだ。貴族パパは運動会のビデオ撮影。こどもの数は違うが。

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さらにドニは、自分のこどもたちを神話や聖書の中に登場させている。すごいなあ。

ところで、彼の時代はすでに写真やシネマの時代でもある。もちろんこどもたちの写真も多数残っていて、展覧会で見ることができるのだが、ちょっと驚いたことがある。

写真と絵画の顔が、ぜんぜん似てないことだ。どちらかというと実物のこどもの方が、男児女児ともにハンサムで個性的だ。絵画に描かれたこどもの顔は、それほど可愛くもないし、どちらかというとステロタイプじゃないだろうか。

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なんとなく、思ったのだが、自分のこどもをモデルにしているということになっているが、本当は一般的なこども像を描いたのではないかということ。

税金対策で、こどもにモデル料を払っていたのだろうか。


孫を題材にした絵がなかったのだが、こどもたちが「NON!」と言ったのだろうか。


ドニは1943年に、73歳にしてパリ市内で交通事故にあい、落命してしまう。相手の車が損保ジャパンの対人保険に入っていたかどうかは不明。


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