吉備路文学館を訪ねる

2016-03-06 00:00:33 | 美術館・博物館・工芸品
岡山市の中心街から北の方にはずれたところに、ベネッセの本社がある。近くには地銀のトマト銀行本社がある。その二つの建物の近くと言うか路地裏というか細い道に面して「吉備路文学館」がある。前面道路は午前と午後とにわかれて一方通行の方向が変わるという、岡山市の名所の一つである。午後0時0分にはどういう混乱が生じているのか確認したいのだが、吉備路文学館に到着したのは少し遅れてしまった。

なにしろ、地図が漠然とし過ぎて、実感と異なる感じだ。また目印も「トマト銀行本社」と具体的に書いてくれると大きなビルなのでわかるのだが、単に「銀行」となっている。もうすぐ別の銀行と合併して余命をつなぐ情報でも流れているのだろうか。マイナス金利だし。

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で、展示は坪田譲治展。岡山の生んだ童話作家だ。実は、あまりなじみがない。あまり童話は読まなかった。読んだのは「巨人の星」とか(冗)。

展示されていたのは、氏がモノを書き始めた頃にお世話になった各先生との手紙や、原稿とか。どうも、小川未明、鈴木三重吉の童話作家と小説家の山本有三を先生として敬って教えを乞うていたようだ。特に山本有三には「先生、先生」と原稿持込でご意見を伺っていたようで、せっかく書いた中編小説は一撃で没にされ、書き直した短編には○がついたのだが、「君、作品はいいのだが、短すぎるよ」と言われる始末だったようだ。

本人がなんとか有名になった頃には、先生たちにお世話になっていないようなので、師匠を親と考えれば「親不孝者」ということになる。

本人は、こどもの頃に読んだアラビアンナイトなどに衝撃を受けたそうだが、作風は異なる。

実際の坪田譲治よりも、若手でHOTな作家に贈られる「坪田譲治賞受賞者」には現代作家たちがキラ星の様に並んでいる。親不孝の罪滅ぼしとなっている。

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ところで、この文学館に行った目的は、彼ではなく、同時出展の「吉備路近代文学の7人展」。

森田思軒、近松秋江、木下利玄、西東三鬼、永瀬清子、吉行エイスケ、吉行淳之介。

かなり時代が縦長だ。もっと現代まで引っ張れば、小川洋子とあさのあつこは外せないだろう。この七人のうち実は詩人の永瀬清子女史と吉行淳之介について、若いときに母親から「親戚」と聞いていた。この二人は親戚であるなんてどこにも書かれていないので、母親の実家がミッシングリンクになっているのかもしれないと思ったのだが、当然ながらそんなことは展示をみてもわからない。(淳之介氏とは父親が高校の同級生だったのは知っている)

要するに系図と言うのは男系で書かれているので、女系で書いた場合とまったく異なるものになっているわけだ。母親系を二つ遡って、それから男系を3代戻ってとか・・もうこうなると一億皆兄弟ということになるのだろうか。

詩人の永瀬清子さんだが、谷川俊太郎氏が十代で詩作を始めた頃に読んだのが、彼女の「諸国の天女」という詩集だったそうだ。2月17日に生まれ、90回目の誕生日に亡くなった日にアップすべきだったがうまくいかなかった。

吉行淳之介氏の戦慄的作品である「驟雨」と「原色の街」。再読したくなったが、注文すれば数日後に到着し、そのまま積んだままになり、何年後かに読むのだろうか。