ベルリン空輸回廊(ハモンド・イネス著)

2013-05-13 00:00:49 | 書評
謀略物といえば、なんといっても英国人作家の得意技なのだろう。30冊以上の謀略小説を書いたハモンド・イネスの初期の作品『ベルリン空輸回廊』を読むと、第二次大戦後の冷戦下での国家対立と、個人的野望のためには手段を選ばない冒険的企業家の行動がほどよくバランスした作品である。

ines


場所は、西ベルリン。東ドイツの中にある西側の飛び地である西ベルリンへの陸路をソ連が封鎖してしまい、西ドイツから西ベルリンまでの物資の輸送が、すべて空輸になった時代がある。

一方、ドイツが戦時中に開発していた低燃費の航空機用のエンジンを、設計図の盗用により復元して一攫千金を狙う人たちがいる。

そして完成した二基のエンジンを取り付けられた機体は、不運にも最初の飛行に成功したものの、あれこれあって胴体着陸の結果、エンジン以外の機体が大破してしまう。

そこで悪漢たちが考え付いたのが、ベルリン空輸に従事している飛行機を墜落したことに装い、そのまま強奪して別の場所に強制着陸、機体ナンバーを書き直してから新型機として使ってしまおうという大犯罪である。反対するものは、飛行中の機体から放り出してしまうという悪辣ぶりである。

で、最後は、「悪いものは滅びる」、という結果となった。

文庫本の表紙に描かれた飛行機の絵は、片側の翼にエンジンが2基取り付けられていて、合計4基(4発)と推定できるが、小説の中ではエンジンは二基しかないのである。読まずに絵を描いたとしか思えない。