次はウラジオ奪還?

2012-11-26 00:00:30 | 市民A
「帝国主義によって奪われた土地(島)は取り戻す権利がある」と言い張る国こそ、現在の敷地の基礎となるのは、有史以来繰り返してきた代々の大帝国の興亡の結果であるという滑稽を思い出すべきなのだが、次の打倒帝国主義の目標が決まったようだ。

会員制情報誌であるフォーサイトによれば、最新の中国の歴史教科書にはウラジオストックを含む沿海州の所属について、威勢のいい記述が登場したようだ。

ウラジオストクはもともと中国領で、1860年の北京条約によりロシア領に移管。帝政ロシアはこの天然の良港に、「極東を制圧せよ」を意味するウラジオストクという名前を付けた。だが、中国の新しい歴史教科書には、「極東の中国領150万平方キロが、不平等条約によって帝政ロシアに奪われた」との記述が登場した。中国はある日突然、ウラジオストクを「中国固有の領土」として返還を要求しかねない。中露間で歴史的なパワーシフトが進む中、ロシアにとって、尖閣問題は他人事ではない。


その沿海州がロシア領になったのが1860年の北京条約である。アロー戦争後、天津条約に飽き足らない英仏両国が、さらに北京まで軍隊を送りこんで清国から利益を奪ったのが北京条約の第一幕(10月24日)。さらに、この交渉の仲介をとったとして、コバンザメ風にロシアが便乗し、清露間で別条約を締結(11月14日)。これによってロシアは沿海州の所属を自らのものとした。英仏の得た権益や領土については、現在はすべて中国に返還されているのだが、コバンザメの得た地面は、アムール川の東側については、そのままロシア語の地名に書き換えられたままになる。ウラジオストックが含まれる。

ただし、2000年代のプーチン政権による積極的な国境画定政策により、公式的には、現在中ロ間に領土問題は存在しないはずである。アムール川中洲の島々を分割して国境を画定した。その背景として、プーチンは来るべく中国の台頭を恐れ、中国とロシアの国力の拮抗が崩れる前に、将来の禍根を消滅させたと言われている。

その中ロ国境条約を両国が締結してから、まだ10年も経たないのに、歴史教科書に登場するというのは、今後、言いがかりをつける準備と考えるのが妥当なところだろう。

では、いかなる理由で国境条約を覆すのか考えているうちに、うっすらと見えてきたのは、「中華民国」のことである。実効支配しているのは台湾島であり、国民党と民進党を中心とした政党政治を基盤とした民主主義国である。

この中華民国は、北京条約そのものを不平等条約として認めないと主張しているわけだ。

つまり、中国が中華人民共和国である限り、北京条約は有効で、再び中華民国となれば北京条約は違法ということを主張することになる。もはや中国は共産党政権以降を想定しているのではないか、と感じないでもない。