小野寺史宜氏、名前はふみのりと読むそうだ。読後、検索すると千葉市の稲毛という町で育ったようだ。私と同じ。初めて著者の本を読んだので、作家論など書くつもりはなく、作品のことだけ。
そこそこ長い小説。主人公は青年期の終わりに近づいているのかな。大学卒業後、二つほど会社を代わり、現在はコンビニ従業員。いつまでも続けるつもりもないが、次の仕事を探すわけでもなく、総武線平井駅の近くの単身者用のアパートで独り暮らし。

ストーリーは、彼の日常と、アパートの同居人との交流、それと大学時代の友人の動静。時々やってくる母親。まず、華々しい話はどこにもない。父親はがんで亡くなり、母親は再婚。友人男女は結婚し、東京を去る。上階の強面男は単なる無神経で妻子と別居中だったが、復縁してしまい町を去る。隣家のシナリオライターは病死するし、別の住人は演劇にはまっている。このようにそれなりの人間関係が進展していくのだが、この主人公は穏やか過ぎる性格で、会社勤務時代は怒られ続け、友人はどこかに行ってしまい。何も起きないのは自分だけ。
そして、みんながアパートを去っていき、ついに、地元のパン工場の会社の面接を受けることになるわけだ。
小説は、ここまでなのだが、実は、最初に就職してしばらくして辞めたのは、日本でもっとも有名なパン会社(営業職)だったわけで、地域限定のパン会社に行っても、中小企業だからこそ、製造部門も企画部門も含め社員全員に営業力が求められるはずなのだが、大丈夫なのだろうか。そして地元で勤めるのだから、アパート脱出はもっと先になるのだろうか。