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ライフ(小野寺史宜著 小説)

2024-12-31 00:00:16 | 書評
小野寺史宜氏、名前はふみのりと読むそうだ。読後、検索すると千葉市の稲毛という町で育ったようだ。私と同じ。初めて著者の本を読んだので、作家論など書くつもりはなく、作品のことだけ。

そこそこ長い小説。主人公は青年期の終わりに近づいているのかな。大学卒業後、二つほど会社を代わり、現在はコンビニ従業員。いつまでも続けるつもりもないが、次の仕事を探すわけでもなく、総武線平井駅の近くの単身者用のアパートで独り暮らし。



ストーリーは、彼の日常と、アパートの同居人との交流、それと大学時代の友人の動静。時々やってくる母親。まず、華々しい話はどこにもない。父親はがんで亡くなり、母親は再婚。友人男女は結婚し、東京を去る。上階の強面男は単なる無神経で妻子と別居中だったが、復縁してしまい町を去る。隣家のシナリオライターは病死するし、別の住人は演劇にはまっている。このようにそれなりの人間関係が進展していくのだが、この主人公は穏やか過ぎる性格で、会社勤務時代は怒られ続け、友人はどこかに行ってしまい。何も起きないのは自分だけ。

そして、みんながアパートを去っていき、ついに、地元のパン工場の会社の面接を受けることになるわけだ。

小説は、ここまでなのだが、実は、最初に就職してしばらくして辞めたのは、日本でもっとも有名なパン会社(営業職)だったわけで、地域限定のパン会社に行っても、中小企業だからこそ、製造部門も企画部門も含め社員全員に営業力が求められるはずなのだが、大丈夫なのだろうか。そして地元で勤めるのだから、アパート脱出はもっと先になるのだろうか。

阿久悠記念館へ

2024-12-30 00:00:23 | 美術館・博物館・工芸品
そして、もう一つ、明治大学博物館に併設され、阿久悠記念館がある。明治大学卒業生だそうだ。



三木武夫という総理大臣も明大卒だったはずで、総理より格上ということだ。

小説もたくさん書かれていて、展示品の中にも「読みたい」と思える本が多い。



NHKの連載テレビ小説『虎に翼』関係の資料やポスターが数多く展示されているので、主演の伊藤沙莉さんが明大卒業生かと思って調べてみると無関係。出身地が千葉市で実家の近くの高校卒ということで、12月30日に予定されている総集編の録画予約してみた。日本最初の女性弁護士が主人公で、明大卒ということだそうだ。

明治大学博物館再訪

2024-12-29 00:00:10 | 美術館・博物館・工芸品
駿河台のあたりに所用で出向いた折、「そういえば、山の上ホテルは明治大学が買ったはず」と思い出し、見に行った。確かに、都心にあるシティホテルでは最も小さいのかもしれない。しかし、どうみても明治大学が歴史的な建物を買い取るのが自然な場所だが、買い取って何に使うのか。かなり興味がある。



その後、なんとなく大学内にある明治大学博物館に寄る。以前は、ギロチンとか日本の鋸引きとか刑罰系の展示が有名だった。

現在でも、ギロチンの他、鉄の処女といわれる人間串刺し装置は健在で、鋸引きとか獄門台も揃っている。



そして、明治大学史資料センターで、設立の経緯を拝見すると3人の創立者というのが紹介されていた。1881年、明治法律学校というのが起源だそうだ。早稲田大学の前身の東京専門学校の創立が1882年なので明治の方が1年早い。早稲田の同様の博物館には開校の頃の話があったが、大隈重信が走り回って資金を作ったと品のない話ばかりが書かれていた。

早稲田のライバルは慶応ではなく明治であるべきなのだろう。


将棋ペン倶楽部通信64号届く

2024-12-28 00:00:14 | しょうぎ
年間4回の雑誌というのは季刊というのだから夏号とか秋号とかにすればいいのにと思っているのだが、今回の記事の中でもっとも読めたのは、『未完の新聞観戦記「静岡新報大争奪戦」②』かな。



例えば新聞の連載小説が途中で中止になるには、二つのパターンがあって、一つは著者がなんらかの理由で筆を持てなくなったとき。そして、もう一つは、著者が連載中に小説の先行きが書けなくなったとき。後者はめったにないが、いくつかあるらしいが、最悪なのかもしれない。

ところが本誌で書かれていたのは、別の理由。おそらく将棋の連載だけでなく小説があったならそれも途中で終わったのだろう。

つまり、新聞が廃刊になった。昭和16年11月30日付けで終了。真珠湾の8日前だ。日米戦争の前から日中戦争は始まっていたが、その頃は将棋は健全な娯楽と推奨されていたが、そのうち全娯楽が悪者扱いされていったといった事情もある。

静岡新報に限らず多くの新聞が様々な理由(紙の配給を停止されたり)で廃刊になっただろうが、このように途中で中断された観戦記や小説やらの連載物というのは、なんとなく中途半端のまま宙にさまよってしまったわけで、だれか筆器用な人がいたら、全国の中断記事を発掘して結末を付け加えるとかやらないのかな。

不運な著者と不運な作品が宙を飛ばないように。(とはいえ、ジャニーズ記事はじめ、その他無数の記事も宙吊りのままになっているわけだが。)


12月14日出題作の解答、







今週の出題。7手詰。


わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

中華街の外側?

2024-12-27 00:00:21 | あじ
中華街の東端に西安刀削麺「麺王翔記」いう店がある。



自家製で麺の材料(主成分は小麦粉)をこねて、直径7センチ、長さ40センチほどの円筒形に形成し、沸騰しているお湯の中に小刀のような刃物で削りながら投入。やや柔らかく火を通してから網で掻き出して中華丼にスープを入れた中に投入し、肉と野菜をトッピングし完成。スープは四川風も選べる。

手で俊敏に削るのだから、決して工場で作ったような均一の太さや長さにはならない。きしめんより太い部分もできるし細くて切れそうな部分もできるが、この方が麺の表面がデコボコになりスープののりもいい。いかにも人間が作った感じがある。



作業はガラス張りの調理場で行われるため、この店の最上級の席は、二階の宴会室ではなく調理場に面したカウンター席と考えてもいい。まるでショーだ。

刀削麺だけではなく、一品料理もいわゆる「お値打ち価格」。この店が前からあったのかどうか記憶にないのだが、地下鉄の駅の方から中華街に入る交差点を中に入らずに右に何軒か歩いたところ(つまり北京飯店の隣)なので「中華街東陽門横」というべきか。

店の隣は片側が北京飯店で反対側が「海苔弁」屋。海苔弁を買う人も多いのだが、なぜだろう。

縄文人に相談だ(縄文ZINE編集長 望月昭秀著)

2024-12-26 00:00:19 | 書評
現代人が抱える様々な悩みに対して、縄文人を代表して望月昭秀氏が解答するという形のいわゆる「悩み事相談本」。



悩み事相談に答えるのが、知識人を騙る有名人とか、占い師とか陰陽師(安倍晴明)とか、ノストラダムスとか様々だが、縄文時代人の研究で有名な方によるわけだ。

人間の悩みというのはアフリカの南東部にいた頃からあったはず。だから世界中に散らばったわけだ。そもそも生きるためには集団行動が必要だった。そうなれば常にストレスがあり、悩みが発生する。

たとえば、



回答



石器時代、縄文時代、弥生時代どれが一番住みやすいかというと縄文時代かもしれないと、思い始めた。といっても、自分で住居を建てることもできないし、猪や鹿を捕まえることもできないし木に登ってドングリを集めることもできない。土器も作れないし、壁に絵も描けないし、火おこしもできない。せいぜい貝拾いと子作りくらいか。

一体、現代人って、なにもの?

鮑(あわび)のし(演:三遊亭小遊三)

2024-12-25 00:00:25 | 落語
登場人物

甚兵衛、お光(甚兵衛の女将さん)、知人、魚屋、大家

甚兵衛は頭が軽く怠け者で、妻のお光に頭が上がらない。知人に50銭を借りてくるように言われる。さらに妻は、甚兵衛に対し、50銭で魚屋に行って「鯛の尾頭付き」を購入して、大家の家で今夜開かれる息子の結婚披露宴のご祝儀として届けるように言う。

めでたい日なので、1円はもらえるだろうから、50銭を知人に返して残りの50銭で底をついた米を買おうと画策。大家に対する口上(こうじょう)を言い伝えるが、甚兵衛の頭には入らない。

よけいな注:「尾頭付き」「読み:おかしらつき」。「お頭付き」と思っていたが、WORD上で「尾頭付き」と変換されて、今までの無知を思い知ることになった。恥をかいたことはないが・・

ところが50銭を借りて魚屋に行くと、鯛は50銭では売れないので、鮑(あわび)三枚ならどうだ、と言われる。(現代では鮑は超高級食材で、それを調理するのも大変楽しい。下記のようにエンタメ食材になる。)


そして、大家邸へ。口上の半分ぐらいは再生できて、大家に鮑を渡そうとするが、突き返される。鮑は二枚貝ではなく、殻と蓋の片身の貝ゆえ、新婚には縁起が悪い!と立腹されたわけだ。そして甚兵衛は魚屋に戻って事の顛末を話すと今度は魚屋が大家に立腹。鮑が縁起ものである考察を甚兵衛に教え、大家の元に送り出すわけだ。


この演目、オチの部分がわかりにくいので、演者によってよく改変されるようだが、まだ定型化されていないようだ。確かに、小遊三師匠の噺でもよくわからず、何か含意があるのかと思ってネットで調べたが、わからなかった。

「鮑をめぐるエトセトラ」と「口上を言い間違えるおかしみ」の二兎を追っているように思うので、「口上間違い」は適当に切り上げ、「鮑めでたし噺」にして、徹底的にハッピーエンドに書き換えたらどうだろうか。

阪急電鉄片道15分の奇跡(映画 2011年)

2024-12-24 00:00:20 | 映画・演劇・Video
作家、有川浩氏の同名の短編小説集の映画化。小説は連作となっているが、映画では全部が合体した一つの映画になっている。そのため、登場人物やストーリーが盛り沢山なので、メモを取りながらの鑑賞がいいかもしれない。

阪急今津線沿線の出来事(社会的には小事件だが、個人にとっては超大事件)が別々に発生しているのだが、最終的には絡み合ってくる。(と書くと悲劇的結末を予想されるかもしれないが、途中で持ち直して「しあわせ系」になっていく。

各種の評判を読んでも書かれていないが、いわゆる「グランドホテル形式」に極めて近いと思う。アメリカ映画で、どこの町でも中心にあるグランドホテルという名前のホテルを舞台に様々な人たちがドラマを展開し、それが絡んでくるわけだ。ホテルではなく阪急電車というのが面白い。

主要登場人物。

翔子:自分を裏切った元カレの結婚披露宴に白いドレスで参加。途中でブチ切れて会場を後にする。

ミサ:女子大生は彼氏のDVで困惑中。

康江:地味な生活だがママ友の会では、いわゆる「関西のおばさん」たちから浮いてしまって胃が痛い。

悦子:受験に悩む。彼氏と同じ大学に行きたいが、高校教師からは「ムリ、ムリ」と言われている。

美帆:女子大生だが地方出身でさらに特殊な苗字なので、劣等感を抱え、友達がいない。

ショウコ:私立小学校で同級生女子からイジメを受けている。

主演は中谷美紀(披露宴に花嫁用の白ドレスで出席)となっているが、たぶんギャラ上のことだろうと思う。それぞれのストーリーの役柄に主役がいるということだが、あえていうと、途中で登場した宮本信子(気の強いおばあさま)と芦田愛菜(その孫)が触媒装置になって、次々に難問が解決していく。(といっても登場人物全員が大喜びに終わるミュージカルのようにはならない。)

ところで、大阪神戸間の鉄道の事情は詳しくは知らないが、北から南にかけて、阪急・JR・阪神と三本の平行線が通っていて、その順に高級、中級、並級となっているということを聞いたことがある。それが本当なら、「阪神電車片道15分の悲惨」という反語的小説&映画があってもいいかもしれない。登場人物は男かな。組織または県警に追われる男とか、二股交際発覚で右往左往とか、今日こそはイジメ男を痛い目に合わそうと凶器所持とか・・

禍(わざわい)の大衆文化(小松和彦編)

2024-12-23 00:00:27 | 書評
うっかり本書を電子書籍を読み始めたら、大変な本だった。まず大著。第一章から第九章に分かれるが、それぞれの章を専門研究者が書いている。編者の小松氏は、序と第三章を担当。他の章はそれぞれの方による。野球でいえば、毎イニング一流投手が得意の球をなげてくるようなもの。文体も違うし、読者に読ませる技術も違う。



さらに、本書を貫くテーマは、古来から日本に押しよせ続けている天変地異などの大災害により、大衆文化に影響があったという研究。読み方を変えれば、大災害で被害甚大の見返りに新しい文化がでてきた、みたいな話にも聞こえる。

もちろん、どう読むかは読者次第だろう。

第一章「疫病と怪異-幕末江戸を中心に」
 黒船来寇の後、日本は当初は攘夷論だったがあっという間に開国論になったのだが、その結果、「コレラ」を中心に、数年おきに大流行がおきていた。有効な薬もないし、そもそもコレラは現代でもコロナどころではないほどの病気。時代的には妖怪がいけないのか外国人がいけないのか、あまびえ信仰や双頭のカラス(ヨゲンノトリ)とか。

第二章以下も個別に列挙しようかと思ったが、心が重くなるような話が多く、元気がないので、対象となる厄災だけを書くので、ご参考に。

「江戸末期に多発した安政大地震」「大火事(文政年間)」「大蛇と法螺貝「鯰絵」「インフルエンザ(スペイン風邪)」「東日本大震災」ということになる。

ロベール・ドアノー写真展

2024-12-22 00:00:09 | 美術館・博物館・工芸品
六本木のフジフィルムスクエア写真歴史博物館で開催中の「ロベール・ドアノー写真展」に行く。

ロベール・ドアノー(Robert Doisneau)は20世紀フランスを代表する写真家。生涯で撮った写真は45万点といわれるが、社員か本人によると、「今まで成功した写真はせいぜい300点。1点が1/100秒とすると、50年間でたったの3秒だ」というところから1979年に完成した写真集には『永遠の3秒』と名付けている。



日本でいえば、土門拳のような人なのだろう。

写す題材はパリの光景。パリにしても東京にしても町の中には様々な被写体がある。写真集にするときに、何を選ぶのかということで主張のある写真集ができるのだろう、と思う。

写真集を作るのは、楽しいだろうと思うが、評価されないと落ち込むだろうが、『永遠の3秒』は発表時には、まったく評判にならなかったが、名作とはそういうことが多い。

新チャレンジャー四人組か

2024-12-21 00:00:11 | しょうぎ
圧倒的強さの藤井聡太七冠への挑戦者グループが変貌している。1~2年ほど前までは、渡辺・豊島・永瀬・菅井という四人組であったが、現在は新四人組に交代したような気がする。

伊藤(匠)、佐々木(勇)、増田、そしてモデルチェンジ後の佐藤(天)。前者二人は対人研究派。後者二人は独創派。どちらかというと、後者二人との戦いを見たいと思っている。


さて、12月7日の出題作の解答。






今週の出題作。9手詰。



わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

初めての大河

2024-12-20 00:00:22 | 映画・演劇・Video
「光る君へ」が終わった。紫式部、藤原道長という歴史上の大人物、かつ関係性があるダブル主役という豪華さから全編見てしまった。大河ドラマ初参戦。といっても45分放送を、35分で見るためにビデオ録画して1.3倍速でみていたのだが。

当初はどういう趣向になるかと思い、史実の上に源氏物語のフィクションを重ねていくのかな(ドラマ・イン・ドラマ)とか想像していたが、源氏物語の内容には突っ込んでいかなかった。

王朝ドラマは、隣の半島では大人気だが、日本の宮廷が華やかだった時代は短く、今回はその期間が選ばれたわけだ。

おかげで今春には、石山寺、蘆山寺(紫式部生家跡)、鞍馬寺、上賀茂神社、下鴨神社、三井寺、紫式部墓所をめぐり、当時の御所や土御門邸との距離感覚など実感することができた。

よく言われるが、○○ロス。特に最終回では総計8人もが逝ってしまったが。個人的には、最大のロス感は中盤で現世から退場していった安倍晴明(あべのはるあきら 演:ユースケ・サンタマリア)。「はるあきらロス」。当時の都は、数多くの謀略が渦巻き、それらの成仏できない情念が渦巻く世界で、また天変地異も数多く、晴明の仕事は大忙しだった。都を襲った大旱魃の解消と交換に天に与えた道長の寿命10年分の結末が最終回で押しよせてきた。ロス復活気味。

ところで、今回のような題材、もうないのかな。たぶん。

ホンダとニッサン

2024-12-19 00:00:17 | 企業抗争
ホンダとニッサンの合併が検討されているようだ。何か画期的なことが起きそうな感じがしない。もちろん鋼材の購入交渉力などは上がるのだろうが、車種を統一するほどの種類はないだろうし、国内販売車のウインカー位置だって、ハンドルの右(ニッサン)、ハンドルの左(ホンダ)と異なっている。どちらかに統一したら販売台数が減るだろう。

目下の大問題のEV車の問題は、「バッテリーの能力」と「充電個所の拡大」であるが、どちらも二社が合併して改善するわけでもないだろう

そして、大問題は「経営陣」。特に「社長(CEO)」。ホンダからはプライベートジェット1機、ニッサンからは、クルーザー(まだ持っていれば)1隻を献上して、給料は10年契約で1000億円として97%は後払いにするパッケージを提示して、外国人社長をスカウトしてこなければいけないだろう。

包帯クラブ(天童荒太著)

2024-12-18 00:00:21 | 書評
『包帯クラブ』
本作は2007年に発刊されたときは、登場人物と同年代の中高生向け限定作のように受け取られていたらしいが、2009年に映画化されたときはキャストの実年齢が少し上だったこともあり大人の入り口あたり向けと思われていたようだ。が、読んでみると、読者層はずっと広がってしかるべきという感じがある。人間は社会といくつかの輪でつながっていて、それぞれの輪には人間関係が存在する以上、少なからぬ摩擦熱が生じているわけで、そういった大中小の心の傷をどうやっていやすかというのは原始時代以降、人類の宿命のわけだ。



当初は少人数のグループで、心の傷を癒すために、心の傷を受けた場所に行って、そこに包帯を巻いてくるという儀式に発展。そのうち、ネット上で心の傷を持った人からのお願いを受付けて、包帯を持って町の中を歩き回るわけだ。(まるで、神主様のお祓いみたいだが)

そして、町のあちこちでハタハタと白い細布が風にたなびき始め、ついに公権力が乗り出してきた。

包帯というのが、いささか世間受けしないのかもしれないが、ペンキを塗るとかは重大犯罪だし、神社の絵馬に書かれる欲望は実利的過ぎるし、何よりも心の傷は発生原因が複雑なことが多い。「文字おこし」するのはなかなか難しいものがある。包帯は名案であったが、バンドエイドなら活動にもっと永続性があったかもしれない。

なお、出版元の書籍紹介コピーは以下
多くの人が日々生きていく中で癒えない傷を抱えている。そんな彼らの心が少しでも軽くなるようにと願いを込めて結成されたあるクラブ。そのクラブを通して感受性豊かなティーンエイジャー達は仲間と共に喜び、哀しみ、傷つき、多くの事を知り、学んでいく……。日常を生きる中で確かに存在する傷にどう対処するか、繊細でありがならも、あたたかく、そして力強く描かれる、希望と再生の物語。

映画配給元の紹介コピーは以下
大切なものが少しずつ失われていく毎日に、嫌気がさしている女子高校生のワラ(石原さとみ)は、ある日、病院の屋上のフェンスを乗り越えようとする。そのとき、奇妙な関西弁を話す入院患者の少年ディノ(柳楽優弥)が、突然ワラの前に現われる。手首に傷を負ったワラの心の傷を見抜いたディノは、ワラの手首からほどけ落ちた包帯をフェンスに結び付け……。

質屋芝居(演:桂米團治 落語)

2024-12-17 00:00:12 | 落語
ちょっと現代離れしている噺なので、どうなのかな。特にオチの部分がわかりにくい。あるいはまったくわからない人もいるかもしれない。さらにいうと、「質屋」という業態を知らない人も多いと思う。現在、日本国に生存している人間のうち何パーセントの人が質屋をつかったことがあるだろうかという根本的問題を感じる。一方で、ときどき、「質流れ品大即売会」とかやっているので、やはり質屋は重要な金融手段なのだろうか?

舞台は大阪の船場。質屋へ「裃」(和服の上下一式)を質草に入れた客が、急な葬式ということで、質札を持って受けだしにきた。丁稚の定吉が所蔵の蔵に取りに行くと、蔵の近くの稽古場から歌舞伎役者の声が漏れ聞こえる。芝居好きの定吉は何を考えたか、客に渡すべき「裃」を蔵の中で羽織り、忠臣蔵の役を始めて、興にいっていた。

さらに、別の客が、布団を受け出しに来る。こちらの質草も蔵の中で、今度は番頭が蔵に向かうが、縦縞の柄の掛布団は歌舞伎の舞台背景に最適と思い、番頭まで布団を壁に釘で打ち付け布団に穴をあけてしまう。歌舞伎遊びが二人がかりになり、本格的になってきた。さらに主人まで加担して、蔵の見張りを始める。

一方、客の目的である葬儀はすでに始まってしまっていた。客たちは、蔵に向かって中を覗こうとするが、中に入ろうとすると、見張りをしていた主人は、「木戸銭を寄こせ」と、急に金貸し根性が現れる。

客は、「さっき札を渡している」と言い張るわけだ。

札というのは質札のこと。オチてないような気もするわけだ。この後、どうするの・・・

と、だれでも思うだろう。