「ディズニーランドの経済学」書の中に苦み

2012-11-07 00:00:11 | 書評
disneyこと東京ディズニーランド(TDL)について書かれた本は何ダースもあるのだろうが、そのほとんどは経営学的、あるいはマーケティング的、社員教育的、CS的、・・的、・・的、・・的に褒め称えたものばかりだ。もちろん、中には批判的なことを考えている人も相当いるのだろうが、そういう意見は、決して活字にならないはず。

で、それらの分析本のはしりの頃に書かれた本著(粟田房穂、高成田享共著)も、90%は、TDLの戦略の前にひれ伏しているのだが、わずかに本質的な批判精神が生き延びている部分があった。

「現代の祭り」に酔う人びと、という一章の中に「影のない世界」という一節があり、その中で、あまりに清潔で夢のような空間は非現実的、とか、予定調和的世界であることが、現実の世界と異なる、というように述べられている。もちろん、入園者はキャラクターたちが何をやってどういう結果については知っている。TDLが提供するのは、キャラクターたちが演じて完結するプロセスだけである。

もちろん、それは真実であり、ある意味、ディズニーランドの欠点なのかもしれない。千葉県浦安市の「ある空間」にかなり高い柵を作り、そこの中にいる時間だけは非現実的な世界に浮遊することができるがシンデレラ姫のように決められた時刻が来れば、嫌でも閉門になる前に慌ただしく帰らなければならない。

そういう意味では、同じく塀に囲まれた別の空間である「刑務所」と、ほとんど似ていて、非なる場所なのかもしれない。両者とも、塀や柵によって外界から遮断された非現実の世界である。一部を除けば、刑務所の住人も、いずれ外の世界の戻ることになる。方や、居心地のいい世界で、方や、居心地はかなり悪いが食事付きだ。

食事の付いていない方は、中に入るのも食事をするのもおカネを払う必要があるが、食事付きの方は、おカネを盗むと入園することになる。


PS:ディズニーワールドにある歴代大統領をテーマとしたプレジデントホールだが、日本でも総理大臣ホールとか、案外いいかもしれない。結構、型破りで個性的な首相もいる(もちろん任期1年未満は権利なしだ)。