神去なあなあ日常(三浦しをん著)

2012-11-14 00:00:06 | 書評
今や、本を書けば次々に印刷所を残業の山にし、出版社や書店員が山積みの本の重みで腰痛を患い、著者の印税振込み銀行の行員は、各種お勧め金融商品を考え出すというプラスサイクルの中にいるのが、三浦しをん女史である(少し前は、あさのあつこ女史がそうだったし、もう少し前は、・・・・)。

書店員が腰痛にならないように、文庫本になっている『神去なあなあ日常』を読んでみた。

kamisari


さらに言うと、「お仕事系小説」である。林業。

実は、小説の面白さもあるのだが、自分の何代か前の御先祖が田舎に小さな森を持っていて、そのうち、その森をどうするか考えるべき時がくるはず。早い話が、まったく思いつかない。小説でも読んで参考にしようかというような邪心もあった。

まず、その邪心のことだが。何の参考にもならなかった。ようするに超巨大な数百ヘクタールもあるような山林地主でないと、現代日本では話にならないわけだ。その上、独自のビジネスモデルが必要なのだが、数十年サイクルのモデルになるため、現在の素晴らしいプランが、遠い未来にうまくいくのかどうか、よくわからない。


まあ、そういう超ロングタームな仕事に、横浜出身の若者が飛びこんでいった(というか、押し込まれた)わけだ。(それを読む私が、横浜にいるのは妙だが。)

それで、新米が林業の村に入って行って苦労の連続を体験するというのは、よくある話で、そういう意味では、よくある話を書いて読者に読ませるというのは実際には難しいのだが、筆致を極めてあるので、割に素直に読める。

そして軽い恋愛空気が流れるのだが、結論が出る前に本書はクローズとなる。さらに俗に堕ちるからだろう。

まあ、このお仕事系の流れの先に「舟を編む」もあるのだろうが、ちょっと作者に期待する方向とはずれているような気もしているのだが。