馬琴の食卓(鈴木晋一著)

2011-11-22 00:00:03 | 書評
bakin食文化の歴史の話だが、書名のように馬琴の食卓を通して江戸の庶民の食文化を推し量ろうというような本ではない。馬琴の話は16話ある中の一つである。江戸時代だけじゃなく平安時代の話もあれば明治の話もあり、さらに数十年前の話もある。

それに、「馬琴の食卓」というのも変で、「馬琴の卓袱台」なのではないかと、ちょっと思った。


そして、滝沢馬琴の話だが、結構、ケチだったようだ。旬の魚はマグロだってカツオだって食べているが、一本買じゃなくて、いつも半身を買っているようだ。旬の魚を買うのに半身とは、なんかさえない。そして、そのせいか、滝沢家では、妻にも子供にも先立たれ、目がかすんでは高額な眼鏡に頼り、歯が抜ければ高額な入れ歯に頼りと、まあ、最後は人生を完全燃焼させて亡くなったようだ。葬儀のあと盛大な宴会が行われたようだ。

次に伊藤若冲の奇想画『野菜涅槃図』。60種以上の珍しい野菜が描かれている。現代人でもおめにかかれない希少な野菜の絵を、鎖国中の日本で若冲が描けたのは、なぜか。もちろん、実家が八百屋だったからなのだが、世界の食材を日本に取り寄せるとは、グルメ民族だったのだろう。

そして、時代は、ずーーと下って、菓子パンのこと。まず、「甘食(アマショク)」。アポロ宇宙船に形が似ている。由来はよくわからないが、食パンの対立軸として発生したらしい。にわかには信じられないが。

そして、あんパンについて。小倉とこしあんだと、昔は、小倉の方が高かったそうだ。価格の順だと、小倉>クリーム>うぐいす>アマショク>こしあん、だったようだ。カレーパンの登場は、もう少し現代に近い。