シージャックされかねないイージス艦

2008-02-22 00:00:43 | 市民A
イージス艦『あたご』は、なぜ事故回避できなかったか。



日本は以前、海洋王国だった。今は違う。そのため、元船員の多くは陸上に上がり、職種替えをしている。そのため、今回の事故についても、大方の予想をつけている方が多い。もちろん情報は、真偽不明のまま、意図的にリークされたり隠されたりしているが、大破した清徳丸に二隻の僚船がいて、正確な位置関係が明らかになるにつれ、海自が当初公表した事実の矛盾が表面に浮かんできた。視認時期も当初衝突した04時07分の2分前と言っていたのが12分前というように変わっている。

誰しも400キロも上空のミサイルを捕らえる能力のあるイージス艦に、電子的な航行記録がないなどとは信じないだろうし、場合によっては船橋(せんきょう)内の会話の録音も残っているのではないだろうか、とも思うわけだ。



そこで、実際に、過去に航海士だった二人の方に、事故のポイントを聞いてみた。

1.現場までの航路が遠因ではないか
 『あたご』はハワイ沖から横須賀に向かっていたのだが、最短コースの場合、かなり北回りのコースをとるはず。遊び半分で暖かい南側のコースをゆっくり走っていたのではないか(想像)。日数もかかり、燃料も多く必要になる。そして、ずっと暖かい海にいて、急に2日ほど前から北上を始め、冬の海域に入ったため、注意散漫だったのではないか。

2.船橋内に10人もいたこと
 通常の商船では見張りは2人。狭い海峡とか通過する際は臨時に3人。10人とは多すぎる。360度監視するとすると、一人の受け持ちは36度ということだが、人間の視界とはまったく異なる。夜間はレーダー監視が基本なので、多くても意味がない。また報道を見ると、見張りの者は、何か発見した場合、操舵管を持った士官に報告し、士官が舵を切ることになっていたそうだが、緊急の場合に船橋内でそんなことしていたら間に合わない。

3.視認時刻の差には大きな問題が隠れている
 当初事故発生時間04時07分の2分前(04時05分)に視認した、といっていたが12分前(つまり03時55分)に視認したように変わってきた。しかし、そうなると、大きな問題がある。『あたご』では10人ずつ3チーム(つまり計30人)にわけ、4時間毎に操船を交替していた。0時から4時、4時から8時、8時から12時・・・と一日を6つに刻み、4時間交替。となると、最初に視認した3時55分というのは前のチームの見張りが見つけた時間である。となると、交替時に紙や口頭でその船の存在の引継ぎを行うか、あるいはその当該船を交わすまでは前チームが受け持つのが普通である。引継ぎが行われていなかったのではないだろうか。

4.なぜ10ノットだったか
 本当に10ノット(時速約18.5キロ)かどうかも、GPSの調査で判明するだろうが、遅すぎる。軍艦の性能は不明だがおそらく30ノット(約55キロ)は軽くでるだろうと思うわけだ。ではなぜ10ノットか?一つの理由は、本当は10ノットではないという可能性がある。これも科学的調査で判明するだろう。もう一つは『時間調整説』。いずれにしても2~3時間程度で横須賀到着ということで、6時に朝食の予定だったそうだ。朝食のあと、横須賀入港で下船?こうなると、交替した前のチームは、各人、下船準備のために私物をスーツケースに詰めたりするためあわただしく、引き継ぎもおろそかにしたのではないだろうか。また事故の7分前に交替勤務に入った10人は、明るい部屋で荷造りをした直後に当直に入り、暗い海に目が慣れていない状態だったのではないだろうか。いくつかの商船会社は引継ぎ5分前昇橋を実施している。

5.軍艦は避航しないもの
 そもそも、軍艦は衝突を避けたりしないもの、というのが相場になっているようだ。軍艦が近づくと、民間船の方が避けるそうだ。今回は清徳丸が『あたご』に気付くのが遅れたために接近してしまったが、要は軍艦は操船が下手だ、ということ。実際に第二次世界大戦中は多くの民間船が民間船員ごと徴用され、軍人を乗せたまま多くが撃沈されている。軍人の多くは民間人を船に残したまま、先に救命ボートで逃げたため、戦死者の比率は圧倒的に民間人側に多く、その割、千代田区の神社には祀られない。

6.事故直後、適正な対応だったか
 説明では、事故の1分前に後進(アスターン)に切り替えたが、減速が間に合わなかった、とされる。後進というのも、プロペラを逆回転させる方法と、回転はそのままで複数の舵を組み合わせる方法があるが、いずれにしても事故後はプロペラに人が巻き込まれないように回転を止めてしまう。そして船上にある救命具などをぼんぼんと海に放り投げ、遭難者がとりあえずつかめるようにし、一旦現場から離れたあと、向きを変えて戻ってくる。どうも、この救命具をつかった形跡はないし、なにしろ船はすぐに横須賀に向かったのである。

7.無保険と思えるが・・
 例えば、連日捜索を行っている漁協の船60隻なども、ただではないわけだ。休業保障で大きな金額をいわれる可能性がある。もちろん軍艦を加盟させてくれる保険会社があるとは思えない。今後、全額、国家負担となるだろう。

8.海賊船が現れていたらどうなるか
 当初、小さな船がすぐ近くに接近したらレーダーで見えないというような話があったが、もともと、レーダーは2台以上はあるはず。ロングレンジとショートレンジの二種に使っていればいいはずだ。それに、戦闘に入ったり、海賊が現れたりした場合、多くは高速の舟艇で近づいてから攻撃するはずである。接近してきても、『気付かない』では、遠からずイージス艦そのものをミサイルともどもシージャックされる可能性すら感じるのである。