経済産業事務次官の思惑は・・

2008-02-20 00:00:57 | 市民A
経産省次官が、デイトレーダーのことを競馬・競輪をやめて市場に来た、という趣旨の発言をしたことを今さら批判しても出し遅れの証文みたいなので、たまたま現在発売中の雑誌『財界』に北畑隆生次官の意見記事があったので読んでみたのだが、まあ、偉大な勘違いという気がした。(財界の表紙に登場しているのは任天堂の方であり、次官とは無関係)



実は、ギャンブラー発言の時の講演も、テーマが「会社は株主のものか?」ということだったそうだが、それについて彼の意見が詳しく書かれている。といっても別に新しい考え方ではなく、普通の経営学の本によく書かれていること。

要約すると、法律上は会社は株主のものとなっているが、労働者を含めて会社を丸ごと買い、解体して転売するというようなことについて、所有者は責任があるはずだ。経営者や労働者は30年以上会社と運命をともにしているのだから、会社は、株主・経営者・労働者・取引先といったステークホルダーのものである。ということが書かれている。

実は、この考え方は一般に「ステークホルダー・キャピタリズム」と言われ、大陸系のドイツ・フランス的考え方で、英米系の考え方である「シェアホルダー・キャピタリズム」とよく対比されるわけだ。日本は従来はもっと関係者多数のステークホルダー・キャピタリズムに陥っていて、前述の株主・経営者・労働者・取引先に加え、銀行、労働組合、各種役所、OB会とかそれぞれ相矛盾する関係者に取り囲まれ、にっちもさっちも行かなくなり、例えば日産自動車やカネボウみたいになってしまったわけだ。

それと、「会社を買ってから解体して切り売りする」ことを否と言いたいようだが、日本の産業全体が数十年にわたって相似形で拡大したならばともかく、成長分野や衰退分野があって経営資源の移転を行いながら会社経営が行われているわけで、廃れた産業分野を整理するのは当然であるだろう。さらに、次官ともあろうものが、「経営者と労働者」という言い方をすること自体、違和感があるわけで、労働者と話したこともないだろうし、どうしてその気持ちがわかるのだろうと言わざるを得ない。ダメ経営者を冠する企業の従業員であれば、『外人経営者の方がいい』と言う声も聞こえるだろう。

そもそも英米系が嫌いなようだが、日本の産業構造はまさに米国的であり、ありとあらゆる分野に展開しているわけである。欧州ではEU化が進むにつれ、国別分業化に向かっているようだが、日本がそうなるかどうかよくわからないが、少なくても日中韓台分業構想などに賛成する人はいないだろう。つまり英米系と大陸系の中間より英米系に近いところにスタンスを置くしかないのである。

さらに言えば、いまや経産省は補助金をばらまくこと以外に目的があいまいな役所になってしまったのだが、一見好調に見える日本企業の業績も、連結決算で海外子会社の利益によるものが多く、結局、日本の本体企業の従業員の賃金に回す必然性がない、ということになるわけだ。


さて、北畑氏は『財界』の中で、日本は代替エネルギー開発で世界に貢献できるはず、と書き、石炭液化技術は原油価格40~50ドルで採算に合い、カナダのオイルサンドは60ドルで採算に合う。原油価格が90~100ドルというのは投機マネーに押し上げられていて、実際は60ドル以下が適正であると言い続けている。と書いてある。

しかし、60ドルの時期はあっという間に終わり、40ドルからいきなり80ドルくらいになったわけだ。60ドルが妥当なんて意見は聞いたことがないのだが、本当にいい続けていたのだろうか。さらに、実際、投機マネーではなく実需として90ドル以上の原油がどんどん売れているわけで、「ガソリン値下げ」というようなことを言う先進国はない。日本が貧乏になったというだけのことと考えた方がいい。なにしろ15年ももたもたしているわけだ。

さらに、石炭が40ドル(たぶん原油換算で、という意味だろうが)というようなことはありえないのであり、原油価格に連動して、石炭や天然ガス、さらにウラニウムの価格なども上昇していくのは間違いないところである。エネルギーの世界には、カロリーパリティという概念があって、同一カロリーを得るための燃料価格は均衡していくという考え方である。だいたい、日本国内でも石炭液化など行われていないのにどうして他国で協力できるはず、などと考えるのだろうか???


ところで、この次官は何年か前に、定年退官後はスペインに移住して余生を楽しみたい、という意味のことを言われたそうなのだが、スペインに住む、というのは、主に2パターンである。一つは、マドリードかバルセロナといった都会に住んで、「闘牛」と「オペラ」と「サッカー」にのめり込むというアクティブライフ。もう一つは、いわゆる太陽海岸地域(コスタ・デル・ソル)という地中海の保養地で過ごすスティルライフである。各種発言から類推すると、おそらく次官のご希望はコスタ・デル・ソルではないかと想像する。

実は、贅沢にも、その海岸に1週間ほどブラブラしていたことがある。コトバはなんとかなる。5つ位知っていれば十分。ウーノ(1)、ドス(2)、アミーゴ(ともだち)、アディオス(さよなら)、そしてバル(飲み屋)である。バルに行って片言のスペイン語と英語を組み合わせていれば10%くらいは意味が通じる。ところが、バルにいるのがスペイン人と日本人だけなら気付かないのだが、そこにアメリカ人とかドイツ人がやってくると感じるのが『人種差別』。スペイン人>ドイツ人>アメリカ人>日本人というような序列を感じてしまうわけだ。

また、日本人の移住については、公的年金手帳をスペイン国に預け、振り込まれたおカネから、税金等各種必要経費を天引きすることになっているらしいのだ。つまり年金を受け取るまではスペインには行けないらしいのだ。

さらに、本場のスペイン料理は、確かに旨いのだが、1週間すると、料理が一巡してしまうわけだ。