アイムソリー法

2008-02-25 00:00:02 | 市民A
『Excuse me』と『I'm sorry』。似ているのか、似て非なるものなのか。これは難しい問題である。エレベーターの中で後ろの人の靴を踏んだ場合、たいていはExcuse meだろう。誰かに押されて、自然と足を踏んでしまったという感じだ。しかし、踏んだ足がイメルダ夫人で、100万円の靴だったらそうはいかないかもしれない。いや、それこそ『I'm sorry』とは言えないかもしれない。また、止まっている車に後ろから追突して、『Excuse me』というのも難しい。

要するにsorryというと自分に非があるように思われるので、後々法廷闘争になると不利になるということが、頭に反射的に浮かんでくるわけだ。実は、『Excuse meとI'm sorry』と検索サイトで調べると、その用例の差が色々と書かれている。

おおざっぱに言うと、「Excuse me=すみません」「I'm sorry=ごめんなさい」という感じで、発言する側からすると、謝罪の気持ちがあるかどうかということになる。

客観的には、偶然的なできごとで、自分に非がないのに迷惑をかけたらExcuse me で、自分が悪ければI'm sorryというわけだ。

また、もっと徹底して、100%自分に非がある場合のみ、I'm sorryと言う、という意見もある。しかし、100%というのはなかなか考えにくいので、どんな悪人でも法廷に出てくれば、「社会が悪い」とか「こどもの時の環境が・・」「会社でいじめられて・・・」「日頃から体調が悪く・・・」「もともと二重人格で、もう一人の私が犯罪を・・」というように、情状酌量を狙って、『100%悪いわけではない』、という言い訳が登場する。

そして、問題は世界最高の法治国家である米国の話。最近、アイムソリー法というのが多くの州(29の州、4つの州は検討中)で成立しているそうである(ミレア損保情報誌より。原典は07年4月30日、ナショナル・ロー・ジャーナル)。これはアイムソリーを言ったものを捕まえるための法律ではなく、まったく逆の話。そして適用範囲は医療過誤訴訟のこと。

どういうことかと言うと、患者が不幸にして手術(治療)中に亡くなった場合など、遺族に対して、思わず「I'm sorry」とsorryの本来の意味である哀悼の念を伝えたりすると、そのアイムソリーを逆手に取られて、裁判で高額補償を求められたりするので、現在は、めったなことではsorryと言わないわけだ。(かわりに、どういうのかよくわからない。”He was dead.”とか言うのかな。これでは、手術前から死んでいるような感じだ。)

そして、実際には、医者がソリーと言わないがために遺族が感情的になって、訴訟が多発する原因になっているそうだ。

そのため、アイムソリー法では、アイムソリーと言っても、それが証拠にはならない、という法律なのだそうだ。

要するに被告側(医師)に有利な法律ということで、原告側(遺族)が反対している点は、

 1.もともと、アイムソリーだけでは勝てるわけない。証拠が必要なのだから。
 2.アイムソリーの後に続いて出た医師の発言まで証拠能力がなくなるのはおかしい。
 3.アイムソリーで原告の勝率が高い、ということは証明されていない。
 4.陪審員への印象はアイムソリーと言っておいた方が良いのではないか。

ということだそうだ。

しかし、いずれにしても米国では、医療過誤訴訟のほとんどは医師側の勝利に終わっている、というのが事実だそうだ。


本当のアイムソリーの念は、実際に冒した医療ミスを、腕利き弁護士の活躍によって勝訴で乗り切った後、医師の心の中に、つかの間わき上がって消えていく悔悟の一瞬だけなのかもしれない。

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