「ハンギョレ」 2023年04月18日 07:25
■韓国大統領室はどのようにしてCIAに盗聴されたのか
[ザ・ファイブ:The 5] ホワイトハッカーがみた「大統領室盗聴」疑惑
【写真】ソウル龍山大統領執務室=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社
「時間はないが、興味がないわけではない」。 生活に追われて忙しく、ニュースを見る暇もないあなたのために用意しました。 ニュースが教えてくれないニュース、見れば見るほど気になってしまうニュースを5つの質問に盛り込みました。 The 5 が尋ね、記者が答えます。
盗聴、通信傍受、ハッキング、米中央情報局(CIA)…。 スパイ映画にでも出てきそうな言葉で韓国の政界と世論が話題沸騰中です。 米国が韓国大統領室を盗聴したというCIAの機密文書が公開されたことをめぐる騒ぎですが、その文書には韓国大統領室の国家安保室が「ウクライナへの砲弾提供」という米国の要求を受け入れるかどうかについて話し合った内容が含まれているようです。 CIAはどのようにして韓国大統領室を盗聴・傍受したのでしょうか。 サイバーセキュリティ業界で働く「ホワイトハッカー」Aさんに聞いてみました。
[The 1] 韓国の国家安保室の対話がどうして米国に漏れたのでしょうか。
ハッカーA:様々なシナリオが考えられますが、その中でも当時国家安保室で勤務していたキム・ソンハン国家安保室長とイ・ムンヒ外交秘書官が使用する個人用携帯電話やパソコンをハッキングした可能性が最も高いと思います。 今のハッキング技術は、携帯電話所有者の「助け」なしでもハッキングが可能なほどになりましたからね。 一般人が多くやられるスミッシング(Smishing:ショートメッセージをターゲットにしたフィッシング)は、携帯電話の所有者がリンクをクリックしなければなりませんが、盗聴や通信傍受のためのハッキングにはそのような制約がありません。 ハッキングされたら、その携帯電話は盗聴器になるのです。
[The 2] 国家安保室長のような政府関係者はセキュリティ水準が非常に高い「秘話フォン」(秘密対話フォン)を使うと言われています。 それでもハッキングできるんですか。
ハッカーA:ちろんです。 すべての情報が暗号化されて送信される秘話フォンもハッキングできます。 秘話フォンも既存のスマートフォンで作るものですから。 高官級の方がむしろセキュリティに脆弱になる可能性もあります。 大統領室のセキュリティ担当者は、大統領室の一般職員と大統領のどちらにもっと徹底的にセキュリティ規則を守るよう求めるでしょうか。 出入りする際、安保室長に対してセキュリティ検査を徹底的に行うことができるでしょうか。 安保室長のような高官が個人の携帯電話を比較的自由に使いながら、セキュリティ規則を守らなかった可能性があります。 ハッカーはこのような隙を狙っていたのかもしれません。
【写真】11日、大統領室前で全国民衆行動が米国の盗聴・傍受を糾弾する記者会見を開き、パフォーマンスを行っている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社
[The 3] 野党は大統領室を龍山(ヨンサン)に移して盗聴の危険性が高まったと主張しています。 米軍基地と塀を一つ隔てて隣接していますからね。
ハッカーA:アンテナ信号増幅器で信号情報をつかんで聞く方式の盗聴・傍受は距離が重要です。 当然以前より簡単になったと思います。 大統領室システムへのハッキングの可能性も依然としてあります。 キム・ドギュン元首都防衛司令官が「(大統領室に近い)国防部と合同参謀本部は、米軍との合同作戦を遂行するために多くの有無線ネットワークを維持するしかない」と述べたことがあります。 それを聞いて心配になりました。
内部ネットワークがつながっていれば、米軍側がこの経路を通じてハッキングした可能性も考えられます。 その場合はここにつながっている大統領室内部の監視カメラ(CCTV)やコンピューターまでハッキングが及ぶ可能性があります。 最近のCCTVはマイクがつながっているので、誰が何を言ったのか全部聞くことができます。 龍山大統領室には2カ月程度の工事で入ったので、おそらくちゃんとしたセキュリティ上の措置は取れなかったでしょう。
[The 4] 盗聴・傍受をする他の方法もありますか。
ハッカーA:最近は「ゴーストタッチ」というハッキング機器があります。 机の下にこれを設置すると、他の人が机の上に置いた携帯電話をコントロールできます。 ゴーストタッチがターゲットにしているのは、相手の携帯電話のタッチスクリーンです。 電磁波を発生して、ハッカーが意のままにタッチスクリーンを操れるようにします。 その後、悪性コードが含まれたリンクをハッカーがクリックすればハッキング完了。 携帯電話は完全にハッカーの手中に収まります。 携帯電話の所有者がそれを持ってどこかに行っても、ハッカーはこっそり通話も盗み聞きすることができます。 メッセージのやり取りも見られます。
[The 5] ハッキングをするには、プログラムが重要だと思いますが、それはどこで手に入れるんですか。
ハッカーA:世界中でセキュリティ専門家が携帯電話やパソコンの弱点を見つけ出し、攻撃できるコードを販売しています。 銃や大砲のような「サイバー兵器」なんです。 これを政府機関が買い取ります。 このようなマーケットを「ゼロデイ」(0-day)市場といいます。 もちろん情報機関が直接作る場合もあります。
キム・ジフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-04-15 22:17
「ハンギョレ」 2023-04-17 08:11
■[寄稿]民族を捨てた尹錫悦政権と民族抜きの国益
ユン・ホンシク|仁荷大学社会福祉学科教授・ソーシャルコリア運営委員長
3月16日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は日本の岸田文雄首相と東京で首脳会談を行った。 「大韓民国大法院(最高裁)」の最終判決を「大韓民国大統領」が無力化して12年ぶりに開かれた会談だった。 尹大統領は支持率が1%になってもすべき仕事はするといった。 韓国が先にコップの半分を満たせば「日本の誠意ある呼応によってコップが満たされるだろう」と公言した。 だが、そんなことはなかった。
日本政府は、日帝が犯した反倫理的な犯罪行為に対して、儀礼的な謝罪さえしなかった。 さらに、岸田首相は、強制動員被害者を「旧朝鮮半島出身労働者」と呼び、強制動員があったという歴史さえ否定してしまった。 代わりに岸田首相は「金大中‐小渕宣言(日韓パートナシップ宣言)と歴代内閣の歴史認識を継承する」と語った。 「過去の歴史に対する痛切な反省と心からのお詫び」をするという小渕恵三元首相の談話を継承するということだが、それはまた、韓日慰安婦合意後の「日本軍慰安婦を戦争犯罪に該当するものと認めるのではない」「これ以上謝罪しない」といった安倍晋三元首相の歴史認識もまた継承するということだった。
「私が君を困らせたことは申し訳ない。だが、すでに謝ったし、事実は私の過ちではないので、もう君に謝らない」という詭弁だった。 首脳会談は少しの罪悪感もなしに傲慢に下を見下す加害者を前に、被害者がひざまづき頭を下げ和解をもの乞いする侮辱的なものだった。 国民のために仕事をするよう選んだ大統領が、国民に侮辱感を味わせたのだ。 韓国の保守が建国と産業化の英雄としてあがめる李承晩(イ・スンマン)元大統領と朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の核心となる統治理念は、日帝に「侮辱」させられた民族の傷を想起させる民族主義だったという点で、今回の首脳会談は奇異だった。 李承晩は、親日勢力の絶対的な支持で大統領になったが、日本に対する強硬な立場を守ることによって自身の権威主義統治を正当化した。 朴正煕、高木正雄は「忠誠をつくして日本に報い、犬のように忠誠を全力投球することを誓う」満州国の将校だった。 だが、軍事クーデター後の朴正煕も、民族が受けた侮辱を絶えず喚起し、国民を経済開発に動員した。
そうした保守がついに民族を捨てた。 権威主義は1987年の民主化によって戻ることができないものになり、これ以上の高度成長は不可能であれば、韓国保守に残ったものは新自由主義と反共主義だけだ。 尹錫悦政権が語る国益があるところだ。 新自由主義の観点で保守が民族を捨てたというのは、国益がこれ以上、誰のためのものなのか問わないということだ。 民族が消えた時、保守にとって国益は、投資した分だけ能力に応じて利潤を配分する問題であるためだ。 尹錫悦政権が、力がある者や持つ者のために仕事をする理由だ。 民族は、韓国の保守が同じ民族という理由で国民全員のために献身しなければならない最後に残った名分だったためだ。
また、保守が民族を捨てたということは、尹錫悦政権が平和の代わりに対決を選択したことを意味する。 朝鮮半島の北側に住む人々は、もはや、私たちとともに平和に生きていかなければならない同じ民族ではないのだ。 北朝鮮が力で制圧しなければならない敵になる時、交流と協力を通じて平和体制を作りださなければならないという要求と行動は、すべて利敵行為になる。 尹錫悦政権が、韓米日同盟にすべてを賭ける理由だ。
そうだ、もしかしたら、「民族」はより良い未来のために私たちが捨てるべきである旧時代の遺物なのかもしれない。 実際、歴史は民族の名で強行された数多くの暴力であふれているためだ。 日帝強占期(日本による植民地時代)の間に強行され続けた朝鮮人に対する暴力的な民族差別と解放後に数十年間続いた独裁は、それを証明する。 だが、民族を単に古い遺物と近代に作られた「想想像の共同体」として片付けことはできない。
フランスの社会学者ブルデューが語るように、未来を作りだす力の源泉が日常で累積され構成された感情であるならば、民族(感情)は、私たちがどうするかによって、私たちが隣人とともにより良い未来を作りだす動力になりえるためだ。 民族は、韓国の産業化と民主化を追求した強力な力であったし、朝鮮半島に平和を定着させ、より良い世界のための社会的連帯を作りだす力になりうる。 私たちが捨てるべきである民族は、自分たちと違う人を排除し暴力を振る民族だ。 民族を捨てた尹錫悦政権から、私たちすべてのための国益が消えているわけだ。
ユン・ホンシク|仁荷大学社会福祉学科教授・ソーシャルコリア運営委員長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-04-17 02:41
「ハンギョレ」 2023-04-15 11:15
■日本の賠償は肩代わりの尹政権、米政府の盗聴にも「太っ腹」理解?
米国情報機関のウクライナ戦争に関する機密など100件あまり流出
米政府が認めたのに韓国政府「悪意を持ってやったという情況なし」
米国の情報機関が作成したとみられる100件あまりの機密文書が流出した。 「春季大攻勢」を準備中だったウクライナ軍当局が急きょ作戦計画を全面修正するほど、その内容は具体的だ。 同盟国と友好国に対する米情報機関の盗聴・通信傍受をうかがわせる内容も含まれている。 対象国には韓国も含まれる。 にもかかわらず大統領室は「龍山(ヨンサン)の大統領室に対する盗聴・通信傍受疑惑は根拠のない偽の疑惑」だと語った。 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権特有の「太っ腹外交」であり、米国に対する「無限の信頼」の典型だと言える。
◆ディスコード・ユーザー掲示板が発端
今回の文書流出事件は、2010年のウィキリークス、2013年のエドワード・スノーデンによる暴露とは根本的な違いがある。 まず、文書流出の目的。 ウィキリークスの暴露は、イラクに派兵され、現地で民間人虐殺事件などを目撃した米軍の情報分析官チェルシー・マニングの公益情報提供から始まった。 米国中央情報局(CIA)などに勤務していた技術専門家のスノーデンも、国家安全保障局(NSA)が全世界に対して無差別な盗聴・通信傍受活動を行っていることに怒り、関連資料の一切を公開した。 文書の性格も異なる。 両者とも長期間にわたって作成された包括的な内容であり、作成からかなり経過してから流出した。 今回は状況が全く異なる。
「ネコの首に鈴をつける」という寓話から取った「ベリングキャット」という名でオランダのアムステルダムを基盤に活動する探査報道専門メディアの2023年4月9日の報道によれば、今回の文書流出事件は3月初めにビデオゲーム専門ソーシャルメディア「ディスコード」の特定のゲーム(マインクラフト)ユーザーの掲示板からはじまった。 この掲示板でウクライナの戦況をめぐりユーザーの論争が起き、あるユーザーが自身の主張を裏付けるために「1級機密」印の押してある文書の出力本を写した複数の写真ファイルをアップしたのだ。 その後、ツイッターやテレグラムなどのソーシャルメディアや匿名のイメージ掲示板「4chan」などを通じて似たような内容が広がり、「ニューヨーク・タイムズ」が4月6日(現地時間)にインターネット版に「米国防総省が関連調査に着手した」とする内容を報道したことで世に知れわたった。 ベリングキャットは、複数のディスコード・ユーザーの話を引用して「1月にも機密文書が掲示板に上がってきていた。ここ数カ月の間に、これまで知られているものよりはるかに多くの機密文書が掲示板で共有された」と伝えた。
最初の報道以降に相次いだ米国メディアの報道を総合すれば、流出した文書の作成には米国の主な情報機関のほとんどがかかわっていた。 4月8日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「流出した文書にはロイド・オースティン国防長官とマーク・ミリー統合参謀本部議長に伝えられる日日情報報告をはじめ、国防情報局(DIA)とCIAが作成した現場報告書、(『空のCIA』と呼ばれる)国家地理空間情報局(NGA)のスパイ衛星データの分析資料、 NSAの盗聴・通信傍受報告書などが含まれていた。 一部は統合参謀本部が自ら作成したもの」だと伝えた。
◆ウクライナは「春の大攻勢」計画を全面修正
流出した文書は、内容によって大きく3種類に分けられる。 第1にウクライナ戦争に関する情報。 2023年2月28日に作成されたと表示されている文書には「ウクライナ軍が現在のような頻度で消耗を続ければ、ブーク地対空ミサイルは4月13日、S-300防空ミサイルは5月3日には底をつくだろう」との内容が記されている。 同日に作成された別の文書には「5月までには、首都キーウと西南部の2地域を除くウクライナ全域の重要国家基幹施設の対空防衛網に穴が開くだろう」との見通しが示されている。 文書流出後、ウクライナは早ければ5月中に開始されると予想されていた「春季大攻勢」計画を突如変更したという。 作戦に動員される部隊、兵器システム、訓練度などの情報が詳細に公開されてしまったからだ。
第2に、米国がロシア側の情報網に深く浸透していることを示す内容もある。2022年2月にロシアがウクライナに侵攻してからわずか4週間でウクライナ軍がロシア軍の10人あまりの高位現場指揮官を射殺したことで、米国が関連情報を提供したとの疑惑が持ち上がっている。米国防総省のジョン・カービー報道官(現ホワイトハウスNSC戦略広報調整官)は同年5月、「情報事案に具体的に言及するのは不適切だ」としながらも、「米国はウクライナが自主防衛に利用しうる情報や機密を提供している」と述べた。ニューヨーク・タイムズは「(流出した文書の内容から考えて)米国の情報当局はこのかんロシアの日々の攻撃計画などをリアルタイムで確保してきたことが分かる」と伝えた。このようなレベルの情報を確保するためには、盗聴・通信傍受などの「シギント(SIGINT、信号情報)」のほかに「ヒューミント(HUMINT、人的情報)」が欠かせない。CIAの元諜報(ちょうほう)員で諜報活動の専門家のグレン・カール氏は、4月12日に「アルジャジーラ」に出演し、「今回の文書流出で米国の対ロシア情報収集能力は相当な打撃を受けるだろう」、「(米国とつながっているロシア側の情報員の)一部は命の危険にさらされているだろう」と述べた。
第3に、米国の情報機関が同盟国と友好国に対して盗聴・通信傍受を含む諜報活動を行っていたことも明らかになった。3月1日にCIAが作成したとされる文書には、腐敗容疑で起訴されたイスラエルのネタニヤフ首相が自身を保護するために推進する「司法改革」に反対するデモを、情報機関「モサド」があおっているとの内容が記されている。CIAはこのような内容を「シギント」として確保したと明かした。モサドに対する盗聴・通信傍受が行われていたことを意味する。
◆韓国やイスラエルなどの友好国の情報も収集
4月9日付ニューヨーク・タイムズは、流出文書の内容を引用して「韓国国家安保室は3月初めにウクライナに砲弾を援助してほしいとする米国側の要求に苦悩している」と伝えた。やはり「シギント」として確保したということだが、当時のイ・ムンヒ国家安保室外交秘書官とキム・ソンハン国家安保室長が交わした会話内容が具体的に記されている。同紙は「イ秘書官はウクライナに殺傷兵器を提供する問題について、明確な立場を決めてこそ韓米首脳同士の通話ができ、殺傷兵器を援助しないという立場を変えることが唯一の選択肢だと強調した」と報じた。これに対しキム室長は、尹錫悦大統領の米国国賓訪問の発表時期とウクライナに対する殺傷兵器援助決定の発表時期が重なれば、「これらを交換する取引をしたという疑惑が生じうる」との懸念を示した。続けて「ウクライナに砲弾を早期に供給するのが米国の究極の目的なら、ポーランドに155ミリ砲弾33万発を輸出することも方法となりうる」として「迂回路」を提案したという部分もある。盗聴・通信傍受でなければ確保の難しい内容だ。イ秘書官とキム室長は3月に突如辞任している。
「提起された問題については、米国側と必要な協議を行う予定だ。過去の例や他国の例を検討しつつ対応策を考える」。米国の情報機関による大統領室盗聴疑惑が持ち上がった直後の4月9日、大統領室の幹部はこのように語った。同氏は翌日、記者団に対して「大統領室盗聴・通信傍受疑惑に関する報道は確定した事実ではなく、一部の内容は修正またはねつ造された可能性がある」とし「韓米首脳会談を控えた時期に今回の事件を誇張歪曲して同盟関係を揺さぶろうとする勢力があれば、国民的抵抗を受けることになるだろう」と述べた。
キム・テヒョ国家安保室第1次長も4月11日、尹大統領の国賓訪問を調整するために米国に出国する際、記者団に対して「公開された情報のかなりの数が偽造されている」、「(尹大統領)就任後の11カ月間、両国はすべての領域で情報を共有してきており、重要な情報活動を共にしている。世界最強の情報国である米国の力量は大きな資産」だと語った。同氏はワシントン到着後も「同盟国である米国が韓国に何らかの悪意を持って(盗聴・通信傍受を)したという情況は見つかっていない」と述べた。同日、当の米国は「事態を非常に深刻に受け止めている。出所と流出範囲を明らかにするために最善を尽くす」(オースティン国防長官)と述べ、流出文書が本物であることを事実上認める発言を行っている。
【写真】2015年2月9日、ドイツのメルケル首相(当時)が米ホワイトハウスのイーストルームで米国のオバマ大統領と共同記者会見を行っている/REUTERS・聯合ニュース
「信頼が必要だ。信頼を立て直さなければならない。いかなる状況においても友を内偵する行為は許されない」。2013年10月24日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(当時)は記者団にこのように述べた。米NSAが長期にわたりメルケル首相をはじめとする各国の30人あまりの指導者の携帯電話を盗聴していたことが、スノーデンの暴露で世間に知れわたった後のことだ。当時ドイツはジョン・エマーソン米国大使を呼んで抗議したが、米国はついに謝罪しなかった。NSAは「米国は他国と同様のやり方で海外情報を収集している」と発表した。当時、米国のバラク・オバマ大統領はメルケル首相に電話をかけ「現在は盗聴しておらず、今後もそのようなことはないだろう」、「米国民の安保のための活動と同盟国のプライバシー侵害の懸念との均衡点を探るため、情報収集体系を綿密に検討している」と述べた。
◆米国は謝罪せず流出捜査に着手
米司法省は国防総省の公式の要請を受け、4月7日に連邦捜査局(FBI)が中心となって今回の文書流出事件の捜査に着手した。リサ・モナコ司法副長官が陣頭指揮をとる見通しだ。かつて司法省の国土安保担当次官補を務めたモナコ副長官は、オバマ政権ではホワイトハウスNSC国土安保および対テロ担当補佐官を務めている。同氏は2013年10月25日付『USAトゥデイ』への寄稿で、「友好国を含む監視偵察能力に対する点検作業を行っている。我々ができるからではなく、我々にとって絶対に必要な時にのみ情報を収集するようにする」と述べている。10年を経てまたしても同じことをやっている。
チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-04-13 12:50
「The Hankyoreh」 2023-04-13 04:49
■[社説]「決断」で包装した屈辱対日外交、「談話継承」すら消え去る
日本政府は公式の外交文書に韓国の強制徴用「第三者弁済」案は記述する一方、日本の「歴代内閣の歴史認識の継承」は完全に消し去ってしまった。韓国政府は、日本の「談話継承」への言及は「謝罪と反省」の意を表すと意味付けてきたが、日本政府はその形式的発言さえ消し去ってしまったのだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は日本に一方的に譲歩したことを「決断」という言葉で包装してきたが、「屈辱外交」の後遺症は癒えていない。
日本が11日に発表した「外交青書2023」には、韓日関係の争点だった強制動員の被害者に対する賠償問題に関する部分が新たに追加された。「3月6日、韓国政府は旧朝鮮半島出身労働者(強制動員被害者を表す日本政府の表現)問題に関する自らの立場(『第三者弁済』案)を発表した」との内容だ。韓国の措置後に岸田文雄首相と林芳正外相が述べた「日本政府は1998年10月に発表された日韓共同宣言(金大中-小渕宣言)を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを確認する」との内容は抜けている。この時も「謝罪と反省」には言及しなかったため物議を醸したが、今度は日本側が唯一取った最小限の措置さえも公式の外交記録から削除されたのだ。一方、独島(ドクト)は「歴史的事実に照らしても国際法上も明らかに日本固有の領土」だとする不当な領有権主張は今年も行われた。韓国が独島を「不法占拠」しているとする表現は2018年の「外交青書」で初めて登場し、以来6年間にわたって維持されている。
今年の「外交青書」は、韓国を「国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国である」と規定してはいる。「安全保障面を含め、日韓・日米韓の戦略的連携を強化してく」と強調していることと関係している。日本に都合の悪い内容は消し去り、「日本にとって必要な韓国」は強調するという態度だ。
韓国外交部はこの日、報道官名義の論評を発表するとともに、在韓日本大使館の総括公使を呼んで日本の独島領有権主張に「強く抗議」したが、後の祭りだ。尹錫悦政権が強制動員、福島第一原発の汚染水の海洋放出、日本軍「慰安婦」被害などの懸案で日本に無条件譲歩することで、拙速に「関係改善」しようとして起きた構造的変化が原因だからだ。福島第一原発の放射能「汚染水」を今夏に放出するとする日本の計画に対しても、尹錫悦政権は口で「国民の安全と健康が最優先」と繰り返すだけで、危険を軽減する措置も取らずに傍観している。政府はせめて今からでも韓日関係のバランスの崩壊の原因をきちんと反省するとともに、崩壊した外交原則をまず正すべきである。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1087464.html
韓国語原文入力:2023-04-11 18:04
「The Hankyoreh」 2023-04-12 11:10
■日本・米国に執着し不意打ち食らった尹錫悦政権…「実益すべて奪われる」
尹錫悦政権外交、1年足らずで総体的難関
韓米同盟と韓米日協力強化を前面に掲げた尹錫悦大統領の外交・安全保障政策が、就任1年足らずで難局を迎えている。日本政府は11日、「歴代内閣の歴史認識を継承」という表現が抜けたうえに独島(トクト)領有権の主張を盛り込んだ「外交青書」を発表し、米国は情報機関が韓国の国家安保室を盗聴・情報傍受したという情況が明らかになった。このような中、北朝鮮は5日連続で南北定期通話に応じていない。
日本政府はこの日公開した外交青書に、過去問題に関して「日本政府は歴代内閣の歴史認識を継承する」という内容を書き入れなかった。「歴代内閣の歴史認識を継承」とは、1998年10月に発表された「韓日パートナーシップ宣言(金大中-小渕宣言)」を日本政府が継承するというもので、この宣言には日本の過去の植民支配に対する痛切な反省と心からのお詫びが盛り込まれている。その代わり、外交青書には「竹島(日本が主張する独島の名称)は歴史的事実に照らしても国際法上も明らかに日本固有の領土」と引き続き書かれ、独島(トクト)の領有権を主張した。
日本政府の態度は尹大統領の予測とは反対だ。尹大統領は韓日首脳会談後に韓国世論の批判が沸き起こると、会談5日後の先月21日、国務会議で「韓日関係は、片方が多く得ればもう片方がその分を失うというようなゼロサム関係ではない」とし「韓国が先制的に障害物を取り除いていけば、きっと日本も呼応してくるだろう」と述べた。外交部は独島領有権の主張に対し「強く抗議し、直ちに撤回するよう求める」という声明を出し、駐韓日本大使館の熊谷直樹総括公使を呼び出して抗議した。
しかし、(外交青書から)「歴史認識の継承」が抜け落ちた件には対しては「(日帝強制動員)解決策が発表されてから1カ月たった状況であり、これまで日本側でも誠意ある措置が続いている」として、特に抗議はしなかった。これに先立ち、日本の文部科学省は先月28日、日帝の徴用と徴兵の強制性を弱め独島領有権を主張する内容の小学校の社会科教科書の検定結果を発表した。
韓米関係は、米情報機関の盗聴問題が浮き彫りになって難関に直面した。大統領室はこの日、「韓米の国防長官は『(盗聴疑惑の)当該文書のかなりの部分が偽造された』という事実で意見が一致した」と発表した。韓米同盟に影響はないという点を強調したのだ。
だが、「韓米同盟強化」を事実上最優先の外交原則として掲げ、国際関係で米国と積極的に歩調を合わせてきた状況で明らかになった盗聴の情況は、政府としては当惑する結果だ。尹大統領は昨年11月、カンボジアで発表した韓米日プノンペン声明で、北朝鮮の核とミサイルの脅威に対する糾弾▽台湾海峡の平和と安定維持の再確認▽インド太平洋地域の現状変更の試みに反対▽南シナ海の航行の自由の保障などに合意し、中国けん制に焦点を合わせた米国の対外政策に積極的に協調した。これに先立ち、米国はインフレ抑制法(IRA)と半導体支援法(CHIPS法)を制定し、自国優先主義を露骨に示した。これらの法は同盟である韓国企業に打撃を与えるものだった。尹大統領は就任後1年近く米国と日本に「全賭け」するような外交政策を推進したが、不意打ちを食らったかたちになった。
【写真】尹錫悦大統領と米国のバイデン大統領、日本の岸田首相が昨年11月13日(現地時間)、カンボジアのプノンペンで東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議を機に会合し、韓米日首脳会談を行っている=プノンペン/ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社
南北関係は悪化の一途をたどっている。北朝鮮は同日まで南北共同連絡事務所と東海(トンヘ)・西海(ソヘ)軍通信線の定期通話に応じなかった。今月7日以降、5日間つながっていない。
尹大統領は就任後、北朝鮮が非核化交渉に真摯に乗り出せば、様々な経済的支援を惜しまないという内容の「大胆な構想」を発表した。しかし、これに対して北朝鮮が一貫して冷淡な反応を示し、韓米同盟と韓米日協力強化の基調のなか軍事演習を拡大したことで、緊張は高まった。特に尹大統領は先月、現政権で初めて公開した北朝鮮人権報告書に言及し、「北朝鮮住民の凄惨な人権蹂躙(じゅうりん)の実状が、国際社会に一つひとつ明らかにならなければならない」「核開発を推進する状況では1ウォンたりとも与えることはできない」と述べた。
専門家らは、サウジアラビアが米国一辺倒の外交から脱し、フランスが米国の対中けん制路線に距離を置いて国益外交を展開している状況で、韓国が韓米日協力に執着すれば外交舞台で遅れを取りかねないと指摘した。キム・ジュンヒョン元国立外交院長は「米国や日本とは、協力をするとしても徹底的に検証し、私たちが得るものは得なければならない」とし、「ところが今は傾いた協力のもと、実益を全て奪われる方向に向かっている」と述べた。
チェ・ジョンゴン元外交部第1次官は「韓米日協力の定義を韓国自らが立てずに飛び込んだようだ」とし、「そうした状況で、とにかく韓日米協力と言えばまるで万能薬であるかのように唱えているから、何かにつけてやられるのだ」と述べた。
シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1087507.html
韓国語原文入力:2023-04-12 09:05
「The Hankyoreh」 2023-04-12 11:12
■「外交青書」で謝罪の継承言及しなかった日本…「強制動員問題をめぐる本音」を再確認
日本外交の方向示す主要文書、強制動員の解決策に言及
「『第三者弁済解決策』に対する日本の誠意ある呼応はない」ことを示す
日本が11日に公開した今年の「外交青書」で、強制動員被害者賠償問題と関連して韓国の「譲歩」についてのみ言及し、自分たちが言及した「過去の談話の継承」については触れなかったことが確認された。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の「降伏外交」が日本の「誠意ある呼応」なしに韓国の一方的な譲歩で終わったことが明確になったわけだ。現在両国の間には福島原発汚染水の海洋放出、独島(トクト)の領有権争い、日本軍「慰安婦」合意の復元の試みなど、いずれも解決困難な難題が目白押しであり、性急な譲歩の影響がさらに大きくなるものとみられる。
林芳正外相が同日午前に開かれた閣議で報告した2023年版「外交青書」によると、先月韓国の大きな譲歩が行われた強制動員被害者賠償と関連した部分が新しく加わった。昨年5月、韓国で尹錫悦政権が発足した後、外交当局間の緊密な疎通と韓日首脳会談等を通じて両国がこの問題の早期解決を模索してきたと説明した後、「2023年3月6日、韓国政府は旧朝鮮半島出身労働者問題に関する自らの立場を発表した」と記した。
日本政府の説明どおり、パク・チン外交部長官は当時、これまで論議を呼んできた強制動員被害者賠償と関連し、日本の被告企業ではなく韓国の日帝強制動員被害者支援財団が原告である被害者への賠償金を肩代わりする譲歩案(「第三者弁済」案)を発表した。パク長官は記者会見で、国内の反発を懸念したかのように「これは問題解決の終わりではなく真の始まり」だとし、「今後続く日本の誠意ある呼応により、コップの水がさらに満たされることを期待する」と述べた。
しかし、日本の呼応は結局実現しなかった。岸田文雄首相と林外相は当日、「韓日共同宣言(金大中-小渕宣言)を含む歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継ぐ」と述べた。尹大統領が先月16日に日本を訪問し、岸田首相と会談を行ったが、日本の態度は変わらなかった。1998年10月に発表された金大中-小渕宣言に盛り込まれた「先の大戦における行いに対する、痛切な反省と共に心からのお詫びの気持ち」を自ら言及することはなかった。このような冷淡な態度に、日本の主流メディアからも「失望を抱かせる」という批判が出てくるほどだった。
にもかかわらず、尹大統領は日本をかばい続けた。先月21日の国務会議の冒頭発言では、「友人関係でいざこざが起きても関係を切ることなく引き続き会って意思疎通を図っていけば、誤解が解けて関係が復元」されるとし、「韓日関係も同じ」だと述べた。だが、日本は「外交青書」で1カ月前にやむを得ず言及した一節まで削除し、韓国の要請に呼応する意思がないことを明確にした。 韓日間の歴史問題に対する最終目的が「記憶を通じた和解」ではなく「真実の忘却」であることをあらわにしたのだ。
その代わり林外相が「韓国政府により発表された措置を、2018年の大法院(韓国最高裁)判決により非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価した」と書いた。日本が今回の事態に対して「韓国が過去の過ちを改めて譲歩したのだから、大乗的な次元でこれを受け入れる」という認識を持っていることが分かる。
独島と関連しても不当な主張を続けた。 「外交青書」に「竹島は歴史的事実に照らしても国際法上も明らかに日本固有の領土」としたうえで、「韓国は警備隊を常駐させるなど、国際法上何らの根拠もないまま、竹島を不法占拠し続けている」と主張した。慰安婦問題についても「韓国側に日韓合意の着実な実施を強く求めていく方針に変わりはない」と明らかにした。
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1087439.html
韓国語原文入力:2023-04-12 02:40
「聯合ニュース」 2023.04.11 13:17
■韓国政府が日本外交青書の独島領有権主張に抗議 公使呼び出し
【ソウル聯合ニュース】韓国政府は11日、日本政府が同日公表した2023年版外交青書で独島の領有権を主張したことに対し「強力に抗議し、これを直ちに撤回するよう求める」と表明した。外交部が日本の不当な主張の繰り返しを指摘する報道官論評を発表し、在韓日本大使館の熊谷直樹総括公使を外交部庁舎に呼んで抗議した。
【写真】外交部に呼ばれた日本大使館の熊谷総括公使=11日、ソウル(聯合ニュース)
日本政府は毎年4月に国際情勢と日本の外交活動・展望をまとめた外交青書を公表している。
この日閣議で報告された23年版青書は独島について、歴史的にも国際法上も明らかに日本固有の領土とし、韓国が警備隊を常駐させるなど国際法上何ら根拠もなく不法占拠していると主張した。独島領有権に関する表現は昨年の青書と同じで、韓国が独島を「不法占拠」しているとの記述は18年版で初めて登場してから6年連続となる。
これに対し韓国外交部は報道官論評で「今後も政府は独島に対する日本のいかなる主張にも断固として対応していく」と強調し、日本政府に向け「独島に対する不当な主張を繰り返すことは未来志向的な韓日関係の構築に全く役に立たないという点をしっかり自覚すべきだ」と述べた。
韓国政府の対応は昨年と同程度だ。熊谷氏には政府の立場を改めて伝えたとみられる。
一方、日本の今年の外交青書は、日本による植民地時代の徴用被害者への賠償問題を巡り韓国政府が先月6日に解決策を発表した事実に触れながらも、日本政府が歴史認識について「歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく」と述べた点は記載しなかった。
韓国は「引き継いでいく」を日本側の「呼応措置」の一つと受け止めていた。だが今回の外交青書に盛り込まれなかったことから、日本が歴史問題への反省に重きを置いていないのではないかと懸念する声も上がる。
外交部はこの日の論評で、外交青書の徴用問題に関する記述に対しては言及しなかった。
「聯合ニュース」 2023.04.11 11:26
■韓国政府「強く抗議、即時撤回を」 日本が外交青書で独島領有権主張
【ソウル聯合ニュース】韓国政府は11日、日本政府が同日公表した2023年版外交青書で独島の領有権を主張したことに対し「強力に抗議し、これを直ちに撤回するよう求める」と表明した。
外交部は「日本政府が外交青書を通じ、歴史的、地理的、国際法的に明白なわが固有の領土、独島に対し不当な領有権主張を繰り返した」とする報道官論評を発表した。
論評は「今後も政府は独島に対する日本のいかなる主張にも断固として対応していく」と強調し、日本政府に向け「独島に対する不当な主張を繰り返すことは未来志向的な韓日関係の構築に全く役に立たないという点をしっかり自覚すべきだ」と述べた。
この日、日本の閣議で報告された外交青書は独島について、歴史的にも国際法上も明らかに日本固有の領土とし、韓国が警備隊を常駐させるなど国際法上何ら根拠もなく不法占拠していると主張した。
独島領有権に関する表現は昨年の外交青書と変わっていない。韓国が独島を「不法占拠」しているとの記述は、18年版で初めて登場してから6年連続となる。